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第十一章 差し伸べられた手

この手を取れば、でも……

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廉也さんは私の後を追って来た。

そしてあっと言う間に追いつかれ手を掴まれた。

「みゆ、話を聞いてくれ」

「離してください」

廉也は慌てて手を離した、健志から過呼吸の事を聞いていたからだ。

「健志から聞いたんだが、俺の元に戻らないって本当か?」

私はしばらく黙って下を向いていた。

そこへ北山先生が二人の間に割って入った。

「立木さんは東京には戻らない、廉也一人で帰ってくれ」

その時廉也さんは私に自分の気持ちを伝えた。

「みゆ、俺と一緒に東京へ帰ろう」

廉也さんは私にむけて手を差し出した。

この手を取れば廉也さんと一緒にいられる、でも私の存在は廉也さんの負担になる。

私は廉也さんから視線を外し北山先生の背中に隠れた。

廉也は目を伏せて手を下ろした。

そして私に背を向けて、北山先生に「みゆを頼む」そう言い残してその場を去った。

診療所に待機していたゆかりさんは、一人で戻ってきた廉也に声をかけた。

「なんで立木さんを連れてこなかったの?」

「しょうがねえだろ、俺はふられたんだから」

「廉也、本気で言ってるの?」

「みゆは自分の事より、俺のことを考える女なんだ、だから自分が我慢してでも、俺を優先する、今、みゆは俺と一緒にいる事を望んでいない」

「そんなこと言ってたら、健志に取られるわよ」

廉也は黙ったままだった。

廉也さんはわかっていた、北山先生が私に好意を抱いていることを……

「女はいつでも側にいてくれる人を好きになるのよ」

「ゆかり、帰るぞ」

「もう私の忠告無視?」

二人は島を離れた。

北山先生と診療所に戻って来た私に、北山先生はこう言った。

「みゆちゃんって呼んでいいかな?」

その意味する事がどう言う事か分かったが、私は答えられずにいた。

北山先生は将来北山総合病院医院長になる人だから、これ以上は深入り出来ないと思った。

「みゆちゃん、僕のことゆっくりでいいから、まずは体調を戻す事を最優先しよう」

「先生」

何故か北山先生の側に居ると気持ちが落ち着く自分がいた。

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