特待「性」の日常

ミツミチ

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こーら。大きい声ださない

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 黒板を見なければ、とおもいつつ目の前の背中ばかり気になってしまう。
「……ッ」
 ぴく、ぴくと震える背中。
 一つ前の席。腹のなかに異物を仕込まれた絢斗は、居心地わるそうに椅子に腰かけていた。
 T字型の玩具。
 イビツな形ながらもさほどでもない大きさに、絢斗は当初こそ安堵したような様子だったが、後孔の開発に特化したそれは時間が経つにつれて本領を発起する。
 丸みを帯びた頭の部分は内側から前立腺を圧迫し、玩具の底から伸びる蔓は会陰に食いこみ、外側から蓋をするように同じ場所を刺激する。両側から挟みうちにされ、常に逃せられない圧迫を受ける一点からじわりじわりと性感を引きだしていく、とてもオートマティックで便利な道具であったけど、
「……っ、……っ」
 絢斗のケツなんて、もうとっくに開発済みだし。とくにその穿ちやすい場所にある弱点なんてさんざんにいじくりまわされて、性感帯として徹底的に調教されつくしていた。すこし擦るだけで甘い声をあげて、軽く揺すれば簡単にイく。そんなメスイキスイッチと化した場所を的確に圧迫しつづける異物に耐えられないのだろう。
 授業開始から五分もしない内に、不自然なうごきが目立つようになっていた。
「ふ、……っ……」
 まっすぐに伸びていた背は徐々に丸くなり、持ちあがった両肩がピクピクと震えている。上履きを履いた足先をすり合わせながら、どうにしかして玩具の位置をズラそうとしているようだったけれど、ずっぽりとハマりこんだそれがそう簡単にズレるわけもなく、余計に内壁に擦れて苦しんでいる姿から目が離せない。
「……」
 そろりと片脚を上げる。
 爪先を垂直に立てて、前の席の椅子の天板を蹴りあげた。
「ッ──……!?」
 絢斗の肩が跳ねあがる。
 なにが起こったのかわかっていない様子の彼に、続けざまにもう一度、先程よりも強く突き上げるように椅子の底を叩く。
「ふっ、……ッ……!」
 天板を通じてじぃんと玩具の底に響く振動。絢斗は丸めた背を震わせながら衝撃に耐えていた。その様子を眺めながら不規則に天板を爪先で突き上げる。そのリズムに合わせて絢斗の背が震える。トットットッと間をあけず振動を叩きこむと、連動するようにビクビクビクと小刻みに震えているのがおもしろかった。
 そうしてしばらく遊んでいると、不意に絢斗が振りむいた。潤んだ瞳でこちらを睨みつけてくる。
 返事代わりに笑みを返して足を下げる。絢斗は小さく息を吐いて前に向き直る。それと同時に、一際強く天板をガツンと蹴りあげた。
「ッ──……!」
 体勢が崩れて机に腕があたる。その拍子にガタガタッと机が揺れて、無視できない大きな音が立った。
 教室中の視線が絢斗に集まる。
「こら、そこ。騒がしいぞ」
 教師が席に向かってくる。
「す、すみませ……っ」
「さっきから板書もせずに、なにを遊んでるんだ。そんなに授業に集中できないなら席を教卓の前に移動させるか?」
 教師が前方を指差す。絢斗がかぶりを振った。
「だ、大丈夫です。もう大丈夫です」
「そう言いながら今だってごそごそと動いて、なにも大丈夫じゃないだろう。早く立ちなさい」
 教師が絢斗の腕を取って立たせる。
「まっ、まって、待ってください……!」
「先生」
 後ろからひょこりと顔を出し、
「おれが絢斗がうごかないように支えておきますよ」
 自らを指差して提案すると、教師はこちらを一瞥してから「じゃあ辻井に頼むか」と教卓に戻っていった。
「ほら、絢斗。おいで」
「えっ、な、なに……っ」
 戸惑う絢斗を引き寄せて膝の上に座らせる。両膝を割って開脚させて、こちらの両足を跨るような格好にしてから、胴体に腕を回してホールドする。
「な、っ……こ、こんなの……!」
「こーら。動かない。席移動したくないだろ?」
 それとも、教卓の前でみんなに晒されたい?と耳元で問いかけると絢斗は途端に大人しくなった。
「おれの代わりに板書してな」
 そうお願いすれば、シャーペンを握ってちゃんとノートに向き合おうするところに真面目さがにじみ出ていておかしかった。
 密着した肌から伝わる体温。かすかな震えを胸元に感じながら、右手を下ろして太腿に触れる。
「……っ」
 すり、すりと撫でながら、付け根の方へ向かわせていく。腿の根本。柔らかい肉の溝に指を沈めて、
「……っ、ふ……!」
 ぐにぐにと鼠径部を揉みしだく。股間に響く刺激をきらって腰を捩ろうとするのを、腹部に回した腕に力を入れて押し留める。
「は、……っ、……っ」
 ぐちゃぐちゃに汚れた下着は今朝のうちに剥ぎとられていた。熱を孕みはじめた陰茎が直にスラックスを押しあげている。
 その浮き出した先端を、柔く爪で掻く。
「ッ──……!」
 かし、かし、と爪がこすれた先からじんわりとカウパーが溢れだして、生地の色を濃くする。それを塗りひろげるように爪先で先端を弄くりまわしていると、絢斗の腰が不自然に揺れはじめた。たぶん、指先から逃れたいんだろうけど。まるで刺激に焦れてねだるようないやらしい腰つきに股間が熱くなってくる。
 脈打つ熱から手を引き、さらに奥へと伸ばす。衣服越しに、尻穴にはまりこんだ玩具の底に触れた。
「ゃ……っ」
 声をあげかけた彼の耳に、しーっと小さくささやく。強張るからだを抱きしめながら、揃えた指先をじっと底に当てていると、それが腸壁の蠕動に合わせてにゅくにゅくと緩やかに出入りしているのがわかった。
「ふ……っ、……っ♡」
 肉縁が窄まってエネマグラが中に引きこまれるたび、丸く膨らんだ突起部が前立腺を圧しあげて、腕の中のからだが小さく震える。そのタイミングで指先に力をこめて、ぐっと玩具の底を押し上げた。
「──っ!」
 ぐちりと玩具が深く入りこむ。指を引けばまたすぐに押し出されてくるそれを、間髪入れずさっきよりも深く押しこんだ。
「ッ~~~~!」
 腸壁の蠕動運動とは異なる外部からの不規則な刺激。玩具越しに性感帯を容赦なく圧迫する人の指の力に、絢斗のあたまががくんと前に倒れた。
「ん……ッ、ふ、っ、ぅ゛っ……♡」
「なあ、ペン、止まってる」
 小声で指摘すれば、またノートと向き合おうとするが、ぐりぐりと押しこんだまま玩具の底を揺さぶると、ペン先はすぐに震えて止まる。
「ッぁ……、も……っ♡」
「あやと、ちゃんと前見て。手うごかして」
「ゃ……っ、ぁ゛……ッ~~~♡」
 急かすように短いスパンでぐっぐっと押しあげる。絢斗は必死に頭を上げてペンを握りなおそうとするも、与えられる快感に感じ入るのにいっぱいっぱいですぐに崩れおちてしまう。
「ぁ゛っ、っ、っ、っ……♡」
 身じろぎが増えて、腹筋がひくひくと震えだす。漏れだす声が、吐息が、せっぱつまったものに変わっていく。
「だ……め、……っ」
 小さく声を振り絞る。
「ほ、ほんと、に……っ、も、やめ、つじ、ぃ……たのむ、から、っ……♡」
 直前に迫った限界に怯えた様子で、絢斗は首を振って訴えた。絢斗のからだを抱え直す。そうしてから、指先にぎゅううと強く力をこめた。
「ン゛ッ、……♡!!? ッッ────♡♡」
 声にならない声があがる。溜めこんだ快感が弾ける衝撃に戦慄く身体をきつく抱きしめる。
「……ぅ゛……っ、く、ぅ゛んっ、ン゛……!」
 強い圧に押し上げられた突起部が敏感な肉を手加減なく押し潰す。必死に異物を押し出そうとする腸壁の抵抗を組み伏せるように、底部を押しこみつづける。
「ッ゛……っ~~~~~♡♡」
 それ以上は動かさなくとも、肉壁はきゅうきゅうと玩具を食い締めて勝手に絶頂の快楽に追い討ちをかける。
「ひっ、ッ、ゃ、やぁ゛……っ♡」
「あやと。こーえ」
「ん゛ぅ、ぅ、う゛ッ……♡」
 玩具を揺さぶる指を止めずにいると、その手を絢斗に掴まれた。
「も……っ、ゃ、やめ……っ♡」
 とはいっても、震える手にはろくに力は入ってなくて。涙ぐんだ絢斗の懇願ににこりとほほ笑み返してから、エネマグラの前側の蔦に触れた。くるりと丸まる細い脚。会陰に宛てがわれたそれをつまんで前方にぐぅっと傾ける。
「……ッッ──~~~♡♡」
 カラン、と机にシャーペンが落ちた。
「ん゛っ……ッ、ぐぅ゛……♡!」
 くんくんと会陰に蔦を食いこませる。絶頂により感度の極まった前立腺を前後から挟み打ちにして責め立てる。
「……ッ、ふぅ、ッ゛、ッ~~~♡」
 もはや姿勢なんて保っていられないようで。前屈みになった絢斗は完全に机に突っ伏した。
「ぁん゛、んッ、あ゛、だっ、だめ……っ♡」
「こーら。大きい声ださない」
「っぁ…、……ぃ゛、ッ、ん、ん゛っ、むり、ぃッ♡」
「絢斗。なあ、みんな見てる」
 絢斗が息を詰める。
 そのときになって、ここがどこで、今が何の時間か思いだしたのか。掴んでいた手を離して自分の口元を両手で覆う。
「……っ、ふ、ぅ゛……ッ♡」
 よし。これで動きやすくなった。
 あらためて玩具の蔦を指先に挟みなおし、じっくりと会陰に押しこんでいく。
「ん゛ぎゅ、ッ、ッ……♡♡」
 浮いた足先がびくびくと跳ねる。前に這いずって逃げようとするのを胴体に回した腕で引き戻す。
「んん゛っ、っ~~ふ、ふ……ぅ゛ッ♡♡」
 押しこんだままにちゅにちゅと左右に揺さぶったり、ぶるぶると小刻みに震わせたり、絢斗が状況に縛られてろくな抵抗もできないことをいいことに、すき勝手弄くり回す。
「っ、ふっ、っ、んぅ゛ぅっ……♡」
 本人はこれでも堪えているつもりだろうけど。くぐもった嬌声に周囲のクラスメイトは釘付けだった。その上に絶頂を重ねる度にだんだんとからだの反応は取り繕えなくなっているようで、押し殺しきれない痙攣で机を揺らしたり、跳ね上がった膝で天板を叩いたり、あからさまにさっき指摘されたときよりも大きな音が立っていたが、それに対しては指摘も怒号もなかった。だれも咎めない。言い換えると、だれもこの行為を止めたりしなかった。
 この一週間は、みんなケモノのようで。出したらすぐに交代だったから。こうしてじっくりと絢斗に触れられる機会は貴重だった。
 ちらりと時計を見る。まだあと半分は残っている。
「んっ、ッ……っく、ぅ゛……ぅう゛~~~っ♡」
 授業がもっとながければいいおもったのなんて、小学生ぶりだった。

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