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メープル王国お茶会
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暖かな晴天の日、メープル王国王宮では王妃主催で夫人のお茶会が開かれていた。
貴族のお茶会、それも夫人会は、それこそ戦のような腹の探り合いでもありアレクセイはその庭を通るだけでも辟易としていた。
この日も色とりどりのドレスの華だちが庭園で話の花を咲かせていた。
アレクセイとフレディックは鍛錬の場からの帰り、いつものように庭園を横切ると、一際大きな声で罵声を浴びせる夫人が目に入った。
『子が子なら親も親ですわね~?全く身分もわきまえず大きな顔をして挨拶すら出来ないなんて恥を知りなさい!』
マーサ伯爵夫人が取り巻きの夫人と一緒にヴィラ候爵夫人に物を言っている。
‥。
『わが家のヴィクトリアは王太子妃でありながら側妃を受け入れておりますのに、その側妃ときたらヴィクトリアの好意を当たり前のように捉えてね?今では外交までもしゃしゃり出る有様なのですよ?』
『まあ!』
『候爵令嬢だかなんだか知らないけれど、王太子妃に対してね?側妃がね?』
好き放題の言いようである。
流石のアレクセイとフレディックも立ち止まる。
黙って聞いていたヴィラ候爵夫人は静かに口を開く。
『それ程大きなお声を上げなくても聞こえておりますわ。』
マーサ夫人は真っ赤に怒りを出して
『まあ、なんて失礼な!私を誰だか知っての言葉かしら?』
ヴィラ夫人はしばらくマーサ伯爵夫人を観察して
『マーサ伯爵夫人ですわよね?』
どれだけ確認しても目の前にはマーサ伯爵夫人しかいない。
『私は王太子妃の母親ですわよ!』
‥
『ですから、マーサ伯爵夫人ですわねよね?』
『わからない女ね!メープル王国王太子妃の母親ですの!』
『話が堂々巡りしておりますわ。貴女の事は存じ上げております。』
ヴィラ候爵夫人の気持ちを誰よりも分かるフレディックは堪らず口を挟もうとしたがアレクセイに止められ動けない。
アレクセイは人差し指を口に当て静かにと目で訴えた。
『知っててそのような態度ですの?』
段々と声のトーンも高くなってきた。
『申し訳ないのですが、夫人が言われる事が理解出来ませんが‥?』
素直なご意見にアレクセイも遠くから頷く。
『だから!うちのヴィクトリアがね正妃でありながら貴女の娘の側妃のお陰で泣きを見ているのよ!』
今度こそ真剣に夫人の一語一句を逃さぬ様に聞き入るヴィラ夫人が頷きながら
『なるほど‥
ですがヴィクトリア様は今や王家の人間、そして私の娘も同様です。私たち貴族が口を出せる相手ではございませんわ。
わが家の娘ではありますが既に殿下の元へ嫁いだアナスタージア様をそのように上からお助けする事など口に出来ませんもの。
アナスタージア様の粗相でわが家に何らかの罰が与えられるのでしたら、その時は親として責任を負う覚悟でございます。が、しかしその罰は王家から発令されるもの。
伯爵家からではございませんわ。』
理路整然と語るヴィラ候爵夫人の言葉を聞いて、アレクセイはフレディックを連れて執務室に戻った。
子は親に似るのであろう。
アレクセイはつくづく感じた。
先程の2人の会話からアナスタージアは母親にそっくりであり、ヴィクトリアもまた母親にそっくりなのだ。
アレクセイは珍しく執務を途中で切り上げ離宮に足を運んだ。
貴族のお茶会、それも夫人会は、それこそ戦のような腹の探り合いでもありアレクセイはその庭を通るだけでも辟易としていた。
この日も色とりどりのドレスの華だちが庭園で話の花を咲かせていた。
アレクセイとフレディックは鍛錬の場からの帰り、いつものように庭園を横切ると、一際大きな声で罵声を浴びせる夫人が目に入った。
『子が子なら親も親ですわね~?全く身分もわきまえず大きな顔をして挨拶すら出来ないなんて恥を知りなさい!』
マーサ伯爵夫人が取り巻きの夫人と一緒にヴィラ候爵夫人に物を言っている。
‥。
『わが家のヴィクトリアは王太子妃でありながら側妃を受け入れておりますのに、その側妃ときたらヴィクトリアの好意を当たり前のように捉えてね?今では外交までもしゃしゃり出る有様なのですよ?』
『まあ!』
『候爵令嬢だかなんだか知らないけれど、王太子妃に対してね?側妃がね?』
好き放題の言いようである。
流石のアレクセイとフレディックも立ち止まる。
黙って聞いていたヴィラ候爵夫人は静かに口を開く。
『それ程大きなお声を上げなくても聞こえておりますわ。』
マーサ夫人は真っ赤に怒りを出して
『まあ、なんて失礼な!私を誰だか知っての言葉かしら?』
ヴィラ夫人はしばらくマーサ伯爵夫人を観察して
『マーサ伯爵夫人ですわよね?』
どれだけ確認しても目の前にはマーサ伯爵夫人しかいない。
『私は王太子妃の母親ですわよ!』
‥
『ですから、マーサ伯爵夫人ですわねよね?』
『わからない女ね!メープル王国王太子妃の母親ですの!』
『話が堂々巡りしておりますわ。貴女の事は存じ上げております。』
ヴィラ候爵夫人の気持ちを誰よりも分かるフレディックは堪らず口を挟もうとしたがアレクセイに止められ動けない。
アレクセイは人差し指を口に当て静かにと目で訴えた。
『知っててそのような態度ですの?』
段々と声のトーンも高くなってきた。
『申し訳ないのですが、夫人が言われる事が理解出来ませんが‥?』
素直なご意見にアレクセイも遠くから頷く。
『だから!うちのヴィクトリアがね正妃でありながら貴女の娘の側妃のお陰で泣きを見ているのよ!』
今度こそ真剣に夫人の一語一句を逃さぬ様に聞き入るヴィラ夫人が頷きながら
『なるほど‥
ですがヴィクトリア様は今や王家の人間、そして私の娘も同様です。私たち貴族が口を出せる相手ではございませんわ。
わが家の娘ではありますが既に殿下の元へ嫁いだアナスタージア様をそのように上からお助けする事など口に出来ませんもの。
アナスタージア様の粗相でわが家に何らかの罰が与えられるのでしたら、その時は親として責任を負う覚悟でございます。が、しかしその罰は王家から発令されるもの。
伯爵家からではございませんわ。』
理路整然と語るヴィラ候爵夫人の言葉を聞いて、アレクセイはフレディックを連れて執務室に戻った。
子は親に似るのであろう。
アレクセイはつくづく感じた。
先程の2人の会話からアナスタージアは母親にそっくりであり、ヴィクトリアもまた母親にそっくりなのだ。
アレクセイは珍しく執務を途中で切り上げ離宮に足を運んだ。
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