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第十一章 差し伸べられた手

廉也とゆかり

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その頃龍司は毎日診療所にやってきた。

「龍司さん、もう東京に帰って!社長さんが留守にするなんてよくないよ」

「なら、一緒に帰ろう、みゆ」

「東京には帰らない」

「わかったよ、一旦僕は東京に帰る、また迎えに来る」

龍司は一旦東京に戻った。

それからしばらくして東京から私を訪ねてきた人がいた。

「やっと着いた、立木さん、貧血は大丈夫?」

ゆかりさんだった。

「ゆかりさん?」

「姉さん、僕に任せてって言ったよね?」

「だって廉也が行くって訊かないから、宥めるのに大変だったのよ」

「先生、私がここにいること黙って居てくださいってお願いしましたよね?」

「すみません、でも僕が教えなくても、廉也はきっとここを捜し出しますよ」

「ちょっと、私の存在忘れてない?」

「ごめん、姉さん久しぶり」

「何?相変わらず一人?」

北山先生は、ゆかりさんの言葉に呆れた様子の表情を見せた。

「さあ、立木さん、じっくり聞かせてもらうわよ、なんで廉也の元を去ったの?しかも会社まで辞めて」

「私が廉也さんに相応しくないからです」

「相応しくない?」

「桂木ホテルリゾート株式会社の社長なんですよ、廉也さんは……しかも麗子さんと言う婚約者まで居て」

「廉也は麗子さんとは結婚しないって言ってたけど」

「じゃあ、ゆかりさんと結婚したいんじゃないですか」

「えっ?私?」

「ゆかりさん、廉也さんの彼女なんですよね?」

「ちょっと待って、なんでそうなるのかな」

「じゃあ、ゆかりさんと廉也さんはどんな関係なんですか?」

ゆかりさんは驚いた表情を見せていた、でも私があまりにも真剣に質問するので、馬鹿げたことと思いながらも答えてくれた。

「私の彼と廉也が同期入社だったの、彼は廉也と真逆の性格で自分の気持ちを言葉にするのに、すごく時間がかかる人だった。
私を好きって言う気持ちも、廉也が伝えてくれた、つまり廉也は私と彼のキューピットかな」

あれは入社式が終わり、みんなで食事に行こうって集まった。

廉也は率先してみんなを和ませてくれるムードメーカーだった。

でも彼は一言も話さず、下を向いていた。

(大人しい人、それに比べて桂木くんはなんて明るいの?)

私は微笑ましい気持ちで廉也を見つめた。

「おい、北山、俺に惚れただろう」

「はあ?何言ってるかな、桂木くんは少し自意識過剰よ、少しは村山くんを見習えば?」

「村山?」

彼は急に自分の名前が出て来たことにびっくりして戸惑っていた。

「へ~っ、村山、北山がお前の事好きだってよ」

彼は顔を真っ赤にして俯いた。

「ちょっと桂木くん、私はそんな事言ってないけど」

「そう?お前らお似合いだから付き合っちゃえよ」

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