上 下
21 / 94
第四章 忍び寄る影

「雫、俺を信じろ」

しおりを挟む
私は彼をまともに見る事が出来なかった。

彼は私を抱きしめた。

「ごめんな、嫌な思いさせちまったな」

いつの間にか、秘書の山元さんは部屋を後にしていた。

部屋には彼と私だけになった。

彼は私にキスしようと顔を近づけた。

私は咄嗟に顔を背けた。

「どうかしたか」

「どうもしません、ちょっと疲れちゃって」

「そうか、もう帰ろう」

彼と私はマンションへ戻って来た、部屋に入ると彼は私を抱きしめた。

私の頬に触れて、唇を近づけた。

またしても私は顔を背けた。

次の瞬間、彼は私を廊下の壁に追いやり、私の両手を押さえつけ、強引に唇を重ねた。

舌が絡み合い、息が出来ないくらい、激しさが増して行く。

私は彼の胸を両手で押して距離を置いた。

「俺が嫌いになったのか?」

「違います、彼女いるのになんで私にキスなんかするんですか?」

彼は私の言葉に驚いた表情を見せた。

「彼女?彼女はいないよ」

「だって記者の方が峻はモデルと熱愛中だって・・・」

彼は声高らかに笑った。

「確かに唯香とは付き合っていたが、それも雫と知り合う前のことだよ、それ以来唯香とは会っていない」

私は納得いかない表情を見せた。

「雫、俺を信じろ」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生悪役令嬢の考察。

saito
恋愛
転生悪役令嬢とは何なのかを考える転生悪役令嬢。 ご感想頂けるととても励みになります。

捨てられ令嬢の恋

白雪みなと
恋愛
「お前なんかいらない」と言われてしまった子爵令嬢のルーナ。途方に暮れていたところに、大嫌いな男爵家の嫡男であるグラスが声を掛けてきてーー。

審判

桜坂詠恋
ミステリー
「神よ。何故あなたは私を怪物になさったのか──」 捜査一課の刑事・西島は、5年前、誤認逮捕による悲劇で全てを失った。 罪悪感と孤独に苛まれながらも、ひっそりと刑事として生きる西島。 そんな西島を、更なる闇に引きずり込むかのように、凄惨な連続殺人事件が立ちはだかる。 過去の失敗に囚われながらも立ち向かう西島。 彼を待ち受ける衝撃の真実とは──。 渦巻く絶望と再生、そして狂気のサスペンス! 物語のラストに、あなたはきっと愕然とする──。

あなたが幸せになれるなら婚約破棄を受け入れます

神村結美
恋愛
貴族の子息令嬢が通うエスポワール学園の入学式。 アイリス・コルベール公爵令嬢は、前世の記憶を思い出した。 そして、前世で大好きだった乙女ゲーム『マ・シェリ〜運命の出逢い〜』に登場する悪役令嬢に転生している事に気付く。 エスポワール学園の生徒会長であり、ヴィクトール国第一王子であるジェラルド・アルベール・ヴィクトールはアイリスの婚約者であり、『マ・シェリ』でのメイン攻略対象。 ゲームのシナリオでは、一年後、ジェラルドが卒業する日の夜会にて、婚約破棄を言い渡され、ジェラルドが心惹かれたヒロインであるアンナ・バジュー男爵令嬢を虐めた罪で国外追放されるーーそんな未来は嫌だっ! でも、愛するジェラルド様の幸せのためなら……

アキノワルツ ~親友へ決死の告白をした高校生男子・真島くんのその後~

カノカヤオ
BL
『ナツノヒカリ~親友への片思いをこじらせる高校生男子・真島くんのひと夏の物語~』続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/114322914/596749084 「灰谷、オレ、オマエが好きだ。好きなんだ。どうしようもなく、好きで好きでたまらないんだ」 長年の思いをやっとのことで口にした真島。 今までと変わらないようで、でも少しだけ違う微妙な距離感になった真島と灰谷。 バイト先の後輩・友樹はやたらと真島になついてきて……。 二人の悪友・中田と佐藤にもそれぞれ変化が訪れる……。

寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。 故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。 聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。 日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。 長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。 下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。 用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが… 「私は貴女以外に妻を持つ気はない」 愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。 その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。

【完結】『それ』って愛なのかしら?

月白ヤトヒコ
恋愛
「質問なのですが、お二人の言う『それ』って愛なのかしら?」  わたくしは、目の前で肩を寄せ合って寄り添う二人へと質問をする。 「な、なにを……そ、そんなことあなたに言われる筋合いは無い!」 「きっと彼女は、あなたに愛されなかった理由を聞きたいんですよ。最後ですから、答えてあげましょうよ」 「そ、そうなのか?」 「もちろんです! わたし達は愛し合っているから、こうなったんです!」  と、わたくしの目の前で宣うお花畑バカップル。  わたくしと彼との『婚約の約束』は、一応は政略でした。  わたくしより一つ年下の彼とは政略ではあれども……互いに恋情は持てなくても、穏やかな家庭を築いて行ければいい。そんな風に思っていたことも……あったがなっ!? 「申し訳ないが、あなたとの婚約を破棄したい」 「頼むっ、俺は彼女のことを愛してしまったんだ!」 「これが政略だというのは判っている! けど、俺は彼女という存在を知って、彼女に愛され、あなたとの愛情の無い結婚生活を送ることなんてもう考えられないんだ!」 「それに、彼女のお腹には俺の子がいる。だから、婚約を破棄してほしいんだ。頼む!」 「ご、ごめんなさい! わたしが彼を愛してしまったから!」  なんて茶番を繰り広げる憐れなバカップルに、わたくしは少しばかり現実を見せてあげることにした。 ※バカップル共に、冷や水どころかブリザードな現実を突き付けて、正論でぶん殴るスタイル。 ※一部、若年女性の妊娠出産についてのセンシティブな内容が含まれます。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

処理中です...