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そこにいる人
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一華は、病院から急いで家へ帰った。
「ただいま~」
と言うと、宏人と香菜が
「「お帰り~」」
と首を出す。一華は、二人をおもいっきり抱きしめた。
「母さん!どうした!てか、はずい!」
「お母さん、苦しい~!」
スゥ~
「ふ~我が子達が、元気で何より!」
パッと二人をはなし一華は、頷きながら
「ちょっと、お母さん!調べものがあるから!何かあったら、お父さんの書斎に来てね?」
と言い書斎へ行った。
ガチャ
「戦争…野戦病院…昔の医療…あった!戦争の医療…」
本を開けると、昔の看護師の服や写真の参考資料が出てきた。
「ひっ」
と声をあげてしまった。
深月ちゃんがみえているものは、この世の人ではないと確信してしまった。
昔の戦時中の看護師だと…
“深月ちゃんをこっちに引き戻さないと…手遅れになると…”
そう思った。
PiPiPi…
電話が鳴る。同僚からだ。
「もしもし~どした?…えっ?深月ちゃんがいなくなった?!…うん、うん、急いで行くね!」
書斎から出て、宏人と香菜に
「急患がでたみたいなの!行ってくるね!」
「「うん、いってらっしゃい!!」」
夜のナースステーションは、雰囲気がある。怖さを少し我慢して今回は、幼い命を助けるために奮いたたせる。
ナースステーションにつくと驚いた。看護師達がストレッチャーやワゴンなどを片付けていた。
一華は、同僚に
「どうしたの?」
「…あのね、深月ちゃんが一人で廊下を歩いてたの…んで、気づいた看護師が寝る時間だと言って帰らせようとしたらワゴンやらストレッチャーがどこからともなく飛んできて大変だったの!びっくりしていたら、深月ちゃんが誰かに連れ去られてて…」
「えっ?!」
あの戦時中の看護師だと思った。
慌てた一華は
「…で、深月ちゃんは…見つかったの?」
「ううん、まだよ。警備員さんと看護師で探してる…怖いよね?」
一華は、片付けを同僚に任せて自分も探しにでる。
色んな部屋をみたが、どこにもいない…
ただ、もうここしかないというのが一つある。
それは“霊安室”の通路だと感じていた。
一華は、霊感などはないが感が鋭い時がある。
「霊安室か…あの通路、嫌なんだよね~なんかいそうで!」
エレベーターに乗らず階段で降りていった。
すると降りた目の前から、左頬が抉れ、白い目をしている。それから薄汚れた白いワンピースにエプロンを着て赤十字マークの帽子を被った女性と深月ちゃんが歩いている。
一華は慌てて、女性に
「待って!!その子は、生きてるわ!!」
と言っても歩きだす。
「待ちなさい!!例え、幽霊でも許さないわよ!」
そういうと、深月ちゃんの手を放す。
一華の方へ歩きだし、ブツブツと何かを言っている。
「…私の…子……どこ…ですか…?…私の…子…」
一華は、心の中で“深月ちゃんを自分の子だと思ったの?”とそう感じた。
看護師に優しく
「あなたのお子様は、どこにいるかわかりません。ごめんなさい。ただ、あなたが連れていた子は、田中深月ちゃんです!あなたの子供では、ありません!連れていかないで下さい!」
看護師は、またブツブツと
「また…間違え…た…違う…違う子…」
そう言って消えていった。
一華は、深月ちゃんの所まで言って脈をはかる。
「…よかった。生きてる。」
深月ちゃんを抱えて、小児科病棟へ戻った。
次の日から、深月ちゃんの回復が早かった。医師も看護師も安心した。そして、数日で退院していった。
数ヶ月後、一華は夫・巧の仕事の都合で退職することになった。そのときに思いきって長年この病院にいる婦長や同僚に聞いてみた。
なんでも戦時中、この病院は、ここにあったらしい。あとなぜか今でもこの病院で子供が、年に何回か消えるらしいと言っていた。
一華は、ふと思った。
“彼女、あの看護師さんは、自分の子供に会えないから…探してるんだろうな…”と。
カラカラカラ…
「私の…子…私の…」
カラカラカラ…カラカラカラ…
「ただいま~」
と言うと、宏人と香菜が
「「お帰り~」」
と首を出す。一華は、二人をおもいっきり抱きしめた。
「母さん!どうした!てか、はずい!」
「お母さん、苦しい~!」
スゥ~
「ふ~我が子達が、元気で何より!」
パッと二人をはなし一華は、頷きながら
「ちょっと、お母さん!調べものがあるから!何かあったら、お父さんの書斎に来てね?」
と言い書斎へ行った。
ガチャ
「戦争…野戦病院…昔の医療…あった!戦争の医療…」
本を開けると、昔の看護師の服や写真の参考資料が出てきた。
「ひっ」
と声をあげてしまった。
深月ちゃんがみえているものは、この世の人ではないと確信してしまった。
昔の戦時中の看護師だと…
“深月ちゃんをこっちに引き戻さないと…手遅れになると…”
そう思った。
PiPiPi…
電話が鳴る。同僚からだ。
「もしもし~どした?…えっ?深月ちゃんがいなくなった?!…うん、うん、急いで行くね!」
書斎から出て、宏人と香菜に
「急患がでたみたいなの!行ってくるね!」
「「うん、いってらっしゃい!!」」
夜のナースステーションは、雰囲気がある。怖さを少し我慢して今回は、幼い命を助けるために奮いたたせる。
ナースステーションにつくと驚いた。看護師達がストレッチャーやワゴンなどを片付けていた。
一華は、同僚に
「どうしたの?」
「…あのね、深月ちゃんが一人で廊下を歩いてたの…んで、気づいた看護師が寝る時間だと言って帰らせようとしたらワゴンやらストレッチャーがどこからともなく飛んできて大変だったの!びっくりしていたら、深月ちゃんが誰かに連れ去られてて…」
「えっ?!」
あの戦時中の看護師だと思った。
慌てた一華は
「…で、深月ちゃんは…見つかったの?」
「ううん、まだよ。警備員さんと看護師で探してる…怖いよね?」
一華は、片付けを同僚に任せて自分も探しにでる。
色んな部屋をみたが、どこにもいない…
ただ、もうここしかないというのが一つある。
それは“霊安室”の通路だと感じていた。
一華は、霊感などはないが感が鋭い時がある。
「霊安室か…あの通路、嫌なんだよね~なんかいそうで!」
エレベーターに乗らず階段で降りていった。
すると降りた目の前から、左頬が抉れ、白い目をしている。それから薄汚れた白いワンピースにエプロンを着て赤十字マークの帽子を被った女性と深月ちゃんが歩いている。
一華は慌てて、女性に
「待って!!その子は、生きてるわ!!」
と言っても歩きだす。
「待ちなさい!!例え、幽霊でも許さないわよ!」
そういうと、深月ちゃんの手を放す。
一華の方へ歩きだし、ブツブツと何かを言っている。
「…私の…子……どこ…ですか…?…私の…子…」
一華は、心の中で“深月ちゃんを自分の子だと思ったの?”とそう感じた。
看護師に優しく
「あなたのお子様は、どこにいるかわかりません。ごめんなさい。ただ、あなたが連れていた子は、田中深月ちゃんです!あなたの子供では、ありません!連れていかないで下さい!」
看護師は、またブツブツと
「また…間違え…た…違う…違う子…」
そう言って消えていった。
一華は、深月ちゃんの所まで言って脈をはかる。
「…よかった。生きてる。」
深月ちゃんを抱えて、小児科病棟へ戻った。
次の日から、深月ちゃんの回復が早かった。医師も看護師も安心した。そして、数日で退院していった。
数ヶ月後、一華は夫・巧の仕事の都合で退職することになった。そのときに思いきって長年この病院にいる婦長や同僚に聞いてみた。
なんでも戦時中、この病院は、ここにあったらしい。あとなぜか今でもこの病院で子供が、年に何回か消えるらしいと言っていた。
一華は、ふと思った。
“彼女、あの看護師さんは、自分の子供に会えないから…探してるんだろうな…”と。
カラカラカラ…
「私の…子…私の…」
カラカラカラ…カラカラカラ…
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