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第八章 廉也との別れ
みゆ、どうして電話に出ないんだ
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その頃、私は東京を離れていた。
貯金を全部おろして、気ままな一人旅。
そうだ、龍司さんに連絡してない、アパートに居なくて心配してるかな?
そう、龍司はみゆがアパートを引き払ったことに動揺を隠せず、みゆを捜していた。
そして廉也のマンションにたどり着いた。
「すみません、ちょっとお尋ねしますが、こちらに桂木廉也さんはお住まいでしょうか」
「失礼ですが、どちら様でしょうか?個人情報なのでお答え出来かねますが……」
「橘不動産社長の橘 龍司と申します、みゆ、いえ、立木みゆさんを捜しています、桂木さんのマンションにお住まいと伺ったのですが……」
コンシェルジュの横尾さんに名刺を渡した。
「桂木様はお住まいです、しかし出張中のため留守にしております、みゆ様の事は桂木様に伺ってからでないと、お答え出来かねます」
「そうですか、わかりました、いつお戻りでしょうか」
「一週間ほどで戻るとお聞きしております」
「ありがとうございました、また出直して来ます」
龍司は廉也のマンションを後にした。
(今夜私がスマホに出なかったら、廉也さんは心配するだろうな、でももう廉也さんとは会わないんだから、連絡取れない方がいいよね、廉也さんに会えないと寂しい)
涙が溢れて止まらなかった。
その夜、俺はスマホを手に取り、みゆに電話をかけた。
しかし何回コールしてもみゆは出ない、そのうち留守電に切り替わる。
俺は何回も試していた。
「みゆ、どうしたんだ、なんで出ない」
急に不安になり、俺はコンシェルジュの横尾に連絡した。
「桂木だが」
「桂木様、どうされたのでしょうか」
「忙しいところ悪いが、みゆがスマホに出ないんだ、もう会社から戻ってるだろ?」
「みゆ様でしたらご旅行に行かれましたが、お聞きになっていませんでしたか」
「旅行?」
「はい、桂木様が出張中なので、有給を取ってお友達とご旅行にお出かけになりました」
「そうか、行き先は何処だって?」
「行き当たりばったりとおっしゃってました」
「悪いが、俺の部屋に行って、みゆのスマホが置きっぱなしか確認してくれ」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
しばらくして横尾は俺の部屋に置きっぱなしのみゆのスマホを確認した。
「桂木様、みゆ様のスマホは置いてあります」
「そうか、出ないはずだな」
「あのう、余計な事かもしれませんが、気になることが……」
「なんだ、構わないから言ってくれ」
「みゆ様はカードキーを私に預けてお出かけになりました、旅行中無くすといけないからとおっしゃって……」
「そうか」
「それから橘不動産社長橘龍司様がみゆ様を訪ねて来られて、桂木様にお伺いをしてからとお伝えしました、また出直してくるとおっしゃってました」
俺の脳裏に不安が過った。
旅行ではなく、俺の元を去ったってことか。
「横尾、いろいろとすまなかったな」
「とんでもございません」
俺は横尾との電話を切った。
貯金を全部おろして、気ままな一人旅。
そうだ、龍司さんに連絡してない、アパートに居なくて心配してるかな?
そう、龍司はみゆがアパートを引き払ったことに動揺を隠せず、みゆを捜していた。
そして廉也のマンションにたどり着いた。
「すみません、ちょっとお尋ねしますが、こちらに桂木廉也さんはお住まいでしょうか」
「失礼ですが、どちら様でしょうか?個人情報なのでお答え出来かねますが……」
「橘不動産社長の橘 龍司と申します、みゆ、いえ、立木みゆさんを捜しています、桂木さんのマンションにお住まいと伺ったのですが……」
コンシェルジュの横尾さんに名刺を渡した。
「桂木様はお住まいです、しかし出張中のため留守にしております、みゆ様の事は桂木様に伺ってからでないと、お答え出来かねます」
「そうですか、わかりました、いつお戻りでしょうか」
「一週間ほどで戻るとお聞きしております」
「ありがとうございました、また出直して来ます」
龍司は廉也のマンションを後にした。
(今夜私がスマホに出なかったら、廉也さんは心配するだろうな、でももう廉也さんとは会わないんだから、連絡取れない方がいいよね、廉也さんに会えないと寂しい)
涙が溢れて止まらなかった。
その夜、俺はスマホを手に取り、みゆに電話をかけた。
しかし何回コールしてもみゆは出ない、そのうち留守電に切り替わる。
俺は何回も試していた。
「みゆ、どうしたんだ、なんで出ない」
急に不安になり、俺はコンシェルジュの横尾に連絡した。
「桂木だが」
「桂木様、どうされたのでしょうか」
「忙しいところ悪いが、みゆがスマホに出ないんだ、もう会社から戻ってるだろ?」
「みゆ様でしたらご旅行に行かれましたが、お聞きになっていませんでしたか」
「旅行?」
「はい、桂木様が出張中なので、有給を取ってお友達とご旅行にお出かけになりました」
「そうか、行き先は何処だって?」
「行き当たりばったりとおっしゃってました」
「悪いが、俺の部屋に行って、みゆのスマホが置きっぱなしか確認してくれ」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
しばらくして横尾は俺の部屋に置きっぱなしのみゆのスマホを確認した。
「桂木様、みゆ様のスマホは置いてあります」
「そうか、出ないはずだな」
「あのう、余計な事かもしれませんが、気になることが……」
「なんだ、構わないから言ってくれ」
「みゆ様はカードキーを私に預けてお出かけになりました、旅行中無くすといけないからとおっしゃって……」
「そうか」
「それから橘不動産社長橘龍司様がみゆ様を訪ねて来られて、桂木様にお伺いをしてからとお伝えしました、また出直してくるとおっしゃってました」
俺の脳裏に不安が過った。
旅行ではなく、俺の元を去ったってことか。
「横尾、いろいろとすまなかったな」
「とんでもございません」
俺は横尾との電話を切った。
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