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まゆ、俺は……

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私はホテルに入って行った祐志さんと濃厚なキスをしていた女性のことが頭から離れなかった。

お腹が目立ってきたから、我慢しようと言ってくれた祐志さんだったけど、

やっぱりあんな濃厚なキスされて、我慢出来なくなっちゃったのかな。

それとも、そういう女性がいたの?

佐伯龍の時は、毎日、色々な女性と身体を重ねることが当たり前だったんだろう。

その時の人?

私は今は服部祐志の妻だけど、以前は工藤飛鳥と最後までは行かなくても、身体を重ねた。

祐志さんに文句言える立場じゃないよね。

やっぱり、嫌だったのかな?

許せなかったのかな。




それはそうだよね。

知らないふりしてる方がいいのかな。

そんなことを考えていたら、祐志さんが帰ってきた。

「ただいま」

「おかえりなさい」

私はまっすぐ祐志さんを直視出来ずにいた。

なんか、私が悪いことしてるみたいな雰囲気になった。

「食事召し上がりますか」

祐志さんに背中を向けていた私をギュッと抱きしめた。

「祐志さん、どうされたのですか」

祐志さんは黙ったまま、私を抱きしめていた。

「まゆ、ごめん」

「えっ」

私は驚きを隠せずにいた。

真実を私に打ち明けるつもりなの?

どうしよう、別れたいなんて言われたら……

どうしよう、許しては欲しいって言われたら……

どうしよう、彼女を愛してるって言われたら……




いろんなことが頭をぐるぐる回りはじめた。

祐志さんは私を自分の方に向かせた。

そして、じっと見つめられた。

祐志さんの言葉を聞く勇気がない。

「まゆ、実は……」

「食事しましょう、その前にシャワー浴びてきてください」

「まゆ、話があるんだ」

「後で聞きますから……」

私は涙が溢れてきた。

祐志さんに悟られないように背中を向けた。

でも小刻みに私の身体は震えていた。

俺は黙っていることが出来ずに、まゆに全て話そうと思っていた。

まゆは小刻みに身体を震わせて、これから俺が話そうとしていることを、わかっているかのように感じた。

まさか見られたのか。

とりあえず、シャワーを浴びて、食事をすることにした。

「シャワーを浴びてくる」

服部祐志になってから、俺はなるべく人との関わりを避けて生きてきた。




もちろん、付き合った女もいなかったし、病院のスタッフや患者など、

俺を印象づけることは避けてきた。

まゆは俺の正体を知っている。

しかも、絶対失いたくない女だ。

あやかのことは、俺の大失態だ。

キッパリ違うと言って、関わらなければよかったのに、俺としたことがホテルに連れ込むなどあり得ない行動をとってしまった。

しかも、あやかにいいように扱われ、反応してしまった。

いくら中に出さずとも、あやかの中に入れたのは否定出来ない事実だ。

見事になんの言い訳も出来ない。


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