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「残念ながら瑞穂の心の中に俺はいないようだ」
「どう言うことだ」
「瑞穂は最上、お前を愛している」
「俺は別れを告げられたんだ、去るものは負わない主義だ」
「おい、最上」
俺を呼び止める安藤の声は俺には届かなかなかった。
あれから七年の歳月が流れた、今更瑞穂は何しに来たんだ。
患者としてもわざわざ俺の病院に来るなんてどう言うつもりだ。
寄りを戻す気持ちも許す気持ちもなかった。
私はレントゲンを撮って貰い、診察のため待っていた。
最上さんの診察も無事終わった。
「梨花、帰りはタクシーで帰れよ、俺の指示に従わない時は
お前のはじめてを俺がもらう、覚悟しておけ」
「ちゃんと言うこと聞きます、あんな痛い思いはしたくないし、最上さんにはあげません」
「ほお、強気に出たな、この唇に抱いてくださいって言わせて見せる、覚悟するんだな」
そう言って最上さんは人差し指で私の唇に触れた。
ピクッと震えて、顔が真っ赤になった。
「気をつけて帰るんだぞ」
そう言って最上さんはニッコリ微笑んだ。
心臓がドクンっと跳ね上がった。
言葉で強気なこと言っても、私は最上さんが好き、徐々にはじめてを捧げるなら最上さんがいいと思うようになっていた。
会計は最上さんが済ませてくれていたから、タクシーを呼んで帰るだけだった。
そこに、一人の女性が声をかけてきた。
「あのう、先ほど最上先生とお話されていましたが、どの様なご関係ですか」
急に声をかけられて、しかも最上さんとの関係を聞かれてすぐには答えられなかった。
「ごめんなさい、急で驚かれましたよね、私は以前最上先生にお世話になった立花瑞穂と申します」
えっ、立花瑞穂さん。
最上さんの元彼女だ。
やっぱり寄りを戻そうとやってきたと言う噂は本当だったんだ。
どうしよう、なんて答えればいいの?
「あ、足首を骨折して、最上さん、じゃなくて最上先生に手術して頂いたんです」
「そうですか、担当医師と患者さんの関係ですね」
「は、はい、そうです」
「実は七年も前になるんですが、最上先生と結婚の約束をしていたんです、でもお互いのすれ違いで、別れたんですが、私は今でも彼を愛しています、もう一度やり直したいと思っています」
やっぱり、そうなんだ。
「患者として話するチャンスがあればと思ったんですが、なんかタイミングが合わなくて、
そうしたらあなたがとても最上先生と親しげに話しているのを見かけて、
私の味方になって欲しくて、初対面なのに失礼かと思ったんですがお声かけさせて頂きました」
どうしよう。
「お名前をお聞きしてもよろしいですか」
「名前ですか」
「はい」
「鶴巻梨花といいます」
私は咄嗟に旧姓を名乗った。
「私の味方になって頂けますか」
「分かりました、今度、診察の時に最上先生に話してみます」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
そして、立花瑞穂さんはその場を後にした。
私はタクシーでマンションに戻り、今晩、最上さんが帰ってきてから話をしてみることにした。
そして、処方された薬を飲むと、ソファで眠ってしまった。
目が覚めると、最上さんがわたしの顔を覗き込んでいた。
「きゃっ、びっくりした」
「薬飲んだのか」
「はい、そうしたらなんか眠たくなって、すみません、食事の用意はしていません」
「別に構わない、薬が効いたんだろ」
「えっ?」
「睡眠薬入れといたからな」
「嘘!」
「ほんと、梨花が眠っている間にはじめてを頂こうかと思ってな」
私は頬を膨らませて怒った表情を見せた。
「そんなに俺にキスして欲しいのか」
「違います」
「なんだ、違うのか」
「あのう、今日病院で立花瑞穂さんに会いました」
「立花瑞穂?ああ患者として通ってるみたいだな」
「最上さんの患者さんですか」
「いや、違う、それがどうかしたのか」
「よりを戻したいって言ってました」
「それで」
「その旨を伝えて欲しいって言ってました」
「お前、俺の妻だと言ったのか」
「言えませんでした」
「どうしてだ」
「どう言うことだ」
「瑞穂は最上、お前を愛している」
「俺は別れを告げられたんだ、去るものは負わない主義だ」
「おい、最上」
俺を呼び止める安藤の声は俺には届かなかなかった。
あれから七年の歳月が流れた、今更瑞穂は何しに来たんだ。
患者としてもわざわざ俺の病院に来るなんてどう言うつもりだ。
寄りを戻す気持ちも許す気持ちもなかった。
私はレントゲンを撮って貰い、診察のため待っていた。
最上さんの診察も無事終わった。
「梨花、帰りはタクシーで帰れよ、俺の指示に従わない時は
お前のはじめてを俺がもらう、覚悟しておけ」
「ちゃんと言うこと聞きます、あんな痛い思いはしたくないし、最上さんにはあげません」
「ほお、強気に出たな、この唇に抱いてくださいって言わせて見せる、覚悟するんだな」
そう言って最上さんは人差し指で私の唇に触れた。
ピクッと震えて、顔が真っ赤になった。
「気をつけて帰るんだぞ」
そう言って最上さんはニッコリ微笑んだ。
心臓がドクンっと跳ね上がった。
言葉で強気なこと言っても、私は最上さんが好き、徐々にはじめてを捧げるなら最上さんがいいと思うようになっていた。
会計は最上さんが済ませてくれていたから、タクシーを呼んで帰るだけだった。
そこに、一人の女性が声をかけてきた。
「あのう、先ほど最上先生とお話されていましたが、どの様なご関係ですか」
急に声をかけられて、しかも最上さんとの関係を聞かれてすぐには答えられなかった。
「ごめんなさい、急で驚かれましたよね、私は以前最上先生にお世話になった立花瑞穂と申します」
えっ、立花瑞穂さん。
最上さんの元彼女だ。
やっぱり寄りを戻そうとやってきたと言う噂は本当だったんだ。
どうしよう、なんて答えればいいの?
「あ、足首を骨折して、最上さん、じゃなくて最上先生に手術して頂いたんです」
「そうですか、担当医師と患者さんの関係ですね」
「は、はい、そうです」
「実は七年も前になるんですが、最上先生と結婚の約束をしていたんです、でもお互いのすれ違いで、別れたんですが、私は今でも彼を愛しています、もう一度やり直したいと思っています」
やっぱり、そうなんだ。
「患者として話するチャンスがあればと思ったんですが、なんかタイミングが合わなくて、
そうしたらあなたがとても最上先生と親しげに話しているのを見かけて、
私の味方になって欲しくて、初対面なのに失礼かと思ったんですがお声かけさせて頂きました」
どうしよう。
「お名前をお聞きしてもよろしいですか」
「名前ですか」
「はい」
「鶴巻梨花といいます」
私は咄嗟に旧姓を名乗った。
「私の味方になって頂けますか」
「分かりました、今度、診察の時に最上先生に話してみます」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
そして、立花瑞穂さんはその場を後にした。
私はタクシーでマンションに戻り、今晩、最上さんが帰ってきてから話をしてみることにした。
そして、処方された薬を飲むと、ソファで眠ってしまった。
目が覚めると、最上さんがわたしの顔を覗き込んでいた。
「きゃっ、びっくりした」
「薬飲んだのか」
「はい、そうしたらなんか眠たくなって、すみません、食事の用意はしていません」
「別に構わない、薬が効いたんだろ」
「えっ?」
「睡眠薬入れといたからな」
「嘘!」
「ほんと、梨花が眠っている間にはじめてを頂こうかと思ってな」
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「そんなに俺にキスして欲しいのか」
「違います」
「なんだ、違うのか」
「あのう、今日病院で立花瑞穂さんに会いました」
「立花瑞穂?ああ患者として通ってるみたいだな」
「最上さんの患者さんですか」
「いや、違う、それがどうかしたのか」
「よりを戻したいって言ってました」
「それで」
「その旨を伝えて欲しいって言ってました」
「お前、俺の妻だと言ったのか」
「言えませんでした」
「どうしてだ」
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