上 下
74 / 111
第十六章 真実の愛

みゆの本当の気持ち

しおりを挟む
「みゆ、頭をあげて、心配しなくてももう金は貸したよ」

私は安堵の表情を慎太郎さんに向けた。

「いいかい、ここが彼の正念場だ、この危機を乗り越えられなければみゆを安心して託す事は出来ない」

私は慎太郎さんの話を聞いていた。

「彼は会社を立て直してみゆを迎えに来るだろう、だから待っているんだ、それが出来ないようならそこまでの男と言う事になる」

「わかりました、慎太郎さん、ありがとうございます」

慎太郎さんは与那国島を後にした。

廉也は桂木ホテルリゾートを立て直す為、取引先を回った。

東城氏に紹介してもらったメインバンクに挨拶に行き、契約を交わした。

俺はしばらく忙しくしていた。

みゆのことが気にならないわけではない。

みゆに取って俺といるより、健志と与那国島にいる方が体調にもいいんじゃないかと思いはじめた。

しかし、みゆの笑顔、みゆの涙、全てが脳裏から離れない。

今すぐにでもみゆを抱きしめたいと気持ちは昂っていた。

あれから三ヶ月の月日が流れた。

桂木ホテルリゾートは利益をあげられるまでに持ち直した。

俺はアメリカへ向かった。

「ご無沙汰しています、おかげ様でなんとか桂木ホテルリゾートは持ち直しました」

「そうか、それはよかった、みゆちゃんは迎えに行ったのか?」

「いえ、俺がいなくても健志の元で元気に暮らしているのであれば、わざわざその幸せを壊す権利は俺にはないのではないかと……」

「そうか、ならわしがみゆを迎えに行くぞ、もう今後一切みゆのことは忘れてくれ」

「それは出来ません」

「わしでは不服か、健志とやらならみゆを任せられると言うのか?」

「そうではありません、みゆを忘れる事は出来ないと言う意味です」

俺はこれから先、みゆに辛い思いや苦しい思いをさせる事は出来ないと思っている。

だから迎えに行く事に躊躇しているのが事実だ。

でもみゆを忘れることなど出来ない、

「みゆが今、与那国島で過ごしている事がみゆに取って幸せなのか?桂木くんの側にいる事はみゆに取って不幸なのか?」

「これから先、桂木ホテルリゾートを存続させながら、東城氏にお借りした金を返す事は容易いことではないと思っています、俺の側にいて幸せな日々を送れるとは到底思えません、そんな苦労をする事がわかっているのに、迎えに行く事は俺の身勝手ではないでしょうか」

「わしも当時みゆの幸せを考えて、みゆの前から姿を消した、桂木くんの気持ちは理解出来る、しかし、それは間違っていたんだ」

「どう言う事でしょうか」

東城氏はゆっくりと言葉を続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜

葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在 一緒にいるのに 言えない言葉 すれ違い、通り過ぎる二人の想いは いつか重なるのだろうか… 心に秘めた想いを いつか伝えてもいいのだろうか… 遠回りする幼馴染二人の恋の行方は? 幼い頃からいつも一緒にいた 幼馴染の朱里と瑛。 瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、 朱里を遠ざけようとする。 そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて… ・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・ 栗田 朱里(21歳)… 大学生 桐生 瑛(21歳)… 大学生 桐生ホールディングス 御曹司

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

大人な軍人の許嫁に、抱き上げられています

真風月花
恋愛
大正浪漫の恋物語。婚約者に子ども扱いされてしまうわたしは、大人びた格好で彼との逢引きに出かけました。今日こそは、手を繋ぐのだと固い決意を胸に。

アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚

日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……

処理中です...