55 / 111
第十一章 差し伸べられた手
廉也さんと一緒にいられないのなら生きていても仕方ない
しおりを挟む
村山慎一、私は彼と付き合うことにした。
自分の気持ちを全く相手に伝えられない彼と、ズバズバ自分の気持ちを相手に伝える私。
一度も好きって言われた事はなかった。
それでも、いつも優しく私を気遣ってくれた彼。
私は日に日に惹かれていった。
それからしばらくして、彼は具合が悪くなり、仕事を休むようになった。
彼は血液の癌に侵されていた。
貧血と甘くみたのがいけなかったと悔やんだ。
「廉也はいつも私の側にいてくれたけど、私達は恋に発展しなかったの、全くタイプじゃないから」
「そうだったんですか、全然知らないのに変なこと言っちゃってすみません」
「ああ、いいの、私と廉也ってそんな風に見られてたんだ」
私はなんて辛いことを聞いてしまったんだろうと後悔した。
「ゆかりさん、ごめんなさい、私……」
「大丈夫よ、だから立木さんにはちゃんと検査受けてほしいの」
「考えておきます」
私はこの時廉也さんと一緒にいられないなら生きている意味がないと思っていた。
(私は廉也さんにとって迷惑な存在だから……廉也さんは私を好きって言ってくれた、でも廉也さんは会社のために麗子さんと結婚する立場だから、私さえいなければ、廉也さんは悩むことはない)
と思った。
ゆかりさんは言葉を続けた。
「立木さんが居なくなって、廉也は仕事してなかったのよ、立木さんを捜すのに必死で、宇佐美不動産との契約も取りやめたわ」
「えっ?そんな、私のせいですよね」
「立木さんのせいではないわよ、廉也が決めたことよ」
「麗子さんとの結婚はどうなったんですか?」
「もちろん無しよ、だから廉也の元に戻ってあげて、廉也は一途に立木さんを愛してるわ、あなただってわかってるんでしょ」
「駄目です、私じゃ」
「どうして?」
「反対されます、もう二度とあの思いはしたくないんです」
手の震えが止まらず、呼吸が苦しくなってきた。
「立木さん、大丈夫?大きく深呼吸して」
「姉さん、もういいだろ、彼女は限界だ」
北山先生は私を診療所のベッドに横にならせてくれ、ずっと手を握ってくれた。
私は知らないうちに眠ってしまった。
自分の気持ちを全く相手に伝えられない彼と、ズバズバ自分の気持ちを相手に伝える私。
一度も好きって言われた事はなかった。
それでも、いつも優しく私を気遣ってくれた彼。
私は日に日に惹かれていった。
それからしばらくして、彼は具合が悪くなり、仕事を休むようになった。
彼は血液の癌に侵されていた。
貧血と甘くみたのがいけなかったと悔やんだ。
「廉也はいつも私の側にいてくれたけど、私達は恋に発展しなかったの、全くタイプじゃないから」
「そうだったんですか、全然知らないのに変なこと言っちゃってすみません」
「ああ、いいの、私と廉也ってそんな風に見られてたんだ」
私はなんて辛いことを聞いてしまったんだろうと後悔した。
「ゆかりさん、ごめんなさい、私……」
「大丈夫よ、だから立木さんにはちゃんと検査受けてほしいの」
「考えておきます」
私はこの時廉也さんと一緒にいられないなら生きている意味がないと思っていた。
(私は廉也さんにとって迷惑な存在だから……廉也さんは私を好きって言ってくれた、でも廉也さんは会社のために麗子さんと結婚する立場だから、私さえいなければ、廉也さんは悩むことはない)
と思った。
ゆかりさんは言葉を続けた。
「立木さんが居なくなって、廉也は仕事してなかったのよ、立木さんを捜すのに必死で、宇佐美不動産との契約も取りやめたわ」
「えっ?そんな、私のせいですよね」
「立木さんのせいではないわよ、廉也が決めたことよ」
「麗子さんとの結婚はどうなったんですか?」
「もちろん無しよ、だから廉也の元に戻ってあげて、廉也は一途に立木さんを愛してるわ、あなただってわかってるんでしょ」
「駄目です、私じゃ」
「どうして?」
「反対されます、もう二度とあの思いはしたくないんです」
手の震えが止まらず、呼吸が苦しくなってきた。
「立木さん、大丈夫?大きく深呼吸して」
「姉さん、もういいだろ、彼女は限界だ」
北山先生は私を診療所のベッドに横にならせてくれ、ずっと手を握ってくれた。
私は知らないうちに眠ってしまった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~
蓮美ちま
恋愛
最低最悪な初対面だった。
職場の同僚だろうと人妻ナースだろうと、誘われればおいしく頂いてきた来る者拒まずでお馴染みのチャラ男。
私はこんな人と絶対に関わりたくない!
独占欲が人一倍強く、それで何度も過去に恋を失ってきた私が今必死に探し求めているもの。
それは……『Dの男』
あの男と真逆の、未経験の人。
少しでも私を好きなら、もう私に構わないで。
私が探しているのはあなたじゃない。
私は誰かの『唯一』になりたいの……。
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
夜の帝王の一途な愛
ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。
ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。
翻弄される結城あゆみ。
そんな凌には誰にも言えない秘密があった。
あゆみの運命は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる