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目の前で震えて泣いている梨花を「ごめん」と言って抱きしめた。

梨花の身体を起こし、毛布をかけて、頬の涙を拭った。

「梨花、やつをまだ愛しているんだな」

「違います」

俺は思いもよらない梨花の言葉に戸惑った。

「確かに純一さんと結婚を望んでいましたが、嘘をつかれたのはかなりショックでした、それに三葉ホテル御曹司だったなんて、身分の違いに震えました」

梨花は言葉を続けた。

「その時、純一さんの側にはいられないと思ったんです、七年振りに再会して、ずっと私を探してくれていたなんて驚きましたし、それに五億の借金を払うなんて信じられませんでした」

俺は黙って梨花の気持ちを探っていた。

「最上さんの側にいて、妻を演じ続ければ、借金は払わなくていいと言われていたことはちゃんと覚えています、その道が私にとって最良の選択肢だとも思います、でも……」

俺は梨花の出した結論が分かり、自分から答えを口にした。

梨花に言われたらショックがでかい、情けない男だ。





「俺と別れて、やつとやり直したいってことだな、俺は借金さえ払ってもらえればなんの問題もない、さっさと荷物をまとめて出て行け」

「違います」

梨花に背を向けた途端、予想しなかった言葉に驚いて、振り向いた。

「私、最上さんの妻を演じ続けます、そうしたら借金は払わなくていいんですよね」

「やつを愛しているんじゃないのか」

「私、わかったんです、愛していたら側を離れなかったんじゃないかって」

「七年前はそうだったかもしれないが、再会してずっと探してくれていて、五億の借金を払ってくれると聞いて、気持ちが動いたんじゃないのか」

「私、最上さんの側を離れたくないんです、たとえ最上さんが私を愛してくれなくても、私が望めば最上さんの側にいられるんですよね」

「そうだな」

「もし、最上さんに愛する女性が現れても、私がサインしなければ、離婚出来ないんですから、私はずっと最上さんの側にいられますよね、覚悟してくださいね」

「俺を脅すのか」

「はい」

「いい度胸じゃねえか」



「それに以外と最上さんとの生活は楽しいし」

「以外とだと、最高にって思わせてやるよ、それにお前とは離婚はしねえ、生涯こき使ってやるから覚悟しろ」

「はい、それから……」

「なんだ」

「さっきの本当に嫌だったわけじゃなくて、なんか最上さんがいつもと違って怖かっただけですから……」

梨花は頬を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

「ほお、それは俺に続きをねだっているって言うことか」

「もう、知りません」

梨花は俺に背を向けた。

俺は背中から梨花を抱きしめた。

そして、耳元で囁いた。

「残念ながら今日はお預けだ、また今度抱いてやる」

「どうしてですか」

「その気が失せた」

梨花は頬を膨らませて俺を見た。

「キスして欲しいのか」

「はい」

素直な梨花に心臓を射抜かれた。俺は梨花にチュッとキスをした。

これ以上梨花と身体を重ねていると、俺の理性がもたない。

そんな矢先俺の梨花に対する気持ちがはっきり分かった出来事が起きた。

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