韋駄天の運び屋

すのもとまさお

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夢、潰える?

夢、潰える? アルフ視点

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「ええええええ!!?シエラとガイは来てくれないの!!?」
城塞都市ヴァルザの馬車の停留所に着いた、俺とアンナ、それにガイとシエラさん。

ガイたちはこの後、ギルドで予定があるそうで、アンナは少し不満を漏らしていた。

「すまんのう・・・この前のクエスト完了をギルドに報告するのを忘れちまってな・・・早く行かなんと無効になっちまうんじゃ・・・」
「全く・・・クエスト完了の報告は期限が長いとはいえ、早めに報告するのが基本じゃないですか・・・」
シエラは呆れ気味に言っている。

「・・・そういうお前さんこそ、ギルドの用があるのじゃろ?」
「私は昨日まで受けていたクエストの報告と、この街に帰ってきた挨拶です。なので、ガイにも付き合ってもらいますよ?」
「な、なんじゃと・・・?」
「ガイだって、この前のクエストとは別に、昨日までクエストを受けていたじゃないですか。報告はもちろんのこと、キチンとあいさつ回りしないといけませんよ?」
「・・・・面倒じゃのう・・・」

あ!
馬鹿!!ガイ!!
そんなこと言ったら・・・

「・・・・ガイ・・?」
シエラさんが怒るだろ・・・

シエラさんは普段は優しいが、怒ったらメチャクチャ怖いの分かってんだろ!!?
ニコニコしているはずなのに物凄い圧を感じるし、背後には黒いオーラが見えるし・・・

とにかく!!
一番怒らしちゃあいけない人なんだぞ!!

「はっ!!」
ガイはしまった!!という表情してすぐに

「・・がはははは!!そ、そういや、あいつらはワシが居なくてもしっかりやってたかのう!!これは報告も兼ねて様子を見に行くのも良いじゃろう!!!」

・・・・ガイだって怖いんだろ・・・
全く・・・

「むぅ・・・私が儀式を受けているところ・・・見守って欲しかったのになぁ・・・」
アンナが不貞腐れてしまっている。
だが、こればかりは仕方ない。

二人だって用事があるんだ。

「アンナ、残念だが俺たちだけで行こう」
「むぅ・・・」
「アンナ・・・ごめんなさいね・・・」
シエラさんはアンナの手を取った。

「アンナ、それにアルフ、私とガイは今日という日を待ち望んでいました。私たちはまたこうして一緒に居られるのですから」
「シエラ・・・」
「明日の冒険者登録にはご一緒させて頂きますので、どうかそれで勘弁してくれませんか?」
「・・・うん。私こそ、我儘言ってごめんね」
「良いんですよ。私こそ、着いてあげられなくてごめんなさい。今晩、どんなギフトを貰ったか教えて下さいね」
「うん!!」

「そろそろ行くかのう。アルフ!アンナ!また後でな!」
「ああ!行ってくる」
「ガイ!シエラ!またねー!」

俺とアンナはガイとシエラさんと別れ、教会へ向かうことにした。

ヴァルザには大規模なギルドがあり、それが目的で他の地域から人が集まってくる。
中には先に儀式を終えてから来る人もいるが、基本的にこの街の教会で儀式を受けに行く人が多い。

そのため、この街には儀式を受けることが出来る教会は4つある。
教会1つでやろうとすると流石に人が多いからな・・・

儀式は毎日やってるわけじゃなく、数カ月に1度。
なぜ、そのような事になってるのか分からん。
女神は割と気まぐれなんて話もあるらしい。


「ねえ、アルフ。アルフはどんなギフトが欲しい?」
教会へ向かっている途中、アンナがそんな事を聞いてきた。

ギフトか・・・
そういえば考えたこと無かったな・・・


正直、俺は冒険者になれれば何だって良い。
たしかに有用なギフトであればそれに越したことが無いが・・・

そうじゃなかったら、俺は剣だけで戦えばいいし・・・
正直、そこまで興味ないな・・・

「俺より、アンナはどうだ?何か欲しい?」
こういう時は本人に聞いておけばいいだろう。

「私?そうだな・・・魔導士志望だから、魔力強化とか魔法系のギフトが良いな」

たしかにアンナは魔法が使えるんだったな。
今のところ火炎魔法と雷魔法しか使えないみたいだが、冒険者登録をする際、魔法特性を調べて貰えば、もしかしたら使える属性がもっとあるのかもしれないな

魔法特性とは、その人が得意とする魔法属性の資質のことだ。

得意とするわけだから、別に無くても修得は出来るらしいが、有るのと無いのとじゃ修得時間にかなり差があるらしい。

だから基本的に得意とする属性以外の魔法をわざわざ覚えたりはしない。
得意とする魔法を修得、訓練した方が効率が良いからだ。

「そうか。アンナは魔法が得意だもんな」
「それより!アルフはどうなのー!?」
・・・どうしよう・・・・
別に何でも良いんだがな・・・・

「・・・そうだな・・・どうせなら珍しいギフトが良いな・・・」
「珍しいギフト?レアギフトの事?」
「ああ・・・さすがにそれを授かるのは無理だろうが・・・・たとえば韋駄天とか面白そうだな」
「・・・韋駄天って”足がちょっとだけ早くなる”ギフトでしょ?それじゃあギフトを授かってないようなもんじゃない?そんなの貰っちゃったら、皆に笑われちゃうよ・・・」

韋駄天・・・・足がちょっとだけ早くなるだけのギフトで、なぜか滅多に出ないレアギフト。


基本的にレアギフトとは強力なものが多いなか、韋駄天という、普通のギフトと比べても外れなギフトは珍しい・・・それがちょっと面白い。

「笑われるか・・・でも、そんなギフトを貰った人間がもし、Aランクの冒険者になれたら面白いとは思わないか?」
「・・・まぁアルフには剣術があるもんね」
そう、どんなギフトを授かろうとも、俺には先生から教わった剣術がある。
最初の間はそれくらいで充分なはずだ。

そんな会話をしていると肩にドンと衝撃が走った。
俺と同じくらいの少年が慌てていた。


「おっと?」
「ああ!!ごめんなさい!!急いでいたもので!!」

彼は慌てて俺たちに謝った。
だが、慌てたときの焦っていたのか、手に持っていた書類を落としてしまった。

「あああ!!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「いや、大丈夫だ」

俺の足元に落ちたので拾ったが、その際、書類の内容を見てしまった。

これは・・・女神の儀式の申請書か・・・
別に当日でも良いのに・・・よっぽど今日という日を楽しみしてたんだな。


「あ、あの・・・」
「!すまない!!俺たちもこれから女神の儀式を受けに行くところだったから、つい・・!」
しまった・・・
つい見入ってしまった・・・

俺も慌てて申請書を渡す。
彼は受け取りながら会話をする。

「そ、そうなんですね!どうやら、反対方向の教会みたいですね」
「そうみたいだな」
「この街の冒険者になるなら、もしかしたらまたお会い出来るかもしれませんね。その時はよろしくお願いします」
「こちらこそ。だが、急いでたんじゃないのか?」
「ああ!!そうだった!!これで失礼します!!」

彼はそう言って、また走り去った。

「・・・なんか慌ただしい人だったね」
「そうだな・・・時間はまだたっぷりあるのに・・・よっぽど今日が楽しみだったんだろうな」
「私たちも早くいこう」
「ああ」

名前も見えてしまったが・・・たしか・・・ジン・・・だったか・・?
彼はどんなギフトを授かるんだろうな・・・
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