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四話

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 ジャリジャリと砂利を踏む音……。

 お盆のお墓参りは、今年から三人になった。

「じゃ、行こうか?」

「うん」

 目の前を歩く二人に続いて、私はその後から……。

 桶と柄杓を元の位置に戻し、そのまま駐車場へ。

 次に来るのは、秋か。

 法要も先週済んだけど、それとは違う家族会だけで行くお墓参り。

「ふぅっ。今日も暑いわねぇ……」

「だねぇ」

 お寺は、山の中腹にあって、蝉の鳴き声が更に暑さを倍増していた。

「でも、出張前にこれて良かった」

「そうだな」

「お姉ちゃん、今度はどこ行くの?」

「福岡よ。お土産、期待してて」

 隆義兄さんも同じ日に出張だけど、こっちは隣県。

「でも、ほんとに大丈夫? 隆さんのご実家行ってもいいのよ?」

 お姉ちゃんは、言ったけど、そこに行きやすいのはお嫁さんであるお姉ちゃんであって、私は親戚の一人に過ぎない。

 なんて事は言えず、大丈夫だと言い続けたのに……。まだ、心配らしい。

「お姉ちゃん、老けるよ?」の一言で、お姉ちゃんは黙る。

「確かに、老けられちゃ困るな」

 隆義兄さんも、お姉ちゃんが私の事を心配し過ぎてるのもわかるから、それにノる。

「もぉ、意地悪なんだから!」

 一旦、家に寄って着替えてから食事に出掛ける筈が……。

「え? お姉ちゃん、これから仕事なの?」

「みたいね。ま、明日の打ち合わせだけだから」

「じゃ、近くまで送るよ。瑠璃ちゃんも着替えておいで」

 食事は、ふたりで行くことになった。

 ここ最近のお姉ちゃん、仕事仕事で、身体大丈夫なのかな?

 駅でお姉ちゃんを降ろして、私と隆義兄さんは予約しておいたレストランへと向かった。

「ほんと、心配だよね」

「あぁ……」

 隆義兄さん、何故か私を見て笑う。なんか、変なもんでもついてるのかな?

「でも、ほんと大丈夫? 明日と明後日」

「大丈夫だって!」

「そう?」

 隆義兄さん、ニヤニヤしてる。

「でも、瑠璃ちゃん変わったね」

「そう? あ、このお肉美味しい……」

「だってさ、ちょっと前まで麻里が瑠璃ちゃんの心配ばっかしてたのに……」

 あ、そういやそうだった。

「ま、それだけ大人になったってことです」

「おとな、ね? 可愛い」

 なんか、最近隆義兄さん、私に対して可愛いという言葉を使う。聞いてるとなんかモジモジしちゃうし……。

「照れる?」

「う、うん……。あまり言われたこと無いから」

 お姉ちゃんや友達からは、可愛いとは言われるけど、男の子とか男の人からは、言われたことパパ以外なかった。

 最後のデザートなんて、隆義兄さんがずっと私を見てるから、味なんてわかっなかった。

「ま、虐めるのはほどほどにしよう」

 虐められてたの?可愛いも嘘?

 レストランでて、ちょっと遠回りして、ドライブがてら家に帰った。


 お姉ちゃんは、まだ帰ってはいなかったから、お風呂に入る事にした。

 ポチャン……ポチャンと閉めた蛇口から水滴が落ちる。

「はぁ、気持ちいい」

 私は、お姉ちゃんと違って割りとお風呂が長い。この日も、大好きな入浴剤を入れて、お風呂に入ってた。

 外で車の停まる音がした。

「お姉ちゃん、帰ってきたんだ。じゃ、まだいいかな? 邪魔しちゃ悪いし」

 暫く楽しんで、出ようとバスルームの扉を開けた。

「……。」

「あ……、ご、ごめん」

 扉を開けたら、脱衣場に隆義兄さんがいて……。

 あまりのことに、咄嗟に隠すなんて事も出来ず、私は、隆義兄さんに裸を晒してしまった。

 お姉ちゃんが、お風呂に入ってる時に、隆義兄さんが、

「み、見てないから。瑠璃ちゃんの裸見てないから。だから、麻里には言わないで」

 見たよね?バッチリ……。

「はい」

 そんなこと言って、気まずくなるの嫌だし?

 こんな貧相な身体見せてしまったし。

「私の方こそ、こんな身体で……」

「だ、大丈夫だから。俺のこの……」

 なんかいきなり、隆義兄さん咳き込んだ。

「じゃ、おやすみなさい」

「あ、あぁ。おやすみ」

 お姉ちゃんは、まだお風呂に入っていた。のぼせなきゃいいけど……。

 翌朝は、お姉ちゃんを空港入り口まで見送って、私は最寄り駅で降ろされ、隆義兄さんは車で隣県まで行くらしい。

「ここまま帰るのもあれだし。お財布はあるし……」

 少し早いけど、カフェで時間を潰して、街ブラすることにした。

 お姉ちゃんが結婚して、私のお財布はかなり潤った。隆義兄さんと、隆義兄さんの両親から、事あるごとにお小遣いが!!お姉ちゃんには、言ってはある。

「はぁ、買った買った」

 参考書と問題集と文房具とおやつ!

 学校や塾の宿題も終わりに近づいて来てるし。

「お姉ちゃんが、帰ってきたら、花火大会だ」

 部屋には、隆義兄さんのお母さんが、仕立ててくれた浴衣がある。もちろん、お姉ちゃんのも!!

 これを着て、三人で花火大会に行く約束をしていた。

「楽しみだな……」

 市の花火大会は、県内でも一番大きなもので、お姉ちゃんと言ったり、友達同士で行ったりしていた。

「あー、雨降ってきたぁ!」

 慌てて二階のベランダに出て、干してあった洗濯物を取り込んで、コケた。

「雷、鳴らないよね?」

 地震、雷、火事、親父!と誰もが怖がるフレーズがあるが、中でも雷だけは苦手な私。

 小雨だった雨も段々と強くなって、気のせいか、遠くの方で雷鳴が聞こえた。

 気を紛らわせようと宿題をしたけど、駄目で……。

 夜になっても雨も雷も酷くなって……。部屋中の電気をつけ、毛布に包まった。

 風も強くなって、ガタガタと窓が揺れて、ご飯を食べてる手が止まった。

「な、なんか音がした?」

 雷だろうか?なんか、ドンドンと音が聞こえる。

「怖い……」

 プッと電気が消えて、私はさらに不安になった。

「お姉ちゃん! 隆義兄さん! 怖い」

 小さな音がし、何かが肩に触れた瞬間、私は……。

「……気を失ったのね?」

「そう! 俺も焦った」

 そういや、なんで?隆義兄さんが?

「でも、あんなに怖がるんだね。雷で……。いやぁ、まさか俺の名前を呼んでくれるとは……」

 ???口にしたの?記憶ない。

「でも、隆義兄さん、出張じゃ?」

「うん。途中で切り上げた。こっちで雷が凄いと聞いたからね。明日、朝イチで戻るけど……」

「よ、良かった……」

 妙にドキドキしたのは、雷のせいかな?でも、良かった。

「まだ暫く電気復旧に時間かかるみたいだよ」

 真っ暗な中、スマホの灯りだけで私が食べかけていたチャーハンを食べていた隆義兄さん。

「そう……」

 それから一時間くらいしてやっと電気がついたけど、なんか怖くて……。

「ね、ちゃんとそこにいる?」

「いるよ。待ってるよ」

 トイレもお風呂も隆義兄さんに頼んで、外で待っててもらった。

 雷なんて、無くなればいいのに!
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