15 / 65
第一章
14
しおりを挟む
ヒロインちゃんの後をついていくと、ヒロインちゃんは中庭のベンチに座って、肩を震わせてうつむいていた。
声をかけるのも躊躇われるほど、落ち込んでいるのがみていてわかる。
声をかけるか、かけまいかと悩んでいると、ブツブツと、ヒロインちゃんが呟いている声が聞こえてきた。
「・・・どうして・・・私・・・悪役令嬢・・・ざまぁ・・・れちゃう。そんなの・・・そんなの嫌ッ。どうしたら・・・」
ん?
なんか、意外な台詞が聞こえてきたような。
ヒロインちゃん何かに怖がっている?
そういえば、乙女ゲームものの対として、悪役令嬢がざまぁする話が流行っていたことを思い出した。
ヒロインちゃんは、この世界が悪役令嬢ものだと思っているのかもしれない。だから、今から必死なのかもしれない。
自分がざまぁされないように。
「アンナ嬢。ここは、現実です。ゲームの世界でも、ネット上の小説の中でもありません。ここは、現実なんです。」
ヒロインちゃんの前に屈みこんで、そっとヒロインちゃんの手を包む。
「っ!!アンタに何がわかるのっ!?あんたはざまぁする立場だからいいかもしんないけど、私はざまぁされる立場なのよ!!」
睨み付けながら言うけれども、泣き張らした目で言われてもあまり効果はない。
そうか、不安だったのね。
ヒロインちゃんは。
「乙女ゲームの世界では私が断罪されるのよ?私も怖いのよ。知ってる?」
「でも、アンタは攻略対象に好かれてるんじゃん。このままいったら私がざまぁされる。それが嫌で早めに学園に通えるように頑張って、いろいろと調整していたのに。」
「好かれたくて、好かれたわけじゃないわ。彼らに対して私がなにかをしたって訳でもないし。私はただ、猫様たちを愛でていただけ。猫様たちはいいわよ。言葉は通じないけれど、あの子たちは心を開けば私たちに寄り添ってくれる。優しくその存在で癒してくれる。言葉はないけど、態度でとても慰められるわ。
だから、あなたも猫様たちに優しくしてみて、きっと猫様たちは想いを返してくれるわ」
「でも・・・どうして仲良くしたらいいのか分からないわ。それに、強制力が働いたらと思うと怖くないの?」
「怖いわ。でも、逃げてばかりじゃいられない。精一杯生きなきゃ。生きて、幸せをつかまなければ」
現実だと気づいて。
ここが現実だと認識して。
そして、一緒に、
「一緒に断罪もされない、ざまぁもされない世界を目指しましょう。」
一生懸命生きてみよう。
「っ・・・うん」
小さいながらも、確かに頷いた。
泣き止んでもいるようだ。
よかった。
「涙を拭いて。目が赤くなってしまうから擦らないでね。冷やしていなさい。」
制服のポケットから洗ったばかりのハンカチを取りだし、ヒロインちゃんに手渡す。
ヒロインちゃんはそれをそっと受け取り、目に当てる。
「・・・ありがと。私も頑張ってみる。でも、猫たちにどうして接したらいいかわからないの。・・・教えてくれる?」
「ええ。もちろん。」
私たちは約束を交わし、それから乙女ゲームが開始される15歳になった。
声をかけるのも躊躇われるほど、落ち込んでいるのがみていてわかる。
声をかけるか、かけまいかと悩んでいると、ブツブツと、ヒロインちゃんが呟いている声が聞こえてきた。
「・・・どうして・・・私・・・悪役令嬢・・・ざまぁ・・・れちゃう。そんなの・・・そんなの嫌ッ。どうしたら・・・」
ん?
なんか、意外な台詞が聞こえてきたような。
ヒロインちゃん何かに怖がっている?
そういえば、乙女ゲームものの対として、悪役令嬢がざまぁする話が流行っていたことを思い出した。
ヒロインちゃんは、この世界が悪役令嬢ものだと思っているのかもしれない。だから、今から必死なのかもしれない。
自分がざまぁされないように。
「アンナ嬢。ここは、現実です。ゲームの世界でも、ネット上の小説の中でもありません。ここは、現実なんです。」
ヒロインちゃんの前に屈みこんで、そっとヒロインちゃんの手を包む。
「っ!!アンタに何がわかるのっ!?あんたはざまぁする立場だからいいかもしんないけど、私はざまぁされる立場なのよ!!」
睨み付けながら言うけれども、泣き張らした目で言われてもあまり効果はない。
そうか、不安だったのね。
ヒロインちゃんは。
「乙女ゲームの世界では私が断罪されるのよ?私も怖いのよ。知ってる?」
「でも、アンタは攻略対象に好かれてるんじゃん。このままいったら私がざまぁされる。それが嫌で早めに学園に通えるように頑張って、いろいろと調整していたのに。」
「好かれたくて、好かれたわけじゃないわ。彼らに対して私がなにかをしたって訳でもないし。私はただ、猫様たちを愛でていただけ。猫様たちはいいわよ。言葉は通じないけれど、あの子たちは心を開けば私たちに寄り添ってくれる。優しくその存在で癒してくれる。言葉はないけど、態度でとても慰められるわ。
だから、あなたも猫様たちに優しくしてみて、きっと猫様たちは想いを返してくれるわ」
「でも・・・どうして仲良くしたらいいのか分からないわ。それに、強制力が働いたらと思うと怖くないの?」
「怖いわ。でも、逃げてばかりじゃいられない。精一杯生きなきゃ。生きて、幸せをつかまなければ」
現実だと気づいて。
ここが現実だと認識して。
そして、一緒に、
「一緒に断罪もされない、ざまぁもされない世界を目指しましょう。」
一生懸命生きてみよう。
「っ・・・うん」
小さいながらも、確かに頷いた。
泣き止んでもいるようだ。
よかった。
「涙を拭いて。目が赤くなってしまうから擦らないでね。冷やしていなさい。」
制服のポケットから洗ったばかりのハンカチを取りだし、ヒロインちゃんに手渡す。
ヒロインちゃんはそれをそっと受け取り、目に当てる。
「・・・ありがと。私も頑張ってみる。でも、猫たちにどうして接したらいいかわからないの。・・・教えてくれる?」
「ええ。もちろん。」
私たちは約束を交わし、それから乙女ゲームが開始される15歳になった。
0
お気に入りに追加
2,113
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
見ず知らずの(たぶん)乙女ゲーに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!
すな子
恋愛
ステラフィッサ王国公爵家令嬢ルクレツィア・ガラッシアが、前世の記憶を思い出したのは5歳のとき。
現代ニホンの枯れ果てたアラサーOLから、異世界の高位貴族の令嬢として天使の容貌を持って生まれ変わった自分は、昨今流行りの(?)「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」に「転生」したのだと確信したものの、前世であれほどプレイした乙女ゲームのどんな設定にも、今の自分もその環境も、思い当たるものがなにひとつない!
それでもいつか訪れるはずの「破滅」を「回避」するために、前世の記憶を総動員、乙女ゲームや転生悪役令嬢がざまぁする物語からあらゆる事態を想定し、今世は幸せに生きようと奮闘するお話。
───エンディミオン様、あなたいったい、どこのどなたなんですの?
********
できるだけストレスフリーに読めるようご都合展開を陽気に突き進んでおりますので予めご了承くださいませ。
また、【閑話】には死ネタが含まれますので、苦手な方はご注意ください。
☆「小説家になろう」様にも常羽名義で投稿しております。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
変態王子&モブ令嬢 番外編
咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と
「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の
番外編集です。
本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない
亜瑠真白
恋愛
推しキャラを幸せにしたい転生令嬢×裏アリ優等生攻略キャラ
社畜OLが転生した先は乙女ゲームの悪役令嬢エマ・リーステンだった。ゲーム内の推し攻略キャラ・ルイスと対面を果たしたエマは決心した。「他の攻略キャラを出し抜いて、ルイスを主人公とくっつけてやる!」と。優等生キャラのルイスや、エマの許嫁だった俺様系攻略キャラのジキウスは、ゲームのシナリオと少し様子が違うよう。
エマは無事にルイスと主人公をカップルにすることが出来るのか。それとも……
「エマ、可愛い」
いたずらっぽく笑うルイス。そんな顔、私は知らない。
悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)
[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。
紅月
恋愛
「なに此処、18禁乙女ゲームじゃない」
と前世を思い出したけど、モブだから気楽に好きな事しようって思ってたのに……。
攻略対象から逆ハーフラグを折ってくれと頼まれたので頑張りますが、なんか忙しいんですけど。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる