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今晩梨花は俺に抱かれる覚悟をしておけ、俺を大好きなんだろ1①
しおりを挟む「しょうがねえだろ、愛が冷めたんだからな、いや、俺だけのぼせ上がってたのかもしれないな」
梨花は婚姻届にサインし始めた。
「私は最上さんが大好きです、絶対に最上さんへの愛は冷めたりしません」
「へえ、梨花は俺が大好きなのか」
「あのう、今の言葉聞かなかった事にしてください」
「もう遅い、しっかり聞いたぞ」
どうしよう、最上さんは何かを企んでいるかのような笑みを浮かべた。
「よし、今晩梨花は俺に抱かれる覚悟をしておけ、俺を大好きなんだろ」
私は大きなため息をついた。
もう、どうしよう、大好きだけど、抱かれたいなんて一言も言ってないのに……
はじめてだから怖いのに……
「そうだ、今日、病院へ来い、足首のレントゲンを撮る、いいな」
「はい」
最上さんは病院へ向かった。
ああ、告白しちゃった、でも最上さんは彼女をまだ好きなんだ、きっと。
私は午後二時の予約で病院へ向かった。
婚約が発表されて、私は病院中で注目の的になった。
それはそうだろう、年上の婚約者、そして何より二十五歳の時の彼女と結婚すると、当時注目を浴びていたからだ。
それなのに結婚相手はその彼女では無い。
急に現れて最上先生を手玉に取り、将来の医院長夫人の座をまんまと獲得したと……
病院の関係者は私をチラチラみる。
そんな時、レントゲンの順番を待っていると、看護師がひそひそしゃべっている声が聞こえて来た。
「ねえ、今日、最上先生の元彼女が病院へ来ていたんだって」
「やっぱりね、あの婚約者じゃ、元彼女の方が魅力的だもんね、こんな事言っちゃ悪いけど、絶対最上先生あの婚約者を抱く気にならないんじゃないの」
「そうだよね、怪我して受診しに来たみたいだけど、最上先生と寄りを戻そうと思ってこの病院に来たんじゃないの」
最上さんが唯一結婚したかった彼女、立花瑞穂さん。
振られたって言ってたから、彼女が寄りを戻すって言ったら、私はどうなるの?
借金払えないよ。
住むところもない、お金もない、私、最上さんに離婚されたら生きて行けないよ。
でも、やっぱり彼女を選ぶよね、それが当たり前。
悠長にレントゲン撮ってる場合じゃない。
私は病院の出口に向かった。
最上さんはタクシーで帰れって言っていたけど、タクシー乗ってる場合じゃない。
私は歩いて帰る事にした。
その頃、俺は梨花のレントゲンの写真が上がって来ないので、確認の電話を入れた。
「おい、最上梨花のレントゲン写真まだか」
「今、病院内を呼び出ししているのですが、いらっしゃらなくて」
「いない?どう言う事だ」
梨花はどこで何をやってるんだ。
「最上先生、外来の立花瑞穂さんをお呼びしてもよろしいでしょうか」
「外来二番に入って貰ってくれ、俺は急用を思い出した、あと残りの患者さんは鈴木先生に頼む」
「最上先生」
看護師は慌てて鈴木先生に連絡を入れて外来一番に入って貰った。
俺は梨花を探しに病院内を回った。
受付を確認した、病院へは来てるんだ、一体どこに行ったんだ。
俺は車でマンションへ向かった。
部屋へ入るが、梨花は戻っていなかった。
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