上 下
65 / 111
第十三章 廉也の危機

居た堪れないみゆ

しおりを挟む
その頃、週刊誌の記者が桂木ホテルリゾートの経営悪化を大々的に取り上げた。

橘不動産御曹司橘龍司は噂を嗅ぎつけて、みゆの元に向かった。

「みゆ」

「龍司さん」

「わたし、龍司さんとは一緒に東京に帰るつもりはないから」

「違うんだ、迎えにきたわけじゃない」

私は龍司さんの考えが読めずにいた。

「桂木ホテルリゾートが倒産するかもしれない」

「えっ?嘘?」

「本当だ、会長つまり桂木の親父さんが亡くなった」

「本当?」

「ああ、それに伴いメインバンクが撤退し、取引先も次々と手を引き始めた」

私は廉也さんのことが心配で居ても立っても居られない気持ちだった。

「信用問題が痛手だ、宇佐美不動産との契約をいきなり切ったことが桂木の信用を落としている要因だ」

「私のせい?」

「いや、宇佐美不動産との契約を切る判断をしたのは桂木だ、みゆは関係ない」

「廉也さんは今どうしているの?」

「連絡取ってないのか?」

「うん、お父様が危篤と連絡が入って、一人で東京に戻ったの、それからまだ連絡がなくて心配していたんだけど」

「そうだったのか、桂木は親父さんの葬儀や会社のことなど大変なんだろう」

龍司さんの話を聞いていた私は急に呼吸が苦しくなった。

「みゆ、大丈夫か?」

龍司さんは私を北山先生の元に連れて行ってくれた。

「先生、みゆが……」

「みゆちゃん、ゆっくり深呼吸して」

私は北山先生の処置を受けて落ち着きを取り戻した。

「橘さん、前にも言いましたが、みゆちゃんの意に沿わないことを無理矢理はやめてほしいとお願いしたはずです」

「すみません、桂木の情報を話しただけなんですが」

「廉也の情報?」

龍司は別の部屋に移り北山先生に話し始めた。

「桂木ホテルリゾートの会長が亡くなりました」

「えっ?危篤と連絡が入って廉也は急いで東京に戻ったんですが……」

「それに伴いメインバンクと取引先が撤退し始めました」

北山先生は龍司の話を黙って聞いていた。

「宇佐美不動産との契約破棄が原因で桂木の信用がなくなったのが要因かと」

「今、廉也はどうしてますか」

「行方がわからなくなっています」

「廉也」

「みゆには桂木の行方不明は伝えていません」

「わかりました」

龍司は東京へ戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~

蓮美ちま
恋愛
最低最悪な初対面だった。 職場の同僚だろうと人妻ナースだろうと、誘われればおいしく頂いてきた来る者拒まずでお馴染みのチャラ男。 私はこんな人と絶対に関わりたくない! 独占欲が人一倍強く、それで何度も過去に恋を失ってきた私が今必死に探し求めているもの。 それは……『Dの男』 あの男と真逆の、未経験の人。 少しでも私を好きなら、もう私に構わないで。 私が探しているのはあなたじゃない。 私は誰かの『唯一』になりたいの……。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。 でも今、確かに思ってる。 ―――この愛は、重い。 ------------------------------------------ 羽柴健人(30) 羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問 座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』 好き:柊みゆ 嫌い:褒められること × 柊 みゆ(28) 弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部 座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』 好き:走ること 苦手:羽柴健人 ------------------------------------------

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。 ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。 翻弄される結城あゆみ。 そんな凌には誰にも言えない秘密があった。 あゆみの運命は……

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

処理中です...