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シルビアの気持ち

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夜会を前日に控えシルビアはアレクセイより直々に命を受け王宮に上がっている。

『シルビア嬢、忙しい中申し訳ない。』


シルビアはアレクセイを真っすぐ見据え頭を垂れる。

『実はね、フリードリヒ殿下直々のご要望なので私も断れなかったのだ。』

シルビアは控えめに微笑みながら

『フリードリヒ殿下はお一人で国際会議に参加されておりますので仕方ございません。私につとまるかどうかわかりませんが誠心誠意おつとめ致します。』





『シルビア嬢。フリードリヒ殿下は君を娶りたいと仰っているんだよ。』

アレクセイは真っすぐシルビア嬢を見据える。
シルビアは驚き目を見開き、後ろに控えるレイモンドに視線を送るがレイモンドはゆっくりと視線を外した。

『君の気持ちはどうであろう?』





『私には婚約者がらおりますが?それは王命でしょうか?』

俯きながら小さく答える。

『いや。王命ではない。君の気持ちを確認したいだけだよ。』


シルビアはレイモンドに再び視線を送るがレイモンドは視線を合わせない。

『私がご迷惑となるのであれば‥。』

『そうではなくて、君の気持ちを知りたい。』

アレクセイはシルビアをじっと見据える。


目の前のシルビアはアレクセイの知る令嬢らしくなく、目を泳がせ答えを逡巡させている。

しばらくの沈黙のあと、アレクセイは

『分かった。もういいよ。レイモンド、シルビア嬢の見送りを頼む。』

アレクセイは短く言葉を発し部屋を出て行った。


残された2人の視線が交わる事はない。


『申し訳ございません。』

謝るシルビアに

『何がかな?』

レイモンドは平静を装い問う。


『殿下を怒らせてしまいましたわ。』

目を閉じ猛省するシルビア。


『いや、お怒りではないから大丈夫。』


‥。


シルビアは未だかつて、誰かの問いに答えられない経験が無かった。今回何故答えられなかったのか自分でも分からず困惑していた。


『レイモンド様。気を使わせてしまいましたね。』

ボソッと呟いたシルビア。

レイモンドはその意味が分からず


『君にとっては悪い話しではないであろう?』

シルビアは心に痛みを覚えたが小さく微笑む。

その表情を確認するレイモンドは固まる。何故か目の前のシルビアは美しい表情ながら一筋の涙を流していたのだ。


『お忙しい中お手数をお掛けしました。お見送りは結構です。』


静かに膝を深く折りシルビアは部屋を後にした。
レイモンドは見送りをせずその場に立ちすくんだ。

レイモンドは初めてアレクセイの命を放棄した。


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