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事態は収束を迎えた

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『そもそも第3王子が勝手に決めて良いはずが無い!』


ヨハネスはテオドールを見てため息を落とすとテオドールも同じく頷いた。

『あのね、たまたま王宮で話しただけだよ。ってかガルフ王国からの正式な話がある前だからね。秘密裏に進んでいた話は知らないけど。あくまで正式な話の前ね。』


『だけどさっきはテオドールは渡さないと!』


『だからそれはあくまで第3王子の意思だよ。私も国の決定がなされていたならばそんな事は言わないよ?だけどそんなものは存在しなかった。だから私は我が国の騎士1人でさえ、駒のように扱うガルフ王国にはやれないと話したまでだ。』



…。



『付け加えますと、そもそも私はそんな話はお断り。己が忠誠を誓うのは生涯1度きり。それが我が公爵家の教えですから。我が身果てるまでランズ王国に身を捧げる所存ですが?』


静まり返る謁見の間に各国王族らの到着が知らされた。まだ終わらないこの時間。即座に席を立つは第1王子のアルフレッド。



『皇帝もいらっしゃる。私が先に行く。』


すかさず後ろに控えるファビウスも部屋を後にしようとした時


『待って、ファビウス。貴方はリディアのエスコートがあるわ!』


アルフレッドも頷くと


『ファビウス、今宵は侯爵令息として夜会に出るんだ。私なら1人で構わん。』


『そんな訳にはいきませんわ!では私が。』


後に続くクラリスに


『『それが一番危ないよ』』


ヨハネスとテオドールの心の声がもれていた。



アルフレッドも困惑しているとフリードリヒが


『フィリップス、護衛にランドールを付けてお前は兄上に付いてくれるか?』


フリードリヒの後ろに控えていたフィリップスは小さく頷くとアルフレッドを促し部屋を出た。その後ろからクラリスも小走りで追って行ったのである。



…行くのかよ。


テオドールは心の中で突っ込んだ。





『で?テオドールがガルフ王国へ移籍しないと何かお困りなのですか?』


2人は顔を見合わせ頷くと


『ま、まぁ別に困る事は…無いな。』


『そうですね。テオドール殿も行かれるものだと思ってたから取り乱しましたが…問題は無いですね。』



2人は頭を巡らせながら最後の挨拶を終え王宮を後にした。





2人が去った後、ヨハネスは足を投げ出し


『はぁ何だってあんなに頭が悪いかね?夜会前にほとほと疲れたよ。』


愚痴をこぼすヨハネスにフリードリヒは


『全くお前は気楽でいいな』


こちらも疲れ果て足を投げ出している。夜会前の第2王子と第3王子の姿とは思えない有り様である。



『殿下、お言葉ですがヨハネス殿下はお気楽ではありませんよ。此度の事も全てご存知でしたよ。殿下が侯爵領へ視察へ出られた訳も全てね。』


テオドールの言葉にフリードリヒは驚いたように姿勢を戻すとヨハネスは呆れたように


『あのね、誰だってわかるよ。兄上の留守にいきなりガルフ王国ミケル殿下が懲りずに王宮に居たんだよ?大方あの2人を始末するためにテオドールをダシにしたんだろ?』



ヨハネスの言葉にテオドールはフリードリヒを睨みつけると


『待て待て。きちんと説明をさせてくれよ。
そもそもグラン公爵についてはマリネットが機密情報をガルフ王国にもらした時点で取潰しだろ?だけどいきなり公爵家が取潰しでは他国からの目もあるしだな、そもそも秘密ルートを知り得た訳がお前、ヨハネスだぞ?』

 大きく頷くテオドールをヨハネスは睨みつける。


『だから少し泳がせたら、公爵は公爵で娘が修道院だろ?家の行く末を案じて試行錯誤するさ。そうしたら国への恩も忘れてあちこち手を付けていたのは分ってたからね?それがソレイン侯爵さ。彼はそもそも王太子派としながらも四方八方にいい顔をするからね?信用に値しない。だからこの際まとめて片付けたのさ。』



…まとめてってな。



『でもさ、我が国が罰するまではまだ至らない。そんな時ガルフ王国がテオドールに目をつけているのを知ったから極秘でミケル殿下と密会したってわけ。』


…。



『取引じゃないよ?ヨハネスの婚約者を返す返さないの話しでさ、あまりに必死だから(笑)それでテオドールが欲しいっていうからね?テオドールは爵位も無いしどこで何をしようかなんて私が関与出来ないから、直接本人に打診するよう促したんだ。』



…で?何でこうなる?



ヨハネスの心の声を聞いたかのように


『だからね、テオドールの性格からして外堀から埋めるといいんじゃないかってね。』


『外堀?』


テオドールは怪訝そうにフリードリヒを見る。


『そう。テオドールは案外寂しがり屋だから1人では心細いんじゃないかって。同じ公爵を担う者らが居れば動くかもしれないって言っただけ。だから私は何も取引きしていないよ?』 

…さみしがりやさん♡

クスクスと笑いながらヨハネスは


『なるほど、それであのミケル殿下は急いでテオドールを落としに王宮に乗り込んだってわけね。で私と話して先ずは外堀からって事で公爵家に直々出向いて打診したって訳か。そしたら我が国での行く末を案じていた公爵には棚からぼた餅。喜んで飛びついたろうね?ガルフ王国からしたらその外堀だけしか手に入らなかったって事ね。』


ヨハネスはさみしがりやさんのテオドールに笑顔を向けるとそっぽを向いたテオドールが


『…何だかやり口がミハエル王太子と似てきてないか?』


テオドールはクラリスの兄であるリントン王国王太子の名をあげ頭を抱えた。

『まぁ、義理とは言え兄弟だからね。ってかさあの2人、ガルフ王国で、今まで通りの生活が出来ると思ってるのかね?勉強不足もいい所だよ。』


ヨハネスの言う通り、ガルフ王国はあの小さい領土に数多くの貴族を有している。すなわち一つ一つ統治する領土が狭いということ。そのメリットとして一つの貴族だけが無駄に力を持たない為国としては管理が容易いというのは間違いない。が一方で貴族らは横並びである為貴族間で上下関係がない。みな同じ様な規模で粛々と生活している。民族的にも真面目で勤勉であるがその文化はランズ王国での生活に慣れた貴族には難しいともいえる。



『まぁ、それに気づいた時には時すでに遅し。我が国に籍はないからね。こちらの預かり知る所ではないさ。ってかさお前たはちはいつの間に?』


…?


不思議そうにフリードリヒを見るヨハネスとテオドールにフリードリヒは嬉しそうに



『だって犬猿の仲以上にさ、敵対関係いや、あの件では加害者と被害者の仲だろ(笑)?』


あの件。クラリス拉致事件の事である。


バツの悪そうなヨハネスとてれくさそうなテオドールは揃ってだんまりを決め込むと


『流石はテオドール殿。どんな相手の心も解き解すお力は見上げたものですね。』


アンドラの言葉にフリードリヒは嬉しそうに頷いた。


『さぁ、アンドラ今宵はお前達のお披露目だ。しっかり頼むぞ。ファビウスもリディア嬢と共にフォローを。』


2人は最上級の礼を取った。 



…。


…。



ヨハネスとテオドールは照れくさそうに顔を見合わせていた。




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