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第五章 副社長の溺愛

「亜紀、何でここにいるの、健の忘れ物を何で亜紀が届けてるの」

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東條ホールディングスのビルまで?

受付に、副社長に渡してくださいって言って、さっさと帰って来れば大丈夫かな。
私は意を決して東條ホールディングスのビルに向かった。

理樹さんに会いませんように。

受付に行って「あの、副社長の忘れ物です、渡して頂けますでしょうか」と封筒を受付に渡した。

「お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」

「渡して頂ければわかりますので」

その時「亜紀」と私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

理樹さんの声。

振り向くと理樹さんが私に向かって駆け寄ってきた。

しまった、見つかった。

でも、もう、遅い。

私は何を考えたのか、受付に封筒を置いて、走り出した。

「待って、亜紀」

理樹さんは受付の封筒を掴むと、あっという間に私においついた。

そして、私の腕を掴んで、理樹さんの方に向かせられた。

理樹さんは息を切らせて「亜紀、何でここにいるの、健の忘れ物を何で亜紀が届けてるの」と詰め寄った。

どう答えていいか戸惑っていると、私のスマホが鳴った。
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