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第二十五章 記憶がない蓮

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「美蓮、ママは今日も来ないのか」

蓮は徐々に美希に対する会いたいと言う気持ちが強くなっていった。

記憶はまだない。

それなのに、美希に魅力を感じていた。

蓮は消灯前に美希に電話をした。

美希は美蓮を寝かしつけて一緒に眠っていた。

留守電に切り替わったので、蓮は一言メッセージを残した。

「美希、会いたい」

蓮はスマホを切って眠りについた。

美希は朝スマホが光っていることに気づかず、バタバタと蓮也を、

幼稚園に連れて行き、美蓮と共に買い物に出かけた。

蓮は病院を抜け出した。

外に出ると、どこに行ったらいいのか、ここはどこなのか全くわからない。

しばらく歩いていると、病院へ戻る道もわからなくなった。

その頃、やっと美希は蓮からの留守電に気がついた。



美希は急いで病院に向かった。

病院では蓮の行方がわからないと大騒ぎで、東條も病院から連絡をもらい、

駆けつけていた。

「東條さん、蓮さんが行方がわからないと聞きましたが……」

「病室を抜け出したようなんです」

「なんで、記憶が戻ったんですか」

「いいえ、多分奥様に会いに行かれたんだと思います」

「私にですか」

美希は驚きの表情を見せた。

まさか、記憶が戻らないのに、私に会うために病室を抜け出すなんて。

「あのう、社長から着信はなかったでしょうか」

「えっ」

「実は二、三日奥様が病院に来られない時、仕切りに奥様のことを気にされていたんです」

美希は着信があったことだけ確認して、慌てて病院に駆け付けたのだった。

今一度確認すると、何十回も着信があって、留守電も入っていた。



「美希、会いたい」

「蓮さん」

「社長は記憶が戻らなくとも、無意識に奥様を求めていたんですね」

「でも、マンションとかわからなくて、蓮さんは今どこにいるんでしょうか」

東條は蓮のスマホを確認すると、病室に残ったままだった。

「慌てて、出て行かれたのでしょう」

蓮さん、ごめんなさい、私がもっと早く気づいていれば、こんなことにはならなかったのに……

美希はまた涙が頬を伝わった。

美蓮は美希の頬を撫でてあげるような仕草を見せた。

「美蓮様が泣かないでっておっしゃってますよ」

「美蓮、ありがとう、ママ泣き虫じゃだめね」

その頃、蓮は当てもなくふらふら歩いていた。

その時「パパ」と蓮を呼ぶ声に気づいた。

蓮也だった。


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