ハルカの唄

堀尾さよ

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た?

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――誰?

「十年ぶりくらいかな? すっかり美人さんになったね」
 輝かしい美少女だった彼女は、変わり果てた姿で私との再会を懐かしんでいた。

 誰、この人。

 声、面影。ハルカだ。ハルカのはずだ。
 けれど、私の知っているハルカじゃない。私の信じていた神様じゃない。

 ふっくらした体型に、それを覆い隠すボディラインの見えないロングドレス。
 ほぼ素肌が剥き出しになっている、眉毛を描いただけのナチュラルメイク。
 ツヤのない髪の毛はボブカットにしていて、ホントに年相応に見える。
 どこにでもいる、パッとしない二十代がそこにいた。
 キラキラ輝いていた美少女はどこにもいない。

「ハルカも、変わったね」
 震える声を必死で押さえ込んで、引きつる顔を必死で落ち着かせて、私はハルカとの再会を懐かしむフリをした。
「うん、結婚して子供も出来てさ。すっかり太っちゃった」

 私の偶像はかき消えた。
 
 それからの記憶はどこかぼんやりしていて、自分の記憶でないかのように現実味がない。
 ハルカと何を話したのかも覚えていない。同窓会がどんな風に終わったのかも覚えていない。

 気が付くと家に戻っていて、セットした髪の毛をほどいている最中だった。そこでようやく我に返って、今までの記憶を探った。
 声は幼い頃から変わっていないのに、姿形はまったくの別人に造り変わってしまっていた。私の唯一の神様は過去にしかいないみたいだ。
 これが失意なのか、落胆なのか、わからない。でも、あの同窓会で私の思い出が、思い出のままになってしまったのは分かった。
 ハルカがどんな姿をしていても、あの時のハルカが完璧な美少女で、私の女神だったことに変わりはないのだ。

 化粧を落とし、そのままシャワーに入ってしまおうと腰を浮かした。
 すると、タイミングが良いことのか悪いのか、スマホに通知が入った。細かく震えるスマホを拾い上げて、メッセージをチェックする。

 交換した覚えのないアカウント。アイコンは三歳くらいの男の子が笑っている写真だ。ああ、母親になったハルカだ。神様でなくなった、普通の同級生。

『さっきはありがとう! 久しぶりでちょっと緊張したけど、ウタちゃんと話せてよかった!』
『今度、また二人で会いたいな。駅前のパスタ屋さんが気になってるんだけど、どうかな?』
 
 さて、何て返事をしよう。
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