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第十ニ章 拉致された由梨

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「由梨、健吾だ、大丈夫か、怪我はしてないか、何もさせていないか」

「健吾さん、早く迎えにきてください」

「ああ、すぐ行く、もう少し待ってろ」

由梨は一真にスマホを返した。

「もしもし」

「今から向かう、由梨に手を出したらただじゃおかねえ」

「おい、一つ聞いてもいいか?」

健吾は何を聞かれるのか不思議だった。

「俺が調べさせてもらったところ、西園寺組の姐さんのはずなんだが、
自分は姐さんじゃないって言い張るんだ、どうなってるんだ」

「話せば長くなる、由梨と俺は確かに夫婦だ、とにかくすぐに迎えに行く」

健吾はスマホを切った。

そして、渡辺に頭を下げた。

「俺を由梨のところに行かせてくれ」

「若頭、それが何を意味するのかおわかりですか」

「わかってる、でも、由梨を見捨てるわけにはいかない」

「自分達も姐さんを見捨てるとは言ってないです、自分が迎えに行きます」

「頼む、俺を連れて行ってくれ」

健吾は深々と頭を下げた。
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