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今日は、待ちに待ったハイキング!
最近は、佐田さんとも話すようになったけど、グループには入れない。
「だって、お前ネクラじゃん?」
「……」
岡崎悠馬さえ、班にいなければ!!
なんで、こんな人と一緒の班なんだろ?
「ネクラちゃん、大丈夫ー? 無理そうだったら救護班に言いなよー」
佐田さんが声を掛けてくれるのがありがたい。
山道は少し歩きにくかったけど、それでもなんとか頂上まで行けた。
「あっつぅ!!」
「ほんと、暑い!」
「俺、もう帰りたい」
……なに言ってんだ?桜井くんは。
「じゃ、帰れば?」
突き放す岡崎悠馬!すがる、桜井くん。この2人は、仲がいい。もう1人が、佐田さん。この3人が私の班員。
「おい、おっせーな。お前、足ちゃんとついてんのかぁ?」
「……ついてます! 失礼な!」
「ほんと、悠馬って、よくネクラちゃんに絡むよねー」
「いじめてるだけだ」
そういや、よく話しかけてはくるけど、今日みたいに大っぴらじゃない。いつもは、一言二言で終わる。まともに言うのは、図書室の中だけ。
「あ、先生呼んでるー!!」
4人でゾロゾロ掛けてったら、遅過ぎだ!と注意された。
「午後からは、各班でスタンプラリーを行う!」
そういやなんか言ってたっけ。
「みんなに渡した地図の赤丸のところに、われわれ教師がいるからスタンプを貰うように!」
「怪我なく、ゴールしてね!!」
各班に分かれて行くものの、みんな楽しそうに話しながら進んでく。
「やっだぁ、虫?」
「疲れたぁ! お腹空いたぁ!!」
スタンプラリー終われば、バーベキュー!! 白米は持参とか。
「肉ぅぅっ! そのために、俺はがんばーる!!」
そんな声が耳に届く。
「暑いなぁ……」
少し足を止めて、水筒のお茶を飲む。
「おい、止まるな。なんだ、水分補給か」
「……」
私は、あの時の事を許してないから、あまり言葉を交わさないようにしてる。ダブル……あの頃の私が受けたいじめと。
「ったく、おせーっての」
「悠馬…お前女の子には優しくしろって習わなかったか?」
桜井くんが言っても、岡崎悠馬は直さない。
「トロイな、ほんと。ほら、貸せって!」
私が背負ってたリュックを奪って、早足で歩く。
私が、なにしたってのよ!
ズンズンと3人が先に歩いて、私は1人トボトボ歩く。
そして……
「え? ここどこ?」
気付けば全く知らない道みたいなところを歩いてた。ちゃんと作られた道を歩いてた筈だったのに。
「元きた道を……」
振り向いても道なのか、草むらなのかわからない。
「あ、スマホ!」
─は、リュックの中。岡崎悠馬が持っている。
人間の声はしないし、聞こえてくるのは風のざわめきと鳥の声くらい。
「まいったな……」
どこか休める所を探してたら、余計に奥の方まで行ったのか、薄暗くなってきた。
「あ、水の音?」
音のする方へと進んだ途中、
「きゃぁぁぁっ!!」
ドスンッ……
滑り落ちた上に、右足を傷めたらしく立てない。
「どうしよう……はぁっ」
座れそうな岩があったから、ハンカチ敷いて座ったけど……。
「誰かぁ……」
「ねぇ、ネクラちゃんは?」
「は?」
「あれ?」
「「ウッソーーーーッ!! マジ?」」
「あのバカッ!!」
「先生、探さないと!!」
「俺の責任だから……」
「え? あ、ちょっと悠馬!?」
2人を残し、来た道を戻ってく。確か、途中で水分取ってたな。記憶を辿ると、水分ばかり取ってた気がする。
途中途中、名前を呼ばれながらもひたすら戻る。
「ここだ……。確か、ここでお茶を飲んでたな」
ここから俺らの後をついてったのなら……
「ここか?」
似たような道ではあるが、立ち入り禁止のロープが切れていたのが目に入った。
どれだけ歩いたかわからない。汗が滴り落ちる。
「おい、小松崎!! どこだ!」
ガサガサと草が茂る道を歩く。
「おーい! 小松崎! いたら、返事しろー!」
名前を叫んでも、鳥の声しか聞こえなかった。
どこだ?どこにいるんだ?綾華!
「綾華……綾華……おれが悪かった。綾華ーーーッ!!」
もうどこを探せば……
「ん? あれ、これは……」
見覚えのあるハンカチが、落ちてた。そのハンカチは、アイツが中学を転校するお別れ会で俺が箱にコッソリ入れたものだった。
「ここか?」
何かが滑った真新しい跡がついてた。
恐る恐る降りて、周りを見渡すとおとといまでこっちは雨が降っていたせいか、まだ乾ききってない地面に靴跡が……
いた……が、寝てる?
「いや、違う。足、傷めたのか」
呼吸が荒かった。熱は、ないと思う。
「どこか、休め……あった!」
洞窟?みたいな穴があったから、小松崎を抱き上げて、そこまで運んだ。
「脱ぐか」
ジャージと半袖を脱いで、地面に敷き、リュックを枕に小松崎を寝かせた。
起こさないように先生に連絡を取り、救助を待つが……。
「んっ……」
気がついたのか、声が漏れたが、まだ眠ってた。
そんな時、奥の方から小さな子猫がヨタヨタと数匹歩いてきて、小松崎にくっつくように眠ってしまった。
「ごめんな……」
俺は、中学に入った時に初めて見たお前が好きになってた。どうしたら、話ができるのか?どうしたら、振り向いて貰えるのか?わからず……
気付いたら、小松崎の嫌がることしかしていなくて。アイツが学校に来なくなった時、先生や親からかなり怒られて、謝りに行ったけど会うことは許されなかった。
手紙も送ったけど、いつの間にか受け取り拒否で戻ってきた。
中学3年の夏、喫煙で補導されてじいさんちに行かされた。その時に、偶然小松崎をじいさんの猫神社で見かけて、後をつけた。
それから、俺は両親に頭を下げ続け今はじいさんの家で居候してる。
猫神社の絵馬で、小松崎がここの高校を受けると知って、俺もそこにした。
髪も金髪に染めたし(そこらは怒られなかった)、名前はじいさんの名前になった。後継というやつで。
今はまだ言えない。言っても許してはくれないだろうから。
だから、目を覚ましてくれよ。
「綾華……」
気付いたら、小松崎の唇にキスしてた……。
暫くその顔を見てたら、目が開いた瞬間……
「ひっ……いやぁぁぁぁ!!」
大きな叫び声と共に、突き飛ばされた。
「ってーな。何すんだよ!」
「だって、だって、は、裸!!」
「裸?」
いや、ランニングシャツ着てますが?下も履いてますが?
「えっと、ごめんなさい」
「……。俺、突き飛ばされたし」
「お、驚いたから。その……」
「襲われると?」
「……」
誤解は解けたものの、まさか岡崎悠馬が自分のジャージとシャツを下に敷いてるとは思わなかった。
「足は?」
「まだ、痛い、です」
穴の外に出ると、先生の声が聞こえて……
「お前、なんという格好なんだ!」
怒られたが、別にいい。
教師、救護班になんとか上まで登らされて、やっと落ち着いた。
「すみませんでした」
「ありがとうございました。迷惑かけてごめんなさい」
「ほんと、そうだよな」
担任の先生は、頭に手をやっていたが、バンガローまでは……
「いい、おれが運んでく」
岡崎悠馬が、私を抱き上げて連れてってくれた。
最近は、佐田さんとも話すようになったけど、グループには入れない。
「だって、お前ネクラじゃん?」
「……」
岡崎悠馬さえ、班にいなければ!!
なんで、こんな人と一緒の班なんだろ?
「ネクラちゃん、大丈夫ー? 無理そうだったら救護班に言いなよー」
佐田さんが声を掛けてくれるのがありがたい。
山道は少し歩きにくかったけど、それでもなんとか頂上まで行けた。
「あっつぅ!!」
「ほんと、暑い!」
「俺、もう帰りたい」
……なに言ってんだ?桜井くんは。
「じゃ、帰れば?」
突き放す岡崎悠馬!すがる、桜井くん。この2人は、仲がいい。もう1人が、佐田さん。この3人が私の班員。
「おい、おっせーな。お前、足ちゃんとついてんのかぁ?」
「……ついてます! 失礼な!」
「ほんと、悠馬って、よくネクラちゃんに絡むよねー」
「いじめてるだけだ」
そういや、よく話しかけてはくるけど、今日みたいに大っぴらじゃない。いつもは、一言二言で終わる。まともに言うのは、図書室の中だけ。
「あ、先生呼んでるー!!」
4人でゾロゾロ掛けてったら、遅過ぎだ!と注意された。
「午後からは、各班でスタンプラリーを行う!」
そういやなんか言ってたっけ。
「みんなに渡した地図の赤丸のところに、われわれ教師がいるからスタンプを貰うように!」
「怪我なく、ゴールしてね!!」
各班に分かれて行くものの、みんな楽しそうに話しながら進んでく。
「やっだぁ、虫?」
「疲れたぁ! お腹空いたぁ!!」
スタンプラリー終われば、バーベキュー!! 白米は持参とか。
「肉ぅぅっ! そのために、俺はがんばーる!!」
そんな声が耳に届く。
「暑いなぁ……」
少し足を止めて、水筒のお茶を飲む。
「おい、止まるな。なんだ、水分補給か」
「……」
私は、あの時の事を許してないから、あまり言葉を交わさないようにしてる。ダブル……あの頃の私が受けたいじめと。
「ったく、おせーっての」
「悠馬…お前女の子には優しくしろって習わなかったか?」
桜井くんが言っても、岡崎悠馬は直さない。
「トロイな、ほんと。ほら、貸せって!」
私が背負ってたリュックを奪って、早足で歩く。
私が、なにしたってのよ!
ズンズンと3人が先に歩いて、私は1人トボトボ歩く。
そして……
「え? ここどこ?」
気付けば全く知らない道みたいなところを歩いてた。ちゃんと作られた道を歩いてた筈だったのに。
「元きた道を……」
振り向いても道なのか、草むらなのかわからない。
「あ、スマホ!」
─は、リュックの中。岡崎悠馬が持っている。
人間の声はしないし、聞こえてくるのは風のざわめきと鳥の声くらい。
「まいったな……」
どこか休める所を探してたら、余計に奥の方まで行ったのか、薄暗くなってきた。
「あ、水の音?」
音のする方へと進んだ途中、
「きゃぁぁぁっ!!」
ドスンッ……
滑り落ちた上に、右足を傷めたらしく立てない。
「どうしよう……はぁっ」
座れそうな岩があったから、ハンカチ敷いて座ったけど……。
「誰かぁ……」
「ねぇ、ネクラちゃんは?」
「は?」
「あれ?」
「「ウッソーーーーッ!! マジ?」」
「あのバカッ!!」
「先生、探さないと!!」
「俺の責任だから……」
「え? あ、ちょっと悠馬!?」
2人を残し、来た道を戻ってく。確か、途中で水分取ってたな。記憶を辿ると、水分ばかり取ってた気がする。
途中途中、名前を呼ばれながらもひたすら戻る。
「ここだ……。確か、ここでお茶を飲んでたな」
ここから俺らの後をついてったのなら……
「ここか?」
似たような道ではあるが、立ち入り禁止のロープが切れていたのが目に入った。
どれだけ歩いたかわからない。汗が滴り落ちる。
「おい、小松崎!! どこだ!」
ガサガサと草が茂る道を歩く。
「おーい! 小松崎! いたら、返事しろー!」
名前を叫んでも、鳥の声しか聞こえなかった。
どこだ?どこにいるんだ?綾華!
「綾華……綾華……おれが悪かった。綾華ーーーッ!!」
もうどこを探せば……
「ん? あれ、これは……」
見覚えのあるハンカチが、落ちてた。そのハンカチは、アイツが中学を転校するお別れ会で俺が箱にコッソリ入れたものだった。
「ここか?」
何かが滑った真新しい跡がついてた。
恐る恐る降りて、周りを見渡すとおとといまでこっちは雨が降っていたせいか、まだ乾ききってない地面に靴跡が……
いた……が、寝てる?
「いや、違う。足、傷めたのか」
呼吸が荒かった。熱は、ないと思う。
「どこか、休め……あった!」
洞窟?みたいな穴があったから、小松崎を抱き上げて、そこまで運んだ。
「脱ぐか」
ジャージと半袖を脱いで、地面に敷き、リュックを枕に小松崎を寝かせた。
起こさないように先生に連絡を取り、救助を待つが……。
「んっ……」
気がついたのか、声が漏れたが、まだ眠ってた。
そんな時、奥の方から小さな子猫がヨタヨタと数匹歩いてきて、小松崎にくっつくように眠ってしまった。
「ごめんな……」
俺は、中学に入った時に初めて見たお前が好きになってた。どうしたら、話ができるのか?どうしたら、振り向いて貰えるのか?わからず……
気付いたら、小松崎の嫌がることしかしていなくて。アイツが学校に来なくなった時、先生や親からかなり怒られて、謝りに行ったけど会うことは許されなかった。
手紙も送ったけど、いつの間にか受け取り拒否で戻ってきた。
中学3年の夏、喫煙で補導されてじいさんちに行かされた。その時に、偶然小松崎をじいさんの猫神社で見かけて、後をつけた。
それから、俺は両親に頭を下げ続け今はじいさんの家で居候してる。
猫神社の絵馬で、小松崎がここの高校を受けると知って、俺もそこにした。
髪も金髪に染めたし(そこらは怒られなかった)、名前はじいさんの名前になった。後継というやつで。
今はまだ言えない。言っても許してはくれないだろうから。
だから、目を覚ましてくれよ。
「綾華……」
気付いたら、小松崎の唇にキスしてた……。
暫くその顔を見てたら、目が開いた瞬間……
「ひっ……いやぁぁぁぁ!!」
大きな叫び声と共に、突き飛ばされた。
「ってーな。何すんだよ!」
「だって、だって、は、裸!!」
「裸?」
いや、ランニングシャツ着てますが?下も履いてますが?
「えっと、ごめんなさい」
「……。俺、突き飛ばされたし」
「お、驚いたから。その……」
「襲われると?」
「……」
誤解は解けたものの、まさか岡崎悠馬が自分のジャージとシャツを下に敷いてるとは思わなかった。
「足は?」
「まだ、痛い、です」
穴の外に出ると、先生の声が聞こえて……
「お前、なんという格好なんだ!」
怒られたが、別にいい。
教師、救護班になんとか上まで登らされて、やっと落ち着いた。
「すみませんでした」
「ありがとうございました。迷惑かけてごめんなさい」
「ほんと、そうだよな」
担任の先生は、頭に手をやっていたが、バンガローまでは……
「いい、おれが運んでく」
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