韋駄天の運び屋

すのもとまさお

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説得

説得 ジン視点4

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「ジン、俺たちと一緒に来て欲しい。俺たちのパーティの運び屋として」

・・・・・?
僕は今・・・何を言われたんだ・・・・?
来て欲しい・・・・??
彼らのパーティの一員として・・・???

この僕を・・・・??
剣も魔法も才能が無くて、その上韋駄天という外れギフトを持った僕を・・・・?

ああ・・・そうか・・・
この人・・・・僕を慰めるために・・・

「アルフさん・・・ありがとうございます・・・でもそんな気を使わなくても「俺は本気だ」
僕が言い切る前にアルフさんが割り込む。

本気って・・・この人は何言ってんだ・・・?

「ジン、俺はハッキリ言って、運び屋の今の状況はおかしいと思っている」
「運び屋の状況・・・ですか?」
「ああ。俺は武器も魔法もギフトも大事だと思っているが、それと同時にアイテムも大事だと思っている。それを管理する運び屋がなぜこんな不遇な扱いをされているのか、俺には理解が出来ない」


その理由は簡単だ。
”誰にでも出来るから”だ。

荷物を持つくらい、誰にでも出来る事だからだ。
それならば、わざわざ運び屋を加入させる必要は無い。

「それは・・・」
「誰にでも出来るから・・・と言いたいのか?確かに荷物を持つくらい簡単だ。それぞれ自分で管理もすれば良い・・・だが、本当にそうなのか?」
「え?」
「冒険は危険な事ばかりだ。モンスターだって襲ってくるし、ダンジョン内ではトラップもある。森を歩く時は遭難しないかどうかも注意しなきゃいけない。そんな状態でアイテムの管理にリソースを割く余裕があるのか?」
「そ、それは・・・」
「それに、もし管理がおろそかになって、アイテムの消費が激しく、いざという時にアイテムがなくなった場合どうする?これが街が近いクエストなら良いが、僻地のクエストやダンジョンの中ならそれこそ終わりだ」
「た、たしかにそうですが・・・」
「それにな、本当に必要のない職業なら、無くなるはずなんだ。だが、運び屋は役に立たないと言われ続けているのに、その職業が消える様子も無いじゃないか」
「・・・・」
「ジン・・・俺たちのパーティに加入してくれないか?運び屋としてお前が来てくれたら俺たちは助かるんだ」

アルフさんの言いたいことも分かる・・・
でも、僕は運び屋以外何も出来ないんだ・・・
さっきのトーマスの件でそれは分かったことじゃないか・・・

「戦闘の事なら心配するな。俺たちがそれをやる。お前は俺たちの生命線であるアイテムの運搬と管理をして欲しいんだ」

「で、ですが・・・」

正直言えば、この申し出はすぐにでも引き受けたい・・・
でも、もし引き受けたら、運び屋なんて加入しているパーティなんて馬鹿にされてしまう・・・

それはダメだ!!!
僕はいくら馬鹿にされても良い!!
だけど・・・この人たちまで馬鹿にされるのは耐えられない!!

「ジン・・・俺たちはなマリネールという村の孤児院で育ったんだ。仮にお前が居なくても馬鹿にはされるさ。田舎者の親無しってな。ハッキリ言ってそんなのどうでも良いんだ。周りが何を言っても全然気にしないさ」

「アルフさん・・・」

・・・・・なんでこの人は・・・
僕が思ったことが分かるんだよ・・・
まるで心を読まれているようだ・・・

「頼むジン。俺たちの運び屋としてパーティに来てくれ!」

・・・・この人は・・・なんで僕なんかを必死に・・・
僕なんか剣も魔法もまともに出来ない・・・
その上、外れギフトなんて持ってるのに・・・なんで・・・

「アルフさん・・・どうして・・・」
「ん?」
「どうして僕なんかを・・・必死に加入させようとしてるんですか・・・?僕は何も出来ない・・・ただの役立たずですよ・・・?」

僕はアルフさんに聞いてみた。
だって、本当に分からないんだ・・・

「ジン・・・俺はな、運び屋なら誰でも良い訳じゃないんだ」
「え・・・?」
「お前はさっき自分で言ったよな。剣も魔法もギフトもダメで何も出来ないって」
「・・・・」
「それなのに、どうしてお前はおばさんを守ろうと、あいつの前に出たんだ?どうしてお前は俺を守ろうとあいつを羽交い絞めにしたんだ?」
「それは・・・・」
「勝手に身体が動いた・・・だろ?」

・・・そう
とにかく守らなきゃって身体が勝手に動いた・・・
ホントにたったそれだけだ・・・
大した理由じゃない・・・

「ジン、そんなお前は自分よりも強い奴に立ち向かえる人間だ。そんな強い運び屋に俺は来て欲しいんだ」

・・・強い?
・・・僕が・・・?

そんなこと言われたの初めてだよ・・・
しかも、実体験を持ってくるんだもん・・・
反論できないよ・・・・

良いのかな・・・?
僕が・・・夢を見て・・・

冒険者になる夢を・・・

気付けば僕は涙を流していた。
皆から冒険者を諦めろって言われていた僕が・・・こんなにも必死にどれだけ僕が必要かと説いてくれる人がいるなんて・・・こんなの初めてだ・・・

僕は涙を拭いて、決心した。
そうだよ・・・こんなにも必要と言ってくれるんだ・・・
たとえそれがお世辞でも、ここまで言ってくれる人の頼みを断るなんて・・・僕には出来ない。

僕は席を立って彼らに頭を下げた。

「アルフさん・・・アンナさん・・・どうか、僕を運び屋として、あなた達のパーティに加入させてください!お願いします!」

・・・・・

あれ?
返事が無い・・・
も・・・もしかしてダメなのか・・・?

僕は恐る恐る顔をあげると嬉しそうなアルフさんの顔があった。

「そうか!そうか!ありがとう!一緒に頑張ろうな!!」
アルフさんも立ちあがって僕の手を握って言ってくれた。

アンナさんは困惑してるみたいだけど、拍手してくれている。


僕はこうして彼らのパーティに加わ「ちょっと待ちな!!!」

突然の大声で僕らの歓声は消えた。
声の持ち主はおばさんだった。


「辞めてくれよ!!あんたは確かに恩人だけど、ジンを冒険者に誘う事だけは辞めてくれ!!」
「お、おばさん・・・」
「あたしと旦那はね!!こいつの爺さんと婆さんに恩があるんだ!!そんな二人の大事な孫を・・・わざわざ死に行くような真似をして欲しくないんだよ!!」
「お,恩・・・?」
なんだそれ・・・
初めて聞いたぞ・・・!?

「お、おばさん・・・爺ちゃんと婆ちゃんと何かあったんですか??」
「・・・・」
おばさんは黙ってしまった。
おばさんが僕の言葉で黙ったことなんて今まで無かったぞ・・・!

・・・・・

長い沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのは、料理場のおじさんだった。

「話すつもりは無かったんだけどなぁ・・・」
「!? あ、あんた!!あたしらでその話はしないようって決めたじゃないか!!」
「いいじゃねえか。ジンも大きくなって俺たちが思っている以上に大人になったんだ。話しても大丈夫じゃねえか?」
「だ、だけど・・・!!」
「それに・・・ジンにはたった今出来たばかりだが、良い仲間を持ってるじゃねえか。きっと大丈夫さ」
「・・・・」
「ジン、この話はきっとお前の夢を壊すことになる・・・聞いてくれるか?」
「は、はい・・!」

僕は息を飲んでおじさんたちの話に耳を傾けた。

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