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第十章 蓮さん助けて

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元彼の事件から二ヶ月が過ぎようとしていた。
買い物は相変わらず、彼が休みに一緒に行ってくれる。
でも、彼のお父様の病院は昼間、私が以前のように顔を出すことにした。

病院の帰り道、急に手を引き寄せられて、抱きしめられた。
えっと思った瞬間、私の唇が塞がれ、身体に触れてきた男性は、元彼だった。

「イヤ」

抵抗するも押さえつけられ、元彼の荒い息が首筋にかかる。

「あんな若い男捕まえて、毎日お楽しみか」

「離して、今更何?」

「美希と別れて分かったんだ、こんなにいい女はいないって」

「私とは身体の相性悪いんでしょ、満足出来ないんでしょ?」

「だからあん時は若かったから気づけなかった」

元彼に押さえつけられながら、抵抗出来ない自分が惨めで、涙が溢れてきた。
そんな私を見て、元彼は急に手を離し「ごめん」と言ってその場を去った。

嫌だ、どうしよう、手が小刻みに震えて息が苦しい、蓮さん助けて、どうしたらいいの。
辺りはすっかり暗くなり、どこをどう歩いたか覚えていない、自分がどこにいるのかわからなくなった、その時スマホが鳴った。

「美希、今どこだ」

「蓮さん、ごめんなさい」

私はスマホの電源を落とした。

「美希、美希」

俺は美希に何か重大なことが起きたと察知した。

すぐに元彼の存在が脳裏を掠めた。

美希、まさかあいつに酷い目にあったのか。

今日は確か昼間親父の病院へ行ったはずだ、また待ち伏せされたのか。

俺は考えが甘かった、昼間なら一人で出歩いても大丈夫だろうと鷹を括っていた。

俺はすぐに親父の病院へ向かった。

「親父、美希は来たか」

「どうした、慌てて、美希ちゃんは大分前に帰ったぞ」

「そうか、帰りが遅いから、スマホに連絡入れたら、ごめんなさいと切られた」

「何があったんだ、美希ちゃんの元彼に関係することか」

「多分、はっきりしたことはわからない」

俺の尋常じゃない態度に、親父は大変な状態だと察しがついたようだ。

「美希ちゃんが帰ってきたら、黙って抱きしめてやれ」

「ああ、そうするよ、もしここに美希が戻って来たら連絡くれ」

「そうしよう、心配するな、蓮、美希ちゃんはお前を裏切ったりしないよ」

俺も美希を信じてはいるが、美希は俺に対して申し訳ないと思う女だ。

俺が許せることも美希は自分自身を許せないと思う女だ。

俺の元を去ろうとしているのか。

俺は美希を失いたくない、今は命の恩人で片付けられる関係ではない。

俺は美希に惚れている、誰にも渡したくない。

美希、なぜ一人で行動するんだ、何故だ、何故俺を信じてくれないんだ。




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