10 / 46
拓真の嫉妬②
しおりを挟む
「はあ?」
「怒鳴らないでください」
私は健斗さんが怒ると怖い、だって極道だから。
涙が溢れて止まらなかった。
俺は頭に血が昇って怒鳴ってしまった。
かすみの腕を引き寄せ抱きしめた。
「ごめん、泣くな、怒鳴って悪かった」
私は社長の胸にすがりついて泣いた。
「かすみ、あいつと寄りを戻さないよな」
「しないです」
社長は私を強く抱きしめてくれた。
どうしてそんなに強く抱き締めるの?
どうしてそんなに辛い表情を見せるの?
社長の気持ちはわからなかった。
社長は私の頬を挟んでキスをした。
「かすみ、かすみ」
社長の口から溜息混じりの声が囁かれた。
そこにドアがノックされた。
「はい」
社長が返事をすると、相手は大館さんだった。
私は慌てて社長から離れて背中を向けた。
大館さんに泣いている顔は見られたくなかった。
「社長、今一度申し上げます、あなたはこれから新堂組を背負っていくお方です、
そしてこの春日部コーポレーションも、勝手な行動は絶対になさらないでください、
一人で動くなどもってのほかです」
社長は黙っていた。
「花園さんは弊社の社員で、社長の秘書です、社長の所有物ではありません、
そしてユリエさんは新堂組管轄のキャバクラのキャバ嬢です、お店以外は控えてください」
「大館、お前の言ってることは理解出来ねえ」
「でははっきり申し上げます、花園さんとプライベートでのお付き合いは
なさらないでください」
「なんでだよ」
「若頭には新堂組傘下の真山組の娘さんと結婚して頂きます、そして新堂組組長として組を統括して頂きます」
「そんな話は知らねえ」
「キャバ嬢ユリエさんを愛人になさるのは構いませんが、花園さんに手を出すことは許されません」
「俺はかすみと結婚したいんだ」
「ご自分の立場を弁えてください、本日真山梨花様がお見えになります、
ディナーの予約をしてありますので、予定して置いてください」
社長は握り拳を震わせていた。
私は急な展開に戸惑っていた。
キャバ嬢ユリエとして愛人としてなら健斗さんに会える。
健斗さんは結婚して新堂組を継ぐ。
一番いいことなのに、私が望んでいたことなのに、なぜか涙が溢れた。
私はその場に留まることが出来ずに、社長室を後にした。
俺はかすみを引き止めることが出来なかった。
ユリエを愛人にすれば、一緒にいられる。
でも俺はかすみと結婚したいんだ。
かすみを幸せにしたい。
俺の女として囲いたいわけじゃない。
喜びも悲しみも共に分け合い、人生を共に歩きたいんだ。
でも俺はそれが出来ねえ。
何もかも捨てて、かすみと逃げるか。
そんなこと出来ねえ。
このままキャバ嬢として働かせたくない。
他の男に指一本触れさせたくねえ。
一日が過ぎようとしていた。
今日はかすみは店に行くんだろう。
でも俺は真山梨花と食事に行かなければいけない。
どうすればいいんだ。
「お先に失礼します」
かすみは退社した。
今日はなんとなくかすみの様子が気になった。
元気がないような、具合が悪いような、そんな気がした。
俺は大館が予約していた高級旅館に行く前に、店に電話を入れた。
「今日、ユリエが元気がなかったのが気になったんだが、様子はどうだ」
「あら、すごいわね、ユリエちゃん、熱があって今日はお休みよ」
「えっ、熱があるのか」
「身体が辛くて動けないからって」
俺はスマホを切った。
勝手に身体が動いた。
かすみのアパートへ車を走らせた。
「かすみ、かすみ」
ゆっくりドアが開いてかすみが顔を出した。
「社長どうされたのですか」
「熱があって店を休んでいると聞いて、飛んできた」
「ダメです、すぐに戻ってください、今日は約束があるじゃないですか」
「かすみが具合悪いのに、他の女と食事してる場合か」
「社長」
俺はかすみのおでこに手を当てた。
「熱い、やばいぞ、医者行くか」
「大丈夫です」
そう言いながらかすみは立っていられなくなり、俺にもたれかかった。
「かすみ、かすみ」
俺はかすみを抱き抱えて、くるまに乗せた。
そして病院へ向かった。
かすみは脱水症状をおこしており、入院することになった。
俺はずっとかすみの側に付き添っていた。
かすみ、お前を放ってはおけない。
その頃、約束を反故にされて、真山梨花は怒りがかすみに向いていた。
そんなこととも知らず、俺は仕事を休んで、かすみのそばにいた。
「怒鳴らないでください」
私は健斗さんが怒ると怖い、だって極道だから。
涙が溢れて止まらなかった。
俺は頭に血が昇って怒鳴ってしまった。
かすみの腕を引き寄せ抱きしめた。
「ごめん、泣くな、怒鳴って悪かった」
私は社長の胸にすがりついて泣いた。
「かすみ、あいつと寄りを戻さないよな」
「しないです」
社長は私を強く抱きしめてくれた。
どうしてそんなに強く抱き締めるの?
どうしてそんなに辛い表情を見せるの?
社長の気持ちはわからなかった。
社長は私の頬を挟んでキスをした。
「かすみ、かすみ」
社長の口から溜息混じりの声が囁かれた。
そこにドアがノックされた。
「はい」
社長が返事をすると、相手は大館さんだった。
私は慌てて社長から離れて背中を向けた。
大館さんに泣いている顔は見られたくなかった。
「社長、今一度申し上げます、あなたはこれから新堂組を背負っていくお方です、
そしてこの春日部コーポレーションも、勝手な行動は絶対になさらないでください、
一人で動くなどもってのほかです」
社長は黙っていた。
「花園さんは弊社の社員で、社長の秘書です、社長の所有物ではありません、
そしてユリエさんは新堂組管轄のキャバクラのキャバ嬢です、お店以外は控えてください」
「大館、お前の言ってることは理解出来ねえ」
「でははっきり申し上げます、花園さんとプライベートでのお付き合いは
なさらないでください」
「なんでだよ」
「若頭には新堂組傘下の真山組の娘さんと結婚して頂きます、そして新堂組組長として組を統括して頂きます」
「そんな話は知らねえ」
「キャバ嬢ユリエさんを愛人になさるのは構いませんが、花園さんに手を出すことは許されません」
「俺はかすみと結婚したいんだ」
「ご自分の立場を弁えてください、本日真山梨花様がお見えになります、
ディナーの予約をしてありますので、予定して置いてください」
社長は握り拳を震わせていた。
私は急な展開に戸惑っていた。
キャバ嬢ユリエとして愛人としてなら健斗さんに会える。
健斗さんは結婚して新堂組を継ぐ。
一番いいことなのに、私が望んでいたことなのに、なぜか涙が溢れた。
私はその場に留まることが出来ずに、社長室を後にした。
俺はかすみを引き止めることが出来なかった。
ユリエを愛人にすれば、一緒にいられる。
でも俺はかすみと結婚したいんだ。
かすみを幸せにしたい。
俺の女として囲いたいわけじゃない。
喜びも悲しみも共に分け合い、人生を共に歩きたいんだ。
でも俺はそれが出来ねえ。
何もかも捨てて、かすみと逃げるか。
そんなこと出来ねえ。
このままキャバ嬢として働かせたくない。
他の男に指一本触れさせたくねえ。
一日が過ぎようとしていた。
今日はかすみは店に行くんだろう。
でも俺は真山梨花と食事に行かなければいけない。
どうすればいいんだ。
「お先に失礼します」
かすみは退社した。
今日はなんとなくかすみの様子が気になった。
元気がないような、具合が悪いような、そんな気がした。
俺は大館が予約していた高級旅館に行く前に、店に電話を入れた。
「今日、ユリエが元気がなかったのが気になったんだが、様子はどうだ」
「あら、すごいわね、ユリエちゃん、熱があって今日はお休みよ」
「えっ、熱があるのか」
「身体が辛くて動けないからって」
俺はスマホを切った。
勝手に身体が動いた。
かすみのアパートへ車を走らせた。
「かすみ、かすみ」
ゆっくりドアが開いてかすみが顔を出した。
「社長どうされたのですか」
「熱があって店を休んでいると聞いて、飛んできた」
「ダメです、すぐに戻ってください、今日は約束があるじゃないですか」
「かすみが具合悪いのに、他の女と食事してる場合か」
「社長」
俺はかすみのおでこに手を当てた。
「熱い、やばいぞ、医者行くか」
「大丈夫です」
そう言いながらかすみは立っていられなくなり、俺にもたれかかった。
「かすみ、かすみ」
俺はかすみを抱き抱えて、くるまに乗せた。
そして病院へ向かった。
かすみは脱水症状をおこしており、入院することになった。
俺はずっとかすみの側に付き添っていた。
かすみ、お前を放ってはおけない。
その頃、約束を反故にされて、真山梨花は怒りがかすみに向いていた。
そんなこととも知らず、俺は仕事を休んで、かすみのそばにいた。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
クリスマスに咲くバラ
篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる