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第十八章 まゆの偽りの気持ち

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「まゆ、まゆ」

俺は言葉とは裏腹にまゆを抱きしめた。

たとえ、まゆの中に俺がいなくとも、俺を求めてくれるなら、それが偽りであっても、

俺はまゆを手放すことが出来ない。




「まゆ?大丈夫か」

まゆは顔をしかめ、苦しそうな表情になった。

「祐志さん、お腹が、お腹が痛い」

「まゆ、今救急車呼ぶからな」

まゆは救急搬送された。

お腹の子供は生まれてくることはなかった。

病室でまゆの手を握り、俺はまゆが目覚めるのを待った。

白々と夜が明けて、俺は眠ってしまっていた。

「祐志さん、祐志さん」

俺はまゆが呼んでいる声で目が覚めた。

「まゆ、目が覚めたか」

「赤ちゃんは大丈夫でしたか」

俺は何も答えることが出来なかった。

「祐志さん、赤ちゃんは大丈夫でしたよね」

「ごめん、俺の責任だ」

「祐志さん、私を驚かそうとして、嘘言ってますよね」

「俺とまゆの子供は天国へ行った、この世に生まれてくることはない」

「嘘、だって、この間元気に蹴ってたんですよ」




「俺がまゆに気持ちをぶつけて、まゆに心労をかけたせいだ」

「祐志さん、嘘って言って、祐志さん、いや、なんで、なんで助けてくれなかったんですか」

まゆは取り乱して大声で泣いた。

俺はまゆをギュッと抱きしめた。

まゆはずっと泣いていた。

俺はずっとまゆを抱きしめていた。

この時、俺は何があっても、まゆを守っていくと、側に寄り添っていくと決めた。

たとえ、俺がまゆの中に存在しなくても……

「祐志さん」

「なんだ」

「一人にしてください、祐志さんはお仕事があるんですから」

「お前の側にいたい、ダメか?」

「分かりません、赤ちゃんがいなくなって、もう一緒にいる理由がないですよね、
祐志さんは自由になれます、だから……」

「一緒にいる理由はある」

まゆは顔を上げて俺を見つめた。

「俺達は夫婦だ、共に生きていくんだ、俺はさっきまゆと別れると言ったが、
まゆが俺を愛していなくても、俺はお前と一緒にいると決めた」

「私は祐志さんを愛しています、祐志さんは服部祐志として生きていく人生を選びました、だから、祐志さんと夫婦になって授かった子供を育てて、祐志さんに堅気の当たり前の人生を共に生きていきたいって思いました、でも今は祐志さんに子供を育てる生活を私じゃ叶えてあげることが出来ません」

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