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第十四章 過酷な現実

静香が目覚めた時、俺の事は静香の記憶の中にあるのだろうか。

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静香の手術はその日の夜に無事終わったと連絡が入った。

「今は眠っていますので明日、病院へお越し下さい」

「わかりました、大変お世話になりました」

俺は無事に手術が終わった事には安堵した。

しかし、問題は記憶だ。

静香が目覚めた時、俺の事は静香の記憶の中にあるのだろうか。

その夜全く眠る事が出来ずに朝を迎えた。

翔太を幼稚園に送り届けて、俺は静香の待っている病院へ向かった。

先生から手術の経過の説明を聞いた。

まだ、集中治療室で安静の状態で、俺は静香のベッドに近づいた。

眠っている顔はいつもの静香だ。

ちゃんと生きている、まずはそれだけでも嬉しかった。

しかし、静香は中々目覚める気配はなかった。

しばらくしてから、翔太を病院へ連れて行った。

「翔太、ママは手術は終わったけど、疲れてまだ眠っている、だから静かに声をかけるんだ、いいな」

「うん」

翔太はゆっくりと静香のベッドに近づいた。

「ママ、翔太だよ、今日ね、幼稚園でママの絵を描いたんだよ、先生に上手いって言われたんだ」

翔太は声をかけても返事をしない静香の顔をじっと見ていた。

「ママ」

「僕、ママに言われた通りにいい子にしてるよ、パパの言う事、ちゃんと聞いてるよ、
パパのお手伝いもちゃんとしてるよ、だから早く起きて、ママ」

翔太は強くて頭のいい子だと感心していたが、やはり、五歳の子供だと少し安心した。

静香に呼びかけながら、堪えていた涙が溢れ出し「ママ、ママ」って泣きはじめた。

「翔太、大丈夫だ、ママはすぐに目が覚めるよ」

そう言ってギュッと抱きしめた。

俺は翔太を抱き抱えて、マンションに戻った。
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