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些細な幸せ

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俺は仕事が終わると、まゆの待つマンションへ急いで帰宅する。

まゆはいつも寝ている。

きっと工藤の夢を見ているのだろう。

唯一、まゆが今の状態を保っていられるのは、夢で工藤に会えるからかもしれない。

俺はまゆの寝室を覗いた。

まゆが俺のマンションに住むようになってから、ずっと寝室を別にしている。

ところが、まゆは寝室にいない。

トイレ、バスルームなど、覗いたがまゆは、どこにもいなかった。

俺はまゆを探しに外に出た。

「まゆ、まゆ、どこにいるんだ」

俺は必死にまゆを探した。

マンションの裏に公園がある。

まゆは公園のベンチに座っていた。

「まゆ、何をしているんだ」



俺は声をかけた。

まゆはゆっくり振り向き、俺をじっと見つめた。

「祐志さん」

俺は心臓が止まるかと思うほど驚いた。

まゆが俺を見て、工藤さんではなく、祐志さんと呼んでくれた。

「ただいま、何していたんだ」

「風にあたっていました、もうお食事ですか」

「あっ、ごめん、まだ作ってない、帰ってきたらまゆの姿が見当たらなかったから、びっくりして探し回っていたんだ」

「そうでしたか、じゃあ、お手伝いしますね」

「ああ、頼む」

まゆは俺と部屋に戻った。

それから、二人で食事の支度を始めた。

こんな些細な幸せに感謝しながら、ずっと続きますようにと祈った。

こんな毎日を過ごしながら、工藤のことを忘れてくれたら、あとは何も望まないと思った。

まゆの笑顔を守ることが出来れば、それが俺の幸せだ。


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