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まゆに対する想い

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「それに、まゆさんのお腹には服部さんの子供がいるんすっよね」

私は頷いた。

「服部さんはまゆさんを愛しているから、避妊しなかったわけだし、
家族を作りたいって思ったんだと思いまっす」

「家族?」

「はい、後、服部さんは今は堅気ですけど、根っからの極道らしいんで、
自分の素性を知っているまゆさんには素が出ちゃうんっすよ、怒鳴ると
怖いっすよね」

「はい」

「でもそれは工藤の若頭も一緒じゃなかったっすか」

「工藤さんはいつでも極道でしたけど、祐志さんはギャップありすぎです」

「そうっすか」

「でも、人間って勝手ですよね、祐志さんのちょっと強引なところに惹かれたのに、
極道の顔がちょっと見え隠れしただけで、怖いって思ってしまって、祐志さんは
もっと優しかったのになんて思ってしまって、私はわがままですね」

そこに、工藤組長が姿を現した。

「まゆ、しばらくここにいなさい、服部くんには言っておいたからな」

「私、帰ります」

「どうしてだ」

「だって、祐志さんに会いたいから」

「まゆ、服部くんには一人で考える時間が必要だ、彼は今、まゆに甘えて、
佐伯龍が表に出ようとしている、でもそれではダメなんだ、堅気として、
まゆと子供を守っていく服部祐志でなくてはダメだ、そのためには、
まゆの大切さを確認する時間が必要なんだよ」



その頃、俺はまゆのいない空間に違和感を感じていた。

服部祐志として生きていく決意を固めた時、俺は自分の夢である、

外科医を続けたかった、そのためには極道佐伯龍ではダメだと気づかされた。

それから俺は服部祐志を演じてきた。

誰とも関わらなければ、感情は表に出ない。

ひっそりと、服部祐志として生きていこうと……

ところが、許嫁の存在を聞いて、そのあと、まゆと出会い、まさかの同一人物だったなんて驚いた。

しかも、まゆを助けた夜、まゆを抱いた。

俺の中の佐伯龍の独占欲がメラメラと燃え上がった。

そして、工藤の出現だ。

同じ、極道にまゆを持っていかれた嫉妬は、誰にもわからないだろう。

俺は服部祐志ではなく、佐伯龍だった。

嫉妬と独占欲、そして勝負に負けた悔しさ。

平常心では日々の生活は送ることが出来なかった。

絶対にまゆは俺が守る、そして奪え返してみせると闘争心に火がついた。

工藤を亡くした、まゆの気持ちに優しく出来ない、自分に向いてくれないと思って

許せない気持ちをコントロール出来ない歯痒さ。



力づくで俺の側に縛り付けようと、避妊しなかった。

それなのに、まゆは俺を好きだと言ってくれた。

ありえない現状に戸惑っている。

俺はどうすればいいのか。

工藤組長の言葉が脳裏をよぎる。

「服部祐志として生きる覚悟が出来たら、まゆと子供を守っていく覚悟が出来たら、
迎えに来い、それまでは一人でじっくり考えることだな」

俺は頭を抱えて俯いた。

まゆの泣いている顔がフラッシュバックする。

俺は……

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