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しおりを挟む朱に染まりきった顔に、青が混じる。
「ち、ちがう」
そろりと指でなぞる。レオネルの腹部を十字に切る、深い傷跡。
「……なにが」
この傷を負ったときでさえ、剣を振るい続けた強靭な肉体が、あんな小さな魔物に翻弄され、呆気なく膝を突く。
なにが、あったのか、なにをされたのかは知らない。しかし、
「結論は同じでしょう」
ディエゴは自身の欲望を窄まりに宛がった。レオネルの瞳が動揺に振れる。
「どれだけ、あの国の人間に、その姿をみせたのですが。それを恥だとは、おもわなかったのですか」
「ディエゴ、やめろっ、やめてくれ……っ!」
言葉とは裏腹に、腰を押し進めれば、その肉穴は抵抗なく勃起を飲みこんでいく。竿の太さに広がる括約筋。その肉の甘い締めつけが。彼が囚われているあいだに、どんなふうにその身を扱われていたのか。その痴態を想起させる。
「なっ……どうして……ッあぁっ」
レオネルは揺れる瞳でディエゴを見つめた。屈辱よりも、絶望に濡れる瞳。しかしその奥に透けてみえる恍惚に、ディエゴの胸に深い劣情と落胆が渦巻く。中腹まで埋めたペニスを、一気に奥まで押しこんだ。
「っ───んん゛ぅ……っ♡!!」
それだけで。
とろりと、彼の腹に垂れた精液に、目の前が真っ赤に染まるような衝動が駆け抜けた。腰を引き、先端を残して抜き去り、間髪入れずに奥まで突きこむ。
「あぁ゛あっ……!!」
溶けそうなほどに熱い肉だった。腸壁を埋めるペニスを離さまいと絡みつき、抜こうとすれば吸いついてくる。ディエゴは縛られた足を抱え込み、上から下へ落とすような長いストロークで肉穴を穿つ。
「あぁあ゛っ!! ああっ、ッ~~~~んっ、んん゛っ♡♡」
恥も外聞もなく喘ぎ倒していたくせに。急に唇を噛み、首を振り、あからさまな拒否を示す。
「んんん゛ぅう゛っ♡♡ っ、っ~~~~~♡♡!!?」
意味がわからない。敵のペニスは何本と咥えてきたくせに、自分のそれは受け入れられない意味がわからなかった。こみ上がる理不尽な憤りのまま、ディエゴは狭い肉穴を執拗に犯した。抵抗を示す身体を抑えつけ、肌が鳴るほどに打ちつける。
「───っひ、ぎっ、ッ」
肉壁がきゅううとペニスを締めつける。吐精はしていない。しかし彼が射精せずに何度も達しているのは明らかだった。もはや否定に意味はないのだと、知らしめるように窮屈になった肉壁にペニスをすりつけて快感を煽る。ふとカリ首にしこりが引っかかり、彼が一際高く喘いだ。スライムにしゃぶられていた箇所。彼の性的な弱点だった。挿しこむ角度を変え、そこに亀頭を押し当てたまま小刻みに穿つと、レオネルは唯一自由な首をぶんぶんと振り乱した。
「あぁあ゛っ───♡♡!! や……っめ゛、そこっ、ッ♡♡!!」
「どうしてですか?」
「あぁっ、アァア゛……ッ♡」
「なぜですか。理由を述べていただかないとわかりませんよ」
「───っ、あぅ、うぅう゛っ♡♡」
ふと視界の端に蠢くものを捉える。シーツを這うスライム。振り払おうとしたが、それが一直線に進む先をみて、手を止めた。
「あっ……や、なっ、なんで……やめろっ!」
スライムはレオネルの腰をのぼり、陰茎へと纏わりついた。更に先端へ向けて上がっていくそれに、レオネルは酷く焦った様子でそれを振り落とそうと足掻いた。まるで、これから起きることを知っているように。
「……っひ、っ、ッ────♡♡!!」
鈴口を覆ったスライムは、ぬぷりと、尿道口を割りひらいた。
「や゛っっ、あぁ……っ!! 抜いてっ、抜いてくれっ、いやだっ、ア゛……!!」
ぬぷぬぷとその身を沈めていく。レオネルは必死に腰を捩って抵抗を示すが、その肉棒は滾ったままだった。
「うぅう゛……っ」
スライムの侵入が止まる。入りきらなかった一部は亀頭に小さな山をつくっていた。覗きこめば、半透明のそれが尿道を埋めていること、そしてぐちぐちとなかの粘膜を甚振っているのがわかった。
「ひぐっ……うっ、う、あっ……♡ いっ、いく、だめだっ、イッ、い゛……ッ♡♡」
後孔を犯す肉棒は留め置いているというのに、レオネルは尿道の刺激だけで極めた。ペニスを包む肉壁が激しく収縮し、ディエゴに甘い快感をもたらした。
「ふっ……あ、……っあぁああ゛っ!!!」
腰の動きを再開させる。張りつめた肉棒でピストンを繰り返し、敏感な肉壁を擦りあげる。腹側のしこりを意識して穿つ。
「やっ……まてっ、だめだっ、だめ……っイ゛、っ♡♡ いくっ、いま゛、っア゛……ッッ♡♡!! あぁああ゛あっっ!!!」
レオネルは指が白くなるほど拳を握りしめ、刺激から逃れようと全身であがいた。しかし縄の戒めがそれを許さず、ただただスライムと男根と、その両方から弄ばれるだけの玩具に落としこむ。与えられる快感のまま満足に暴れることも、刺激を散らすこともできず、レオネルの体内に熱が蓄積されていく。その嵩の分だけ過敏になるようで、しなやかな筋肉を纏う肉体が、ほんの一突きで跳ねあがり、快楽に咽び泣く。さぞ楽しかっただろう。このからだを弄ぶのは。元から敏感だったのか。敏感にさせられたのかは知らないが、敵である屈強な男が、自分の肉棒であられもなく鳴き、乱れる姿は。
「っは、……あ゛、っ……」
唐突に、レオネルの身体が糸が切れたように弛緩した。意識が落ちたのだと知り、亀頭を残すまで勃起抜いてから、一気に貫いた。
「─────ッッ!!?」
衝撃に叩き起こされた瞳が、震えながらディエゴの姿を捉えた。
「っ……ディ、エゴ、もう……ッ」
「やめてほしいですか?」
レオネルは頷いた。
「なぜ?」
「くっ……くるしい、あぁ……っ!」
恥部がふれ合うほど、深く挿入したまま腰をグラインドさせる。奥の肉を捏ねられて、辛抱たまらずに腰を引こうとする。しかしベッドのスプリングに阻まれて、ただ惨めに跳ね返るだけだった。
「はう……っう、あぁ゛……っ♡」
「苦しい? それくらいで、泣き言をいう人間でしたか?」
目と目をあわせて問う。視線から逃げようとするのを、ディエゴはレオネルの顎を掴んで咎めた。
「言ってください。どうしてやめてほしいんですか? なにがいやなんですか?」
「っ……イっ、いく、のがっ、ずっとイってるのが、苦しい゛ッ、ア゛、あぁあ゛っ……♡♡」
「だから?」
「だっ……から、っ、あ゛っ、もう抜いてっ、ぬ゛いてくださいっ……!」
レオネルは咆哮めいた懇願を叫んだ。叫んでから、気づく。自分を見下ろす男がだれであったか。
「……あ」
そして、その表情に。
顎から手を放すと、レオネルは、ちがう、と言って、かぶりを振った。ディエゴは浅く笑う。身軽になった手で男のペニスを握る。ぎゅうと優しく圧迫すると、外部からの刺激に狭まったなかでスライムがその蠕動を激しくしているのがわかった。
「───ッひ、やめ、手、はなしっ゛、ああぁあ゛っ♡♡!!?」
肉棒を扱きながら、腰を打ちつける。上下の性感帯を嬲られて苦悶の声を上げる男を無視してそれを続けていると、ぷちゅっとスライムの一部が尿道から飛びでた。もう枯れたかとおもっていたが、精液を押しだそうとしているのかもしれない。スライムはすぐに中に戻り、叱るようにくちゅくちゅと内側の粘膜を執拗に責め立てた。
「ア゛ッッ♡♡ あっ♡ イ゛っ、いぐっ、も、イくっ、ぅううう゛~~~~ッッ♡♡ あっ、あぁあああ゛っっ!! も゛っ、やめ゛、いくっ、いくっ、イッてる゛っっ♡♡ っもう、だ、っ、ッッ~~~~~♡」
不意に、汗ばんだ肌の上で尖った乳首を指で弾くと、それすらも酷く感じるようで、肩をぶるりと震わせた。どこもかしこも、そうなるように調教されている。もうこのからだに、触れられていない場所はないんじゃないかとおもうほどに。
「い゛──っ、く、ぅううん゛っ………♡♡」
絶頂からおりてこられないのか。レオネルの肢体は不随意な痙攣を繰り返していた。全身から汗が噴きだし、時折声も呼吸もなく喉を引き攣らせたまま極めていた。
「うぅ゛……っ♡♡ あっ、あ゛───♡♡ いくっ、またイくっ、そこ、ぉ゛あぁあっ、あ゛ぁああッ♡♡」
仲間のだれも、こんな彼は知らない。きっと想像もしない。わずかに胸を満たす優越感めいた感情が、しかしこの姿が先に暴かれた事実に濁っていく。精悍な顔つきがみだらに蕩け、だらしなく開いた口端から唾液が糸を引いている。これよりも、今よりも。ひどい姿を、敵に晒したのだろうか。もっと淫靡な表情をみせたのか。もっと惨めな懇願を口にしたのだろうか。ジリジリと腰の奥から沸きだす憤りが、余計にペニスを熱くした。欲望のまま腰を振る。レオネルの四肢が強張り、深いオーガズムに陥った。ペニスを包む長い締めつけ。ディエゴの肉棒がどくんと脈打ち、快感が迸った。
「あぁっ……♡ ……あっ、あ、でて、っ、♡」
射精に甘く鳴く。男の精で喜ぶ。恍惚の滲む表情を打ち破るように、スライムがへばりつく亀頭を手のひらで撫でまわすと、新鮮な悲鳴が上がった。その声がまた、ディエゴの欲望を滾らせる。
……あと三日。
仲間と落ち合うまで、このからだは自分のものだ。
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