夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU

文字の大きさ
38 / 100
第七章 私を覚えていない彼

元ご主人の代わりでいいからあゆみと一緒にいたい

しおりを挟む
「じゃなんで俺を受け入れた?元ご主人を思いながら俺に抱かれたのか」 
違う、でも、涙が溢れて止まらなかった、私は声を出して泣いた。 
そんな私の姿を見て彼は私を抱きしめた。 
「ごめん、ごめん、俺ひどい事言ったよね」 
「ごめんなさい、私帰ります」 
彼は私を抱きしめて「怪我が治るまでここに居て欲しい」と耳元で囁いた。 
そして彼の中で一つの結論に達した事を私に伝えた、それは思いもよらぬことだった。 
「俺はあゆみの元ご主人に似ているんだね、しかも名前まで同じなんて・・・」 
「えっ?」 
「俺と初めて会った時、様子がおかしかったし、元ご主人といる錯覚に陥って思いをぶつけたのだろう、それにあゆみがこうも簡単に俺を受け入れてくれるわけないし・・・」 
彼は私の愛する凌と自分が瓜二つで、名前まで同じと言う結論を出したようだ。 
しかも彼はとんでもない事を口にした。 
「あゆみ、俺、元ご主人の代わりでもいいからあゆみと一緒にいたい、俺を利用して構わないから、俺、あゆみに惚れた、側に置いておきたい。そのうち俺に惚れさせて見せる、俺と一緒に暮らさないか?」 
涙が頬を伝わった、また彼と一緒に居ることが出来る、私が愛した麻生凌としてではないが、私を求めてくれている、でも私は指輪を外し、目の前にいる麻生凌と再出発をする勇気はなかった、またあの悪夢が蘇るからである。 
「少し考えさせてください」 
「考えることはないだろう、あゆみはしばらく一人じゃ動けないし、俺と一緒にいる事を文句言う奴もいないし、この際俺相手に元ご主人への文句ぶつけてスッキリすればいいと思うよ」 
彼は変わりなく私に考える時間を与えないそして怪我が治るまでお世話になることになった。 


怪我が治るまでと思っているのは私だけで彼はずっとこれから一緒って思っていた。 
「腹減ったな、コンビニでなんか買ってくるよ、あゆみは何がいい?」 
「買ってきてもらうなんて申し訳ないです」 
「気にするな、あゆみ動けないだろ?」 
「じゃあ、お言葉に甘えて、おにぎりとサラダお願いします」 
「了解、じゃ待っていて」 
彼は嬉しそうに微笑んで部屋を後にした。 
私が使っていた部屋もそのままで、私の記憶がない彼は、この部屋をどう言うつもりで残しているのだろうと不思議だった。 
しばらくして、彼はコンビニから戻ってきた。 
私を抱き上げてリビングに運んだ。 
「いただきます」 
「いただきます」 
「あゆみ、ずっとここにいろよ」 
「怪我が治るまでお世話になります」 
「強情だな、俺に甘えればいいだろ」 
「そう言うわけにはいきませんよ」 
「まっいいや、あと二ヶ月あるから、俺なしでは生きていけないって言わせて見せるからな」 
私は彼と初めて会った時から、彼なしでは生きていけないって思っていた。 
唯一私がときめいた男性であり、キスも愛を確かめ合ったことも初めての相手である、そしてこの世に生まれてくる事が出来なかったが、私が初めて妊娠した経験をさせてくれたのも彼である。 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

友達の肩書き

菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。 私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。 どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。 「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」 近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚

日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……

処理中です...