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第二十六章 西沢守の告白
思い出す富樫の優しさ
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『冨樫はいつも葉月に寄り添っていた。
今日は病院へ行く日だった。
「葉月、支度を手伝おうか」
「はい、お願いします」
冨樫は葉月に服を着せて、杖を持たせた。
いつもなら、葉月は一人でやるのだが、冨樫が手伝ってくれると言うことには
従うようにした。
葉月は光のない生活にだいぶ慣れてきたが、やはり心細い気持ちは大きかった。
葉月の視力は今のところ、全く無いに等しい。
真っ暗な中で、朝なのか夜なのか、全くわからない。
冨樫だけが頼りだった。
診察が終わり、冨樫に待合室の椅子に座っているように促された。
葉月の手を握ってくれている冨樫の手が離れた。
「冨樫さん?」
「どうした?葉月」
「手を離さないでください」
「ああ、悪い、会計を済ませてくるから、ちょっと待っててくれ」
「わかりました」
葉月は暗闇の中で、一人になるのが怖かった。
でも、わがままは言えない。
そんな気持ちの狭間で揺れ動いていた。
しばらくすると、会計を終えた冨樫が戻ってきた。
「葉月、待たせたな、帰ろうか」
冨樫は葉月をエスコートして、車に向かった。
車ではヤスシが待機していた。
「待たせたな、ヤスシ」
「大丈夫です、姐さん、大丈夫ですか」
葉月はそこに誰がいるのか、声で判断する。
「大丈夫ですよ、ヤスシさん、いつもありがとう」
「いえ、自分は組長と姐さんを守るのが仕事ですから」
そう言って車を走らせた。
マンションに着くと、ヤスシは食事の支度をしてくれた。
火傷したら大変だ、包丁使って指切ったら困るからと
冨樫は葉月を心配しての配慮だった。
「葉月、明日、買い物に行くか」
「行きたいです」』
今日は病院へ行く日だった。
「葉月、支度を手伝おうか」
「はい、お願いします」
冨樫は葉月に服を着せて、杖を持たせた。
いつもなら、葉月は一人でやるのだが、冨樫が手伝ってくれると言うことには
従うようにした。
葉月は光のない生活にだいぶ慣れてきたが、やはり心細い気持ちは大きかった。
葉月の視力は今のところ、全く無いに等しい。
真っ暗な中で、朝なのか夜なのか、全くわからない。
冨樫だけが頼りだった。
診察が終わり、冨樫に待合室の椅子に座っているように促された。
葉月の手を握ってくれている冨樫の手が離れた。
「冨樫さん?」
「どうした?葉月」
「手を離さないでください」
「ああ、悪い、会計を済ませてくるから、ちょっと待っててくれ」
「わかりました」
葉月は暗闇の中で、一人になるのが怖かった。
でも、わがままは言えない。
そんな気持ちの狭間で揺れ動いていた。
しばらくすると、会計を終えた冨樫が戻ってきた。
「葉月、待たせたな、帰ろうか」
冨樫は葉月をエスコートして、車に向かった。
車ではヤスシが待機していた。
「待たせたな、ヤスシ」
「大丈夫です、姐さん、大丈夫ですか」
葉月はそこに誰がいるのか、声で判断する。
「大丈夫ですよ、ヤスシさん、いつもありがとう」
「いえ、自分は組長と姐さんを守るのが仕事ですから」
そう言って車を走らせた。
マンションに着くと、ヤスシは食事の支度をしてくれた。
火傷したら大変だ、包丁使って指切ったら困るからと
冨樫は葉月を心配しての配慮だった。
「葉月、明日、買い物に行くか」
「行きたいです」』
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