上 下
56 / 76

親友の時間

しおりを挟む
アレクセイはどれだけ時間が遅くなろうとも、王宮主催の脇侍の後は必ず側近と反省会と称する会を開く。

今宵も2人向かい合う。


『レイ、散々な夜会となってしまったね。』

大きく首を回すアレクセイに

『全くです。あの令嬢は女狐とそっくりだ』

溜息を漏らすレイモンドに


『ヴィクトリアは伯爵令嬢だぞ?あそこまで酷くなかろう?』


もはや二人の中では、ヴィクトリアは女狐で通っている。


『私はシルビア嬢の事を誤解していたよ。今日のシルビア嬢は何となくステファニーに似ていたよね?』


レイモンドは

『ステファニー様はもっと柔らかい印象ですが?』


『それは顔立ちなどを加味しているでしょ?』


レイモンドはステファニーを思い起こすも‥

‥全く似てないが?


『で?あまりに早いエスコートであったね?』

アレクセイの問いにレイモンドは

『別に、控え室までのエスコートだからね。』

素っ気なく応えるレイモンドに

『そっか、でもさシルビア嬢の今日の振る舞いは流石であったな。あれを見せられてシルビア嬢を欲しがらない上級貴族はいないだろうね。ただ今日はお前がエスコートして出ていったから誰も手が出せずに居たけど、ルシャード辺りは狙ってるだろうね。』


レイモンドは返す言葉もなく黙ったままワインを傾ける。

『ねえ、レイ。私がおかしくなった時のお前の気持ちが分かるよ。私は外見だけを見て突っ走っていたろ?あぁゆう風にならないようにね?』


『私は誰にも夢中になっちゃいないよ』



『そうではない、私はたまたま好意のほうにおかしくなっていたが、今のお前は嫌悪のほうにおかしくなってるよ。』


『‥』


『だって、これほど嫌悪する理由が見当たらない』




しばらくの沈黙のあと、アレクセイは続ける。


『私はどれだけ公爵につつかれようと、お前の婚儀に対して王命は出さないと約束する。これは紛れもなく公私混同だよ?だからこそ、逆も理解してくれ。お前がどれだけおかしくなっても、この話しを王命で破談にも出来ない。わかるな?』


レイモンドはゆっくり視線をアレクセイに移し、静かに頷いた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完]僕の前から、君が消えた

小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』 余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。 残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。  そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて…… *ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉

海林檎
恋愛
※1月4日12時完結 全てが嘘でした。 貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。 婚約破棄できるように。 人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。 貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。 貴方とあの子の仲を取り持ったり···· 私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。

旦那様は甘かった

松石 愛弓
恋愛
伯爵夫妻のフィリオとマリアは仲の良い夫婦。溺愛してくれていたはずの夫は、なぜかピンクブロンド美女と浮気?どうすればいいの?と悩むマリアに救世主が現れ?

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる

田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。 お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。 「あの、どちら様でしょうか?」 「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」 「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」 溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。 ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。

間違った方法で幸せになろうとする人の犠牲になるのはお断りします。

ひづき
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄されるという未来を見た公爵令嬢ユーリエ。 ───王子との婚約そのものを回避すれば婚約破棄など起こらない。 ───冤罪も継母も嫌なので家出しよう。 婚約を回避したのに、何故か家出した先で王子に懐かれました。 今度は異母妹の様子がおかしい? 助けてというなら助けましょう! ※2021年5月15日 完結 ※2021年5月16日  お気に入り100超えΣ(゚ロ゚;)  ありがとうございます! ※残酷な表現を含みます、ご注意ください

処理中です...