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第二十一章 偽りの言葉

西沢の女 葉月

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その頃、ヤスシが冨樫のマンションを訪れた。

「組長、姐さん、食事を作りますね」

「あれ、姐さんは?」

「葉月は出て行った」

ヤスシはすぐに状況が飲み込めず、キョトンとした表情を見せた。

「あのう、どう言うことですか」

「俺と葉月は別れた、俺は白金組の由子と結婚する」

「組のためですか」

冨樫はヤスシの言葉に対して、背中を向けた。

「俺は由子に惚れた、葉月に飽きたんだ」

「嘘ですよね、姐さんを守るためにわざと突き放したんですよね」

「葉月は堅気の生活に戻るのが幸せなんだ」

「本当にそうでしょうか」

「もう、何も言うな」

「組長」

「ヤスシ、頼みがある、葉月の居場所を調べてくれ」

「迎えに行くんですか」

「何言ってるんだ、離婚届にサインもらうんだよ」

「了解しました」

ヤスシはニヤッと笑って答えた。

やっぱり組長は姐さんが心配なんだな。

ヤスシは早速葉月の行方を探し始めた。

その頃、葉月は西沢に押し切られて、西沢のマンションでお世話になっていた。

「葉月、明日は組長の集まりがあるから、食事はいらねえ」

組長の集まり?

と言うことは冨樫さんも来るんだ。

「あのう、私も連れて行ってください」

「それは構わねえけど、白金組と金子組が一つになるお披露目の場だから、
同時に白金組のお嬢と冨樫の結婚報告もあるぞ、大丈夫か」

「大丈夫です、冨樫さんに一目会いたいんです」

「同伴は組長の女以外は連れて行けねえ、だから俺の女として振る舞ってもらう、
いいな」

「はい」

「早速、出かけるぞ」

「どちらへ行くんですか」

「お前のドレス選びに行くんだよ」

葉月は西沢に連れられて、行きつけのブティックへ足を運んだ。

「西沢様、お久しぶりです、今日は女性も同伴とは珍しいですね」

店のオーナーが挨拶してきた。

「今日はこいつのドレスを選びに来た」

「かしこまりました、フィッテングルームへどうぞ」

オーナーはいくつか、ドレスを選んで合わせてくれた。

「こちらなどいかがでしょう、お似合いですよ」

西沢は葉月のドレス姿に呆然と立ち尽くした。

「どうですか」

「ああ、すごく綺麗だ」

「なんか恥ずかしいです」

お前はなんていい女だ、今までずっと我慢していたが、理性を失いそうだ。

「ちょっと席を外してくれるか」

「かしこまりました」

オーナーはフィッテングルームを後にした。

西沢は背中から葉月を抱きしめた。

葉月の首筋に西沢の息がかかる。

「西沢さん、くすぐったいです」

鏡ごしに見つめ合う西沢と葉月。

「葉月、俺は……」

葉月はゆっくり、西沢から離れた。

「ごめんなさい、私は冨樫さんを今でも愛しています」

「そうだったな、すまん」

葉月は西沢の気持ちが痛いほどわかっていた。

葉月を抱くことをずっと我慢してくれていた。

頼るだけ頼って、私は西沢さんの気持ちに答えられないひどい女です。

きっと、西沢さんに抱かれたら、私は感じてしまう。

こんな淫らで淫乱な女を冨樫さんは嫌いになったんだろう。

涙が頬を伝わってこぼれ落ちた。

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