遥かなウタ

堀尾さよ

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わたし

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ウタちゃんは、どうしようもなくかわいそうな子だった。
 私に劣等感を抱いているのは、知っていた。

 だって、みんなの「可愛い」は、私だもん。

 ウタちゃんはきっと、それ以外の部分でも私との差を感じているのだろうけれど。

 例えば、パパとママ。
 ウタちゃんにパパはいない。
 例えば、友達。
 ウタちゃんの友達は、私だけ。
 例えば、先生。
 ウタちゃんは、いつも先生に睨まれている。
 例えば、恋人。
 最近、ウタちゃんと仲良くしていた人に告白された。

 ああ、全部「可愛い」んだ。
 目の前で全部全部私がかすめ取っちゃうと思い込んでいるところが。
 ああ、全然そんなつもりないのに。でもどうしてだろう。なぜか、遠回しに遠回しに、ウタちゃんを追い詰めたくなるのだ。

 悲しそうな、寂しそうな顔で、「ハルカ」と呼ぶ歌ちゃんが、たまらなく可愛い。

 私のこと、信じたくても信じられないんだよね。でも、それを表に出したくないんだよね。

 でも、唯一の幼馴染なんだもんね。

 私も、そう思っているよ。

 ぐちゃぐちゃの憎しみを感じていると思うと、思うと。たまらなく嬉しくなってしまうのだ。
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