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龍坊ちゃんを説得してください
しおりを挟む「心配ないですよ」
「まゆは心配なくても、あいつは絶対にまゆに惚れる」
「それは買い被りすぎです」
「まゆはすごく魅力的なんだ、誰の目にも触れさせたくない」
祐志さんは私にキスをした。
「ああ、まゆ、俺はお前のためならなんでも出来る」
「祐志さん、お仕事行く時間ですよ」
「あ~あっ、くそっ、まゆ、俺が帰ってくる前から、裸でベッドにいろ、
すぐにお前を抱きたい」
「もう、祐志さんったら」
「一人で外に出るな、いいか」
「はい」
祐志さんは病院へ出かけた。
しばらくすると、インターホンが鳴った。
「田淵です」
「はい、今開けますね」
田淵さんは私と祐志さんのことを話した。
「堅気のお嬢さんがどうやって、龍坊ちゃんと巡り合ったのですか」
「知り合った時、すでに服部祐志として人生を歩んでいたんです」
「そうだったんですか」
「どうしても外科医になりたくて、服部祐志の人生を歩いてきたって言ってました」
田淵さんは昔を思い出すように表情が変わった。
「龍坊ちゃんは小さい時から、外科医になりたいって言ってました、どうして極道のうちに生まれたんだよって、嘆いていたんです」
「あのう、このまま、そっとしておいて頂くわけにはいきませんか」
「佐伯龍は、極道の中の極道です、このまま堅気の世界に置いておくことは出来ません」
佐伯組を潰すことは出来ないと田淵さんは頭を下げた。
「今、佐伯組は自分が若頭として、まとめていますが、実は若頭の地位を狙っている日向勝と言う若い組員がおりまして、中々の強者です、目に余る動きが多くて、自分の言うことを
聞こうとしません」
「そうなんですか、大変ですね」
「お願いします、龍坊ちゃんに組長になってもらい、組をまとめて頂きたいんです」
祐志さんはやっぱり極道の世界の人なんだ。
私は確かに佐伯龍に惹かれている、でもそれは性格や経験したことがない愛撫や抱擁。
佐伯組組長になるなんて、想像したこともなかった。
「佐伯龍に戻って」
私は思わず言ってしまった。
でも、ヤクザの組長になってって意味じゃない。
龍は堅気の世界で外科医服部祐志として生きて行く人じゃないんだ。
と言うことは、私は姐さん?えっ、無理でしょ。
「姐さんから龍坊ちゃんを説得してください」
田淵さんはマンションを後にした。
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