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第十五章 妊娠
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俺は安定期に入るまで公表は避けようと思ったが、これからのことを考えると、東條と商店街の人達にはお世話になる事があるだろうと考え、報告することに決めた。
「東條、済まなかった」
「大丈夫です、珍しいですね、社長が午後から出社とは何かあったのですか」
「美希が妊娠した」
東條はビックリした表情で俺を覗き込んだ。
「本当ですか、おめでとうございます、早速記者会見を開きますか」
「いや、安定期に入るまで、この事は伏せておく、商店街の人達だけにはお世話になることもあるだろうから、報告しようと思ってる、もちろんお前にもな、これからも美希をよろしく頼む」
東條は感動したのか、涙を潤ませていた。
「かしこまりました」
俺は仕事が終わると、まず美希に連絡した。
「大丈夫か、仕事終わったからこれから商店街に報告に行ってくる、夕飯はなんでもいいよな」
「お疲れ様です、大丈夫です、よろしくお願いします」
俺は車で、商店街に向かった。
「おお、社長さん、こんな時間に珍しいなあ」
八百屋のご主人が挨拶してくれた。
「今日は報告がありまして、美希が妊娠したんです」
八百屋のご主人は目を見開いて驚いた表情を見せたが、すぐに満面の笑みに変わり「おめでとう」と言ってくれた。
「ありがとうございます、それで報告を兼ねて、夕飯のおかずを買いに来ました」
「そうかい、ちょっと待ってな」
八百屋のご主人は隣、またその隣と商店街を回り、美希の妊娠の報告と夕飯のおかずを調達してくれた。
「これを持っていきな、みんな喜んでるよ、改めて、美希ちゃんと来てくれ、ちょっとレンジで温めるといいよ」
「ありがとうございます、おいくらですか」
「いいから持っていきな、しばらくするとつわりが始まるから、食事の支度が出来ないだろうから、いつでもおかずを持っていくといいよ」
みんななんて心優しい人達ばかりなんだ、美希の言う通りだなと心が暖かくなる感じがした。
俺は美希の待つマンションへ急いだ。
「美希、ただいま、美希、美希」
美希は寝室で横になっていた。
「蓮さん、おかえりなさい」
「大丈夫か」
美希はちょっと顔色が良くないと感じた。
「東條に報告したら、ビックリしてたよ、でも喜んでくれてる、それから商店街の人達もおめでとうって言ってくれてたよ、つわりが落ち着いたら挨拶に行こうな」
「はい」
「おかず、代金いいからと貰ってきたよ、食べられそうか」
美希は身体を起こし、キッチンに移動してテーブルに腰を下ろした。
「少しだけ頂きます」
美希は既につわりが始まり、症状は重い感じだった。
美希に笑顔が無い。
俺はなるべく仕事を早く切り上げ、マンションへ急いだ。
休みの日、今日は気分がいいとの事で、商店街に行ってみることにした。
「美希ちゃん、おめでとう、つわりはどうだい」
商店街の八百屋のご主人が声をかけてくれた。
「ありがとうございます、ちょっとだけ大変です、でもいつも蓮さんが一緒にいてくれるので、嬉しいです」
「そうかい、それはよかった」
「今日はこれを持っていきな、お酢が効いてると食欲も湧くかもしれないからな」
「ありがとうございます」
そのうち、商店街の人達がみんな集まって来た。
「美希ちゃん、おめでとう、元気な赤ちゃん産むんだよ」
「皆さんありがとうございます、頑張ります」
「美希、そろそろ帰ろうか」
「はい」
二人で商店街を後にした。
それから程なくして、つわりも収まってきた。
安定期に入った為、鏑木美希さんご懐妊のニュースが流れた。
俺は方々からおめでとうとメッセージや電話を貰い、対応に追われた。
そんな矢先、鏑木建設会社の取り引き先のご令嬢が会社にやって来た。
昔から父親通しが付き合いがあり、ゆくゆくは二人を結婚させたいと話していたとの事だった。
俺の父親も相手方の父親も他界して、そんな話は立ち消えになっていたと思われた。
俺も結婚して美希の妊娠も公表したので、まさか恋人に振られたご令嬢が今更、当時の話を持ち出してくるなんて想像もつかない事だった。
「東條、済まなかった」
「大丈夫です、珍しいですね、社長が午後から出社とは何かあったのですか」
「美希が妊娠した」
東條はビックリした表情で俺を覗き込んだ。
「本当ですか、おめでとうございます、早速記者会見を開きますか」
「いや、安定期に入るまで、この事は伏せておく、商店街の人達だけにはお世話になることもあるだろうから、報告しようと思ってる、もちろんお前にもな、これからも美希をよろしく頼む」
東條は感動したのか、涙を潤ませていた。
「かしこまりました」
俺は仕事が終わると、まず美希に連絡した。
「大丈夫か、仕事終わったからこれから商店街に報告に行ってくる、夕飯はなんでもいいよな」
「お疲れ様です、大丈夫です、よろしくお願いします」
俺は車で、商店街に向かった。
「おお、社長さん、こんな時間に珍しいなあ」
八百屋のご主人が挨拶してくれた。
「今日は報告がありまして、美希が妊娠したんです」
八百屋のご主人は目を見開いて驚いた表情を見せたが、すぐに満面の笑みに変わり「おめでとう」と言ってくれた。
「ありがとうございます、それで報告を兼ねて、夕飯のおかずを買いに来ました」
「そうかい、ちょっと待ってな」
八百屋のご主人は隣、またその隣と商店街を回り、美希の妊娠の報告と夕飯のおかずを調達してくれた。
「これを持っていきな、みんな喜んでるよ、改めて、美希ちゃんと来てくれ、ちょっとレンジで温めるといいよ」
「ありがとうございます、おいくらですか」
「いいから持っていきな、しばらくするとつわりが始まるから、食事の支度が出来ないだろうから、いつでもおかずを持っていくといいよ」
みんななんて心優しい人達ばかりなんだ、美希の言う通りだなと心が暖かくなる感じがした。
俺は美希の待つマンションへ急いだ。
「美希、ただいま、美希、美希」
美希は寝室で横になっていた。
「蓮さん、おかえりなさい」
「大丈夫か」
美希はちょっと顔色が良くないと感じた。
「東條に報告したら、ビックリしてたよ、でも喜んでくれてる、それから商店街の人達もおめでとうって言ってくれてたよ、つわりが落ち着いたら挨拶に行こうな」
「はい」
「おかず、代金いいからと貰ってきたよ、食べられそうか」
美希は身体を起こし、キッチンに移動してテーブルに腰を下ろした。
「少しだけ頂きます」
美希は既につわりが始まり、症状は重い感じだった。
美希に笑顔が無い。
俺はなるべく仕事を早く切り上げ、マンションへ急いだ。
休みの日、今日は気分がいいとの事で、商店街に行ってみることにした。
「美希ちゃん、おめでとう、つわりはどうだい」
商店街の八百屋のご主人が声をかけてくれた。
「ありがとうございます、ちょっとだけ大変です、でもいつも蓮さんが一緒にいてくれるので、嬉しいです」
「そうかい、それはよかった」
「今日はこれを持っていきな、お酢が効いてると食欲も湧くかもしれないからな」
「ありがとうございます」
そのうち、商店街の人達がみんな集まって来た。
「美希ちゃん、おめでとう、元気な赤ちゃん産むんだよ」
「皆さんありがとうございます、頑張ります」
「美希、そろそろ帰ろうか」
「はい」
二人で商店街を後にした。
それから程なくして、つわりも収まってきた。
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俺は方々からおめでとうとメッセージや電話を貰い、対応に追われた。
そんな矢先、鏑木建設会社の取り引き先のご令嬢が会社にやって来た。
昔から父親通しが付き合いがあり、ゆくゆくは二人を結婚させたいと話していたとの事だった。
俺の父親も相手方の父親も他界して、そんな話は立ち消えになっていたと思われた。
俺も結婚して美希の妊娠も公表したので、まさか恋人に振られたご令嬢が今更、当時の話を持ち出してくるなんて想像もつかない事だった。
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