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②
しおりを挟む「おい、そんなに俺にキスして欲しいのか」
梨花、これ以上お前にキスすると止められなくなる。
最上さんは私のおでこにデコピンをくらわした。
「痛~い」
「朝からキモい事するからだろう」
「えっ」
「お前はキス魔か」
「ごめんなさい、夢見てたから」
「何?俺はお前の夢にまで出てくるのか、相当惚れ込んでるな、抱いて欲しいなら今晩抱いてやるぞ」
「結構です」
キスならいいけどセックスなんて怖くて無理無理。
「何をぶつぶつ言ってるんだ」
「なんでもありません、夢に最上さんが出て来たなんて一言も言ってません」
最上さんは急に真顔になり、私を引き寄せ抱きしめた。
「俺以外の男の夢なんか見るんじゃない、病院へ行ってくる」
「はい」
「今日こそタクシーで病院へ来い、レントゲンを撮る、いいか、帰りもタクシー使うんだぞ、分かったな」
「はい」
ずっと真顔で言われて、はいと返事しか出来なかった。
二時の予約で病院へ向かうと、受付に最上さんが仁王立ちしていた。
「遅い、何やってるんだ」
「ごめんなさい、トイレ行ってたんです」
「本当にお前グズだな」
「失礼な、しょうがないじゃないですか、松葉杖だと時間かかるんです、誰も手伝ってくれないし……」
私はじっと最上さんを睨んだ。
「甘ったれた事言ってるんじゃないぞ」
私は頬を膨らませて拗ねて見せた。
グッと最上さんの顔が接近して「キスして欲しいのか、残念ながらここは病院だから今晩まで我慢しろ」と私を見つめた。
「ち、違います」
私は松葉杖を持ち上げて手を左右に振った。
当たり前のことだが、バランスを崩して転倒しそうになった。
「きゃっ」
最上さんは私を抱き抱えてくれた。
「お前はどこまで俺に迷惑掛ければ気が済むんだ」
「迷惑かけたくてかけてる訳じゃありません」
「お前はよく三十九年間一人で生きてこれたな」
「三十九年間一人だった訳じゃありません」
「どう言う事だ」
「私だってプロポーズされた事くらいありますから」
最上さんの顔色が変わった。
「男がいたのか」
「二十代の時ですけど……」
「なんで結婚しなかったんだ」
「なんでだろう、もう忘れました」
そこに看護師さんがレントゲンの準備が出来た事を伝えに来た。
「よし、行くぞ」
そう言って最上さんは私を抱き抱えた。
「自分で歩けます」
「また、転ばれたら溜まったもんじゃねえからな」
そう言って最上さんは私をレントゲン室まで運んでくれた。
その様子をじっと見つめていた二つの瞳があった、立花瑞穂さんだった。
「なんなの、あの女、丈一郎さんにあんなに親しげに」
瑞穂は梨花に対して嫉妬の炎を燃やしていた。
丈一郎さんは私のものよ。
私は立花瑞穂、七年前丈一郎さんと結婚までの付き合いをしていた。
婚姻届にサインをすれば丈一郎さんと夫婦になれるはずだった。
丈一郎さんはいつも意地悪な事を言って、私をからかってばかりだった。
それに最上総合病院の跡取りで外科医の仕事が忙しい時期だった。
既に一緒に暮らしていた私は毎晩帰りが遅い丈一郎に耐えられない寂しさを
感じていた。
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