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第十五章 あなたの側を離れません

富樫組姐さん 葉月

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冨樫と葉月は正式に婚姻届を提出した。

そんな矢先、ヤスシと買い物に行った先で、黒い高級車が葉月の傍らに停まった。

車から降りてきたのは、丸堂組若頭、丸堂健だった。

「冨樫組組長の姐さんですよね、俺は丸堂組若頭、丸堂健と申します」

葉月に対して、一礼した。

なんて、礼儀正しい極道なんだろう。

言葉も丁寧だし、黒のスーツをビシッと着こなして、極道には見えない。

「どのような御用件でしょうか」

「お宅さまの組員が、自分の女に手をつけまして、どのようにおとしまえつけるか、
聞きたいと思いまして」

「誰ですか」

丸堂健はじろっとヤスシを睨んだ。

「この人ですか」

葉月は自分の後ろにいるヤスシの方に顔を向けた。

「はい」

「うちの組員が丸堂さんの恋人に手を出したと、仰いますが、
合意の元ですよね」

「いくら合意の元でも、人の女を抱いて許させるとお思いですか」

「丸堂さんの恋人に確かめて、出直してきてください、もしかして、丸堂さんとは、別れたいのかもしれませんよね、最近、ほったらかしにしてたんじゃないですか」

丸堂は図星をつかれて、戸惑いを見せた。

「丸堂さん、女はちょっとでもほったらかしにすると、気持ちは別の男性に行っちゃいますよ、よく恋人の話を聞いてあげてくださいね」

葉月はニッコリ微笑んだ。

周りの丸堂組組員が若頭をバカにされたと思い、葉月腕を掴んで、殴ろうとした。

咄嗟に丸堂はその組員を葉月から引き剥がし、蹴りを入れた。

「ばかやろう、姐さんに謝れ」

「だって、若頭」

「女に手をあげるんじゃねえ」

丸堂は葉月の方に向き直り、頭を下げた。

「姐さん、申し訳ありません、教育が行き届かなくて……」

「いえ、私も初対面の方に失礼なことを申し上げてしまい、すみませんでした」

丸堂はニッコリ微笑んで言葉を発した。

「こんなにもお強い方とは、思っていませんでした、冨樫組長が羨ましいです」

「はい?」

葉月は丸堂の言っていることが理解出来ずにいた。

「姐さんにお会いしたかったんです、堅気の女性だとお噂は伺っていましたから、
もっと、軟弱な方と思っていました、でも、極道にこれだけ自分の気持ちを伝えられる
女性だなんて、自分は姐さんに惚れました」

「私は冨樫の妻ですから、冨樫以外に行為を寄せられては困ります」

葉月は、今日は着物を着ていた。

着物の帯留めを買いにきたのだ。

葉月はバランスを崩して、倒れそうになった。

「危ない」

咄嗟に丸堂が葉月を支えた。

「大丈夫ですか」

「だ、大丈夫です、ありがとうございます」

葉月はヤスシに「帰りましょう」そう言ってその場を後にした。

車に乗り込み、葉月はヤスシに尋ねた。

「ヤスシさん、丸堂さんの恋人を好きになってしまったのですか」

「姐さん、申し訳ありません」

「相手の女性も、同じ気持ちですか」

「はい、自分を好きって言ってくれました」

「そう」

「組長になんて言ったらいいでしょうか」

「そうね」

「葉月さんの時みたいに、俺にあいつを助けるだけの金が有れば……」

「彼女は借金があるの?」
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