上 下
68 / 76

公爵夫人教育2

しおりを挟む
馬車に揺られ付いた場所は先日訪れた孤児院。

レイモンドは公爵家から手土産としていくつ物の箱を運び入れる様に指示を出していると中から職員たちがゾロゾロと出迎えに来る。

レイモンドは簡単に済ませ子どもたちに声を掛けた。

『さあ、外に出て遊ぶんだ!』

レイモンドも腕まくりをしながら子どもの輪に入ろうとすると、職員たちが


『公爵、そのようならことは、子どもたちは勝手に遊び出しますのでどうぞこちらへ』


奥へ促そうとする者にレイモンドは

『お前もこの間の男のようになりたいの?』


青ざめる男は固まり黙りこくる。
レイモンドはシルビアを促し外に出ると

『さあ、公爵夫人仕事だよ?』

首を傾げるシルビアに

『先日はフリードリヒ殿下と遊んでいたのであろう?』

真っ赤になるシルビアの手を取り子どもたちの輪に入る。


『お姉ちゃんの王子様は?』


子どもたちは正直である。


レイモンドは引き攣りながらも

『お姉ちゃんの王子様はこの私だよ?』


喜ぶ子ども達の中からロンが口を開く。


『違うよ!お姉ちゃんの王子様はダリス大王国のフリードリヒ王子様だよ。』


レイモンドはロンを抱き上げ


『残念だったな。正解はこの私だよ?お前は他国の王子と我が国の公爵とどちらの味方をするつもりなのだ?』


大人気ないレイモンドにシルビアは堪らず


『レイモンド様!』

真っ赤になって俯くシルビアをじっくり観察するロンは

『本当だ、お姉ちゃんは公爵さまの事が大好きなんだね!前の王子様の時とは顔が違うよ?恋してる顔だ。』


『お?わかるか?お前はお利口さんだな。名を何と申す
?』

ロンは大きな声で

『ロン!と申す!』

笑いが起こる中、シルビアは嬉しそうに眺めていた。


すっかりどろんこになった2人は気まずそうに

『執事にしぼられるな‥』

そういいながら馬車に乗り込んだ。



『ヴィア?私はフリードリヒ殿下に張り合う為にここに来たのでないからね。フリードリヒ殿下から先日の視察の際に失礼を働いた男の処分を依頼され確認に来たのだから、仕事だからね。決して遊びに来たのではないからね?そう言おうね。執事に‥』


筆頭公爵でありながら執事は若干苦手らしい。


シルビアはにこやかに答える。


『もちろんですわ!』



このあと2人は、言い訳虚しくたっぷりとお説教を食らったのは言うまでもない。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完]僕の前から、君が消えた

小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』 余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。 残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。  そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて…… *ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉

海林檎
恋愛
※1月4日12時完結 全てが嘘でした。 貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。 婚約破棄できるように。 人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。 貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。 貴方とあの子の仲を取り持ったり···· 私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。

旦那様は甘かった

松石 愛弓
恋愛
伯爵夫妻のフィリオとマリアは仲の良い夫婦。溺愛してくれていたはずの夫は、なぜかピンクブロンド美女と浮気?どうすればいいの?と悩むマリアに救世主が現れ?

間違った方法で幸せになろうとする人の犠牲になるのはお断りします。

ひづき
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄されるという未来を見た公爵令嬢ユーリエ。 ───王子との婚約そのものを回避すれば婚約破棄など起こらない。 ───冤罪も継母も嫌なので家出しよう。 婚約を回避したのに、何故か家出した先で王子に懐かれました。 今度は異母妹の様子がおかしい? 助けてというなら助けましょう! ※2021年5月15日 完結 ※2021年5月16日  お気に入り100超えΣ(゚ロ゚;)  ありがとうございます! ※残酷な表現を含みます、ご注意ください

裏切りの公爵令嬢は処刑台で笑う

千 遊雲
恋愛
公爵家令嬢のセルディナ・マクバーレンは咎人である。 彼女は奴隷の魔物に唆され、国を裏切った。投獄された彼女は牢獄の中でも奴隷の男の名を呼んでいたが、処刑台に立たされた彼女を助けようとする者は居なかった。 哀れな彼女はそれでも笑った。英雄とも裏切り者とも呼ばれる彼女の笑みの理由とは? 【現在更新中の「毒殺未遂三昧だった私が王子様の婚約者? 申し訳ありませんが、その令嬢はもう死にました」の元ネタのようなものです】

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

うちの王族が詰んでると思うので、婚約を解消するか、白い結婚。そうじゃなければ、愛人を認めてくれるかしら?

月白ヤトヒコ
恋愛
「婚約を解消するか、白い結婚。そうじゃなければ、愛人を認めてくれるかしら?」 わたしは、婚約者にそう切り出した。 「どうして、と聞いても?」 「……うちの王族って、詰んでると思うのよねぇ」 わたしは、重い口を開いた。 愛だけでは、どうにもならない問題があるの。お願いだから、わかってちょうだい。 設定はふわっと。

処理中です...