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第九章 幸せの影に潜む罠

「俺の大事な妻に触れるんじゃねえ、それに誰が行方不明だって?」

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次の日産婦人科の検診に出かける為、マンションを出た時、週刊誌の記者が姿を表した。

「奥様、お久しぶりです、唯香が緊急入院したとのスクープがありまして、何かご存知かと思いまして」

「知りません」

「冴木社長はご在宅ですか?」

「仕事に行ってます」

「おかしいですね、会社には出社されていませんよ、冴木社長は現在行方が不明なんですがね」

私は動揺を隠すのに必死だった。

「何かご存知ですよね、教えてくださいよ」

記者は私の腕を掴み、詰め寄った。

その瞬間私の腕を掴み反対側に引っ張られた。

「俺の大事な妻に触れるんじゃねえ、それに誰が行方不明だって?」

「冴木社長!何処に隠れてたんですか?」

「隠れてなんかいねえよ、出張だ」

「唯香が緊急入院したのご存知ですよね、冴木社長の子を中絶したって噂は本当ですか」

「そんな事実はない、二度と妻に近づくな」

「わかりましたよ、では、また今度ゆっくりと」

週刊誌の記者はその場を後にした。

「雫、大丈夫か」

「峻」

私は人目を憚らず峻に抱きついた。

峻は驚いた表情を見せたが、峻も私を強く抱きしめてくれた。

峻と見つめ合い、涙が溢れて止まらなかった。

その頬を伝う涙にキスをしてくれた。
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