遅漏VS即イキアナルの攻防

ミツミチ

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「はっ、はあっ、あ……っ」
 くちゅりと水音が立つ。
「っ、っ……!」
 そのたびに背が反り、丸まり、忙しなくシーツに皺を寄せた。
「き、恭司さんっ、おれ、もう……っ」
 首筋に痕を残すところから始まった唇の愛撫は、あちこちに執着の証を残しながら全身に渡った。唇から解放されたかとおもえば指が、そしてその手が、火照った肌を撫で、くすぐり、揉み、焦れた体温を更に高めていく。涙を流すばかりの性器へついに触れられたときは、それだけで高い声が上がった。あくまでも優しい、芯からほぐすような愛撫に全身の神経が過敏に育っていく。これ以上されたら自分がなにを口走りはじめるかわからない。だから彼の指が後孔に触れた時には、いっそ安堵すら覚えたが、
「あっ、も、もう、イくっ、っ、っ……!」
 後孔が収縮をはじめると、ぴたりと指のうごきが止まる。 
「う゛ぅ、ッッ……っ!!」
 ──また、イかせてもらえなかった。
 堰き止められる切なさにカクカクと腰が振れる。何度目かのおあずけに、瞬は下唇を噛み、枕に頬を擦りつけた。
「……あぅ、うっ、もうやだぁ……」
「お前が言ったんだろ。前戯でイきたくないって」
「そう、っですけど……」
 理性あっての決断が揺らぐ。からだがイきたがっている。精を吐きだしたい。快楽に最後まで身を委ねたい。ちがう、だめだ。だってまだ、はじまってもないのに。
「……あっ、あぁっ! まっ、待って、っ♡」
 波が落ちついたタイミングで、指がうごきだす。丹念にほぐされたそこは三本の質量を咥えこみ、にゅくにゅくと過敏にひくつく肉壁を擦られるだけで、たまらない快楽に襲われた。
「恭司さんっ、もう、おれっ、ほんとに、っ♡ あっ、あぁ……っ!」
 延々とした快楽責めのような生殺しのような状態で、追いつめられた身体は快感に飛びつき、すぐにでも達そうとするが、
「ふぅう゛っ………!」
 いっそ、間違えてくれたらいいのに。嫌味なほど的確なタイミングで刺激を取りあげられて、もどかしさにのた打った。
「恭司さん、もう十分、十分ですから……っ」
「十分なことないだろ」
 ある。ぜったいある。おれのケツはかつてないほどに溶けている。
「これまで、ろくにお前のからだに触れられなかったんだ」
 十分なことはなにもない。その呟きに面食らう。
 挿入に至るまでの準備は、ほぼすべて自分がこなしていた。本番前にへばってしまうことを懸念してのことだったが、でも、そうか。そうなのか。おれがお願いしたから我慢してくれてただけで、ほんとはイヤだったのか。恭司さん、ずっと、おれに触りたかったんだ。そっか、そう……。
「っ、は……♡」
 噛みしめた事実に、心身を満たす熱が更に煮え、勝手に指を締めつけて、勝手に快感を拾いあげる。
「っ、んんぅ……っ、」
 そのまま達そうとするのを見越して指が抜かれた。
「あ……」
 熱いものが肉縁に押し当てられる。期待するみたいにして窄まりはひくつくが、とろとろに溶かされ、焦らされつづけたこの穴に、いま、いれられたら。
「きょ、恭司さん、ちょっと待って、今はやば……ッ、っあ………!」
 ぬぷ、と肉縁をひらき、内側を満たしていく質量。この味を、熱を、すでに知っているはずなのに。発情しきった身体にこれまで以上の感覚をもたらした。
「───ア、あ゛ぁっ、あッ♡♡!」
 瞬のペニスから白濁が迸る。
「っ、ぅああッ、ア゛……ッ」
 さんざん焦らされたあげくの絶頂。投げだされた足がガクガクと痙攣するが、勃起はまだ入りきっていない。激しく収縮する括約筋を割り開き、敏感な肉を擦りあげながら侵入を果たす。恥部が触れあう頃にはもはや息も絶え絶えだった。
「はっ……、あ、恭司さ、」
「大丈夫か?」
「だ、いじょうぶ、ですけど、す、すこし待って……」
「……嫌か?」
 え、と声が漏れた。 
「感じるのが、イくのが、お前は嫌なのか」
「ちっ、ちがいます!」
 首を横に振る。
「イヤじゃないです。恭司さんとしてるのに、恭司さんが、おれのこと気持ちよくしてくれるのに、いやなわけない。でもからだが言うこと聞かなくて、前みたいに恭司さんのこと殴っちゃうかもしれないのが……それが、いやです」
 ならいっそ、この手を縛ってもらえばいいのか。思いついたところで、両手を取られて恭司の背に回された。
「あの」
「好きなだけ爪立てろ」
「だから、傷つくたくないんですって」
「おれも嫌じゃない。わかるだろ」
 瞬は黙った。黙って、背に縋る力を強めた。
「お前が嫌じゃないなら、もう止めない。いいか?」
 後孔を満たす熱を意識する。張り詰めたその固さから、彼が今も我慢しているのがわかった。
「……はい。いっぱいしてください、おれも恭司さんのこと気持ちよくしたい。おれのなかできもちよくなってほしいから、もう、止めないで、んむ」
 降ってきた軽いキス。頬を撫でられ見つめ合う。甘い蜜時の一瞬あとに、亀頭だけを残してずるりと肉棒が抜かれた。
「あぁっ……!」
 そうしてまたゆっくりと奥に戻る。最初の数回。慣らすように繰り返された緩慢なピストンは、肉筒が受けいれはじめたのを知り、段々と早さを増していく。
「あっ、あっ、あっ♡ っ~~~は、あぅ、ぅんん゛っ♡」
 急き立てるような熱と長いストロークに犯されて、さっき達したばかりのそこがまた激しく収縮し始める。その中を容赦なく突きあげられ、熱い肉棒に押しだされるように快感が弾けた。
「……ひ、ッ、ア゛───♡♡!」
 ビクンッとからだが跳ねる。顎を反らせて頂点の快楽に震えた。
「……はっ、ア゛、あぁあ゛ッ!? あっ、そこだめっ、今だ、っめ……ぇ゛♡!!」
 なかの痙攣で、達したことには気づいてるだろうに。絶頂の最中にある前立腺をぐうっと亀頭に圧迫されて、身を焼くような強烈な快感に晒される。
「だめか?」
「あ゛っ♡ その、ちがっ、ッひ────!!?」
 ぬる、ぬる、と張りだしたカリ首がしこりの上を前後に滑る。弱い部分を集中的にいじめるその動きに、投げだしていた足が持ち上がり、膝がガクガクと震えた。目の前に小さな火花が散るような快楽が積み重なり、また絶頂へとせき立てられる。
「やっ、あぁあ゛あっ♡ それやばい゛っ、やばいですっ、だめっ、だめだめだめっ、イ゛くっ、またイッちゃ……あ゛ッ~~~~~♡♡♡」
 抉る角度で押しこまれ、びゅるっと精液が搾られた。恭司が腰を引き、奥を突く。息つく間もなく再開される抽挿に、ばかみたいに大きく開いた口から、甘く濁った悲鳴が溢れる。
「うあ゛あっ、アッ、あぁああ゛っ♡♡ だっ、だめっ、だめっいってる、いまイッてます、っ、とめ、あ、ちがっ♡ だめじゃないぃ゛っ、イヤじゃないから止めないでっ、っ、あっあぁああ゛っ!! そこっ、そこだめ……ぇ゛っ♡ いぅ、ッ、っ~~~~~♡♡」
 甘さを越えた快楽に、背を掻き抱き激しく身悶える。支離滅裂な言葉に恭司は「どっちだよ」と唇を歪めた。その煽情的な笑みに、一方的に注がれる快楽に、ぞくぞくと掘り下げてはいけない類の興奮が迸る。
「ごっ、ごめんなさいっ♡ とめないでっ♡ おれが、だめって言っても、やだって言っても止めないでくださいっ、ひぐっ、ぅうんんん゛………!!」
 とは言えど、注がれる快楽の量は彼を蹴り飛ばしたあの時をはるかに超えていた。今更気づく。アレでも、手加減はしてくれていたのだと。愛情の一端に浸る一方、からだはもはや限界だった。無意識の内に腰が引ける。それを両側からガシリと掴まれた。 

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