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第十一章 由梨の記憶が消えた

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健吾は観念した。

今度こそ死を覚悟したのだ。

しばらくして意識が回復して、全く手も足も動かない現状に頭が真っ白になった。

しかし、その時由梨の声が聞こえてきた。

「健吾さん、早く帰ってきてね」

(そうだ、由梨が待ってる、俺の妻の由梨が、こんなところでくたばってたまるかよ)

しばらくは全く動けなかった。

喉が渇き、その時水が流れる音がした。

(水の音、川だ)

健吾は必死に身体を動かして、川のそばに近づいた。

決して動ける状態ではない、車ごと崖から落下して、強く身体が打ちつけられた状態だったのだ。

全身骨折していた。

奇跡としか言いようがなかった。

一晩その場に放置され、水が命を救った。

あのままなら、命の炎は消えていたかもしれない。

しかも、またしても由梨が健吾を見つけてくれた。

誰もが移動したなど思いもよらなかった。

(由梨、俺はいつもお前に助けられている、今度は俺がお前を助ける番だな)
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