発禁状態異常と親友と

ミツミチ

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限界××編

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 高ぶった熱が一瞬で地の底まで落ちていく。目の前にいるのは、だれもない友人のはずなのに。なのに、なにを口走って、なにを求めて……なにを、
「颯介?」
 なにも、願みずに。
「う゛っ……」
 ぽろっと、こぼれるように落ちた涙に岳は目を丸くした。
「あ!? なんで泣くんだよ!?」
「……ちが、ちがう、いまの忘れてくれ。ごめん、おれ間違えた」
 あれから。
「友達なのに、こんなこと、させてごめん」
 二人の間には、時折不自然な沈黙が生じるようになって。それでも取り繕うように互いにいつも通りを演じるたびに、颯介は激しい後悔に襲われた。理由は明白に、自分が一時の欲に負けて彼に縋ったことにあった。
「岳とはずっと連れで、友達でいたいのに。気まずくなんかなりたくない、変なふうになりたくない、こんなっ、せ、性欲なんかでお前のこと、失いたくなんかないのに」
 関係にヒビを入れたくないと本当にそうおもっているのなら、乳首でもちんこでも、おれはねじ切ってでも我慢すべきだった。
 ──それなのに。
「なのにおれ、岳に……おまえに触れてほしくてここにきた」
 また、前みたいにって。期待した足で、からだで、ここまできた。わからないなんて無自覚ぶるのももう限界だった。朦朧とした意識の底にあったその欲望におれは気づいてた。気づいた上で、目を瞑って知らないフリをした。そうしていれば、まだ取り返しがつくような気がして。
「……ごめん」
 こんなにまで深く求めてしまったら、もう一緒のことなのに。
「もうぜんぶ忘れてくれ。もう変なこと言わない。変なとこ、見せたりしないから」
 ベッドから抜けだそうと身をよじる。しかし岳は退こうとせず、せめて背けようとした頬に手のひらが触れた。
「颯介」
 落ちついた声に名前を呼ばれる。
「言い逃げすんなよ。おれの話も聞けって」
 その指先が涙を掬い、
「……別にさ、性欲だけじゃないだろ。おれのこと信頼してるからここにきたんじゃないのか」
 優しく濡れた目尻を撫でた。
「おれは嬉しかったよ。颯介がだれでもなく、俺のところへきてくれて」
 だから、
「……間違えたとか、いうなよ」
 彼にしては小さな声で呟き、岳は瞬きをひとつ落としてから、ふっとその頬を緩ませた。
「話も飛躍させすぎ。なんかあっても、なににしたって。お前の心配してるようなことは起こんないから」
 身を屈めて、なだめるように颯介を抱きしめた。とくとくと鼓動が重なる。背を撫でる手の平に緊張が、不安が紐解かれていく。
「それに全部がぜんぶ、お前に頼まれたからやったってわけじゃない。今だっておれはお前に触れたくて触れてるし。颯介だって触れてほしいって、俺が欲しいって思ってくれてるんなら、これ以上なにがだめなのか俺にはわかんないんだけど」
 彼の中心はまだ熱を孕んだまま。それは自分も同じことで、
「なあ、もう一回言って。さっきの。すげー嬉しかったから」
 耳元に触れた唇が囁く。
「な、颯介」
 触れたくて、触れられたくて、その事実だけ飲み込んで、その芯となる理由には触れないまま、颯介は求められるまま唇を開いた。
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