俺にお前の心をくれ〜若頭はこの純愛を諦められない

第十章 健吾の危機

⑤

「昨日から若頭の行方がわからなくなった」

「ほお、それは心配だな」

「知ってるなら教えてくれ」

渡辺は土下座をした。

「うちの若いもんが事故を起こしてな、前方不注意で、前を走っていた車は、急カーブを曲がりきれずに谷底へ落ちたそうだ」

渡辺は愕然とした。

「もしかして、オタクの若頭さんだったのかな、フフフ」

山本組組長は不敵な笑みを浮かべた。

「こんなところで油を売ってないで早く探さないと手遅れになるんじゃないか、まっ、
もう遅いかもしれんがな」

渡辺は西園寺組に急いで戻った。

「兄貴、どうでしたか、やっぱり拉致されてるんでしょうか」

「いや、若頭は山本組の若いやつに体当たりされて、急カーブを曲がりきれず、谷底へ落ちたらしい」

「そんな……」

「もう一度探すぞ、皆に伝えろ」

「へい」

そこへ由梨がやってきた。

「由梨さん、いえ姐さん、若頭は急カーブを曲がりきれず谷底へ落ちたらしいんです」