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乳首編
1-2
しおりを挟む痒……。
乳首の痒みが朝より強い。しかし生徒で溢れる下駄箱でおもむろに掻きだすわけにもいかず、もぞもぞと乳首の存在を持て余していると、
「はよ! 颯介!」
バーンと背中を手のひらで張られ、腰を反らせた。
「ッ……!!?」
その瞬間。
突っ張った服に擦れた乳首へ衝撃走る。
不自然な角度で立ち止まった颯介を、友人の岳はどうした?と覗きこんだ。いや実は乳首蚊に刺されてさ~!とネタになるはずだった自身の体を襲う症状を、颯介はもはや笑いながら口にすることができなくなっていた。
「……ゃ、なんでもない」
「声ちっさ。え、まじで痛かった?」
それか体調わるい?と背を擦ろうとした手の平を咄嗟に避けた。えっ……と悲しそうな友人の表情が刺さる。
「いやちが、その、今朝ベッドから落ちて、背中打ったんだよ」
「あ、まじで? 悪かったな。大丈夫か」
「お前の張り手で完全に終わった」
「わりーって。もう一回いったら治るんじゃね?」
「やんなよ! 絶対やんなよ!」
けらけらと笑いながら教室に入る。痒さのなかに、妙な疼きが入り混じり始めた。虫刺されってこんなだっけ。
数学はただでさえ苦手科目だったが、今日は数字の1すら入ってこない。
「……っ」
か、かゆ……。
あまりの痒みに、意識がぜんぶ乳首に持っていかれる。知らないうちにおさまるものだと踏んでいたのに、じわじわ、じくじくと、突起を渦巻く疼きはその深さを増していく。自然な動きを装い上半身をゆすり、衣服とのこすれで少しでも乳首を搔こうとするも、逆効果だった。さわさわと先端に擦れる繊維にくすぐったさが増して、颯介は声にならない声で悶えた。
──授業が終わったと同時、颯介は滅多に使われない旧校舎のトイレへ走った。
「……か、っゆ!!!」
個室に入るやいやな、シャツの上から乳首を搔きむしったが、
「っ、っ、ぁ、アっ……!?」
ま、待って、まって。
「ぇ、え……なにこれ、っ」
爪を引っ掛けた瞬間、痒みが払拭されるものとはまた別の、更に大きな感覚が乳首に走った、
「っ、ぅ、あっ、なんで、」
きもち、いい。
「っ、ぁ……、指、とまんな、」
すごくきもちいい。
「はっ……ッ……」
痒みが摩擦で相殺される快感を超えて、ビリビリと性感に直結する快感がある。刺激にぴんと立ちあがった乳首に爪をひっかける。その度走る鋭い快感に、熱い息が漏れた。
「っ、なんで、こんな……ッ、ぁ」
痒いとこ搔くのって、こんな、下半身にくるもんだったか。疑問がよぎるも指先は止められず、颯介は目をつむって自身が与える快感に浸った。
しかし短い休憩時間はもう終わる。はやく教室に戻らなきゃいけない、のに、
「っ、っ、よ、余計、痒いぃ……!!」
手を止めた瞬間、ぶわっと痒みが広がった。
搔けば痒くなる。虫刺されのセオリーを忘れて、その場限りの解放を選んだ自身の行動を悔いる。
我慢をしなくては。
搔かなければその内おさまる。これも虫刺されのセオリーだった。颯介は強く意志を固め、疼く乳首とともに教室へ戻った。
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