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王太子と伯爵家の次男坊

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フリードリヒはアンドラを手招きするとテーブルに頬杖を付きながらアンドラを見上げた。


『ずいぶんと楽しそうなところ、申し訳なかったね。』


怖いくらいの笑みを浮かべアンドラを見るとアンドラははにかみながら頷きフリードリヒの対面に腰をおろした。


『単刀直入に言うよ。アンドラ・オルコットお前に爵位を与える事になる。』


藪から棒に棚ぼたのような話題についていけないアンドラは困惑ぎみに

『…ヨハネス殿下の側近が執務会議にも出られないのは問題でも?』

1人お留守番がいけないのか?と案じたアンドラにフリードリヒは怪訝そうに


『それの何が問題なの?』


『…。』


『何か困る事でもあるの?ってか普通喜ぶ所じゃないか?貴族ならば。』


『…。私はオルコット家の次男坊ですから先行きを考えればそれは有り難き幸せなのですが。』


『ですが?』



『理由が見当たりません故。』


アンドラは首を捻るとフリードリヒを遠慮ぎみに見た。



『ヨハネスの側近として活躍しているお前に相応しいと思うが?』



『…。』


フリードリヒの心内を探るように見つめるアンドラに


『分かった分かった、お前が納得するように話すとだね、ほら、例のヨハネスの起こした醜態の時に私はテオドールには頭を下げたがお前には礼の1つも言えて居ない。』


『謝意を頂ける事は何もしておりません。寧ろ私は罪を受け入れる立場でございます。』


フリードリヒは大きくため息を付くと


『その件についてはヨハネスの謹慎で既に無かった事になっているのは知ってるな?それに私はお前に大きな借りがある。』


『借り?でございますか?』

頭を巡らせるアンドラを見ながらフリードリヒは静かに語り始めた。



『私はクラリスが何事無く救出され、テオドールに心から謝意を述べたよ。そうしたらねテオドールは全てはアンドラのお陰と言うのだ。』


アンドラは驚いたように目を見開くと


『テオドール殿が?』



フリードリヒは頷くと



『折々の絶妙なタイミングでヨハネスを呼びに来るアンドラが居たと。クラリスの危機を見計らうようにヨハネスを呼び止めたお前の功績だと。

半信半疑で兄上に問うたところ、兄上は納得していたよ。だからあのときロビーでえらく待たされたと。いつも、すぐにヨハネスを呼びに行くお前が何かと事付けて色々話しをしていたとね。お前は立場的に出来る最大の事をしてくれたんだ。


だけどね表立っては言えないだろ?ある意味ヨハネスへの裏切りとも取れるからね?だけどアンドラ。お前はヨハネスに忠誠を誓う側近だがヨハネスもまたこのランズ王国に忠誠を誓う1人だ。わかるな?


とまぁこんな所で…



アンドラ・オルコット。お前をランズ王国侯爵とすることが決まった。追って国王よりお達しがあるだろうから』


アンドラは驚いたように


『お、お待ち下さい!私は伯爵家の次男坊ですよ?そんな事認められるはずありせませんよ!』



フリードリヒは呆れたようにアンドラを見ながら


『欲のない奴だな。それのどこが問題なの?』


『いやいや、我が伯爵家には跡継ぎとして兄がおります。その…』


『そんな事知ってるしな?なに?弟だから何?そもそも私も第2王子だが?お前は私が王太子であることに納得していないのか?』


これまた驚いたようにアンドラは


『いやいやそんな事はございませんが、他の貴族たちも黙ってはおりません故。』 

頷くフリードリヒは小さく息を吐くと


『あのね、いくらなんでも私だけの意向でこんな事は出来ないよ。きちんと後ろ盾があるから案ずるな。』

『後ろ盾?』



フリードリヒはしつこいアンドラに辟易としながら


『我が国に忠誠を誓う最大の家門。筆頭公爵家が後ろ盾だ。』



テオドールの父でありランズ王国宰相である公爵が今回の件の後ろ盾。アンドラは瞬きを繰り替え呆然と立ち竦んでいた。




フリードリヒはニヤリと笑うと


『で?我が妻とは何の話しを?』



いきなり現実に戻されたアンドラは怪訝そうにフリードリヒを見るとこちらも負けじと伯爵家次男スマイルを振りまいた。



…知るかよ。そんな事。


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