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もう、こんなに冷たい人だとは思いもしなかった。
契約するんじゃなかったな。
でも駄目だ、私、お金払えない。
会計は全て最上さんが済ませてくれた。
退院の日、タクシーを手配してくれて、私は一人で最上さんのマンションへ向かった。
私が住んでいたアパートから荷物を運び、解約の手続きをしてくれたのも最上さんだった。
私はまだ、松葉杖を使っていないと歩く事が出来なかった。
退院の日も最上さんは姿を見せず、一人寂しく退院した。
タクシーが最上さんのマンションへ到着すると、マンションのコンシェルジュが出迎えてくれた。
「最上様の婚約者の鶴巻梨花様ですね、私、当マンションのコンシェルジュ、佐々木と申します、何なりとお申し付けくださいませ」
「ご丁寧にありがとうございます、鶴巻梨花と申します、よろしくお願いします」
「既に梨花様のお荷物は届いております」
「ありがとうございます」
「お部屋までご案内致します」
そして佐々木さんが案内してくれた。
凄いタワーマンション、エレベーターは最上階まで上がって行った。
「大丈夫でございますか」
「はい、最上さんにもう少し、佐々木さんくらいの優しさがあってもいいのに……」
そして、エレベーターのドアが開いた。
松葉杖を使うのは初めての事で、戸惑っていると、ドアの外に立っていた男性に怒鳴られた。
「本当に鈍臭いな、梨花は」
私はえっと聞き慣れた声に、最上さんだと確信した。
顔を上げると、やはり最上さんが立っていた。
私は想像もしていなかった最上さんの姿に呆然と立ち尽くしていた。
「いつまで突っ立ってるんだ、佐々木が出られないだろう」
「あっ、ごめんなさい」
そして慌ててエレベーターから降りようとした時、松葉杖がエレベーターのドアの溝にはまって、倒れそうになった。
「きゃっ」
最上さんは咄嗟に私を抱き抱えてくれた。
「おい、また病院へ逆戻りしたいのか」
「ごめんなさい」
倒れた松葉杖を拾って私に渡してくれた。
「全く世話が焼けるな」
最上さんは佐々木さんから荷物を受け取り、私を部屋に案内してくれた。
「早くしろ」
「無理です、そんなに早く歩けません」
でも、嬉しかった、だって休みは取れないなんて言ってたのに、先回りしてマンションで待っていてくれたんだもん。
最上さん、優しいところもあるんだとちょっと見直した。
最上さんは、部屋のドアを開けると、荷物を部屋まで運び「仕事に戻る」そう言って、出口に向かった。
「あれ、休み取ってくれたんじゃなかったんですか」
「お前の退院如きに大切な有給使えるか」
私は頬を膨らませて最上さんを睨んだ。
「そんな可愛い顔しても駄目だ、午後から手術があるからな」
可愛い顔に反応して恥ずかしくなって下を向いた。
最上さんは私に近づいて、私を抱き上げた。
「きゃっ」
そしてベッドの部屋に歩を進めた。
私をベッドに下ろして最上さんの顔が急接近した。
えっ、キスされるの?
私は咄嗟に目を閉じた。
次の瞬間、おでこにデコピンされた。
契約するんじゃなかったな。
でも駄目だ、私、お金払えない。
会計は全て最上さんが済ませてくれた。
退院の日、タクシーを手配してくれて、私は一人で最上さんのマンションへ向かった。
私が住んでいたアパートから荷物を運び、解約の手続きをしてくれたのも最上さんだった。
私はまだ、松葉杖を使っていないと歩く事が出来なかった。
退院の日も最上さんは姿を見せず、一人寂しく退院した。
タクシーが最上さんのマンションへ到着すると、マンションのコンシェルジュが出迎えてくれた。
「最上様の婚約者の鶴巻梨花様ですね、私、当マンションのコンシェルジュ、佐々木と申します、何なりとお申し付けくださいませ」
「ご丁寧にありがとうございます、鶴巻梨花と申します、よろしくお願いします」
「既に梨花様のお荷物は届いております」
「ありがとうございます」
「お部屋までご案内致します」
そして佐々木さんが案内してくれた。
凄いタワーマンション、エレベーターは最上階まで上がって行った。
「大丈夫でございますか」
「はい、最上さんにもう少し、佐々木さんくらいの優しさがあってもいいのに……」
そして、エレベーターのドアが開いた。
松葉杖を使うのは初めての事で、戸惑っていると、ドアの外に立っていた男性に怒鳴られた。
「本当に鈍臭いな、梨花は」
私はえっと聞き慣れた声に、最上さんだと確信した。
顔を上げると、やはり最上さんが立っていた。
私は想像もしていなかった最上さんの姿に呆然と立ち尽くしていた。
「いつまで突っ立ってるんだ、佐々木が出られないだろう」
「あっ、ごめんなさい」
そして慌ててエレベーターから降りようとした時、松葉杖がエレベーターのドアの溝にはまって、倒れそうになった。
「きゃっ」
最上さんは咄嗟に私を抱き抱えてくれた。
「おい、また病院へ逆戻りしたいのか」
「ごめんなさい」
倒れた松葉杖を拾って私に渡してくれた。
「全く世話が焼けるな」
最上さんは佐々木さんから荷物を受け取り、私を部屋に案内してくれた。
「早くしろ」
「無理です、そんなに早く歩けません」
でも、嬉しかった、だって休みは取れないなんて言ってたのに、先回りしてマンションで待っていてくれたんだもん。
最上さん、優しいところもあるんだとちょっと見直した。
最上さんは、部屋のドアを開けると、荷物を部屋まで運び「仕事に戻る」そう言って、出口に向かった。
「あれ、休み取ってくれたんじゃなかったんですか」
「お前の退院如きに大切な有給使えるか」
私は頬を膨らませて最上さんを睨んだ。
「そんな可愛い顔しても駄目だ、午後から手術があるからな」
可愛い顔に反応して恥ずかしくなって下を向いた。
最上さんは私に近づいて、私を抱き上げた。
「きゃっ」
そしてベッドの部屋に歩を進めた。
私をベッドに下ろして最上さんの顔が急接近した。
えっ、キスされるの?
私は咄嗟に目を閉じた。
次の瞬間、おでこにデコピンされた。
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